2022-01-01から1年間の記事一覧

冲方丁『マルドゥック・アノニマス7』

3巻以降年に1回のペースで刊行されている同シリーズ。自分も大体毎年6月頃に読んでるっぽい。 冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニ…

日経サイエンス・Newton2022年7月号

日経サイエンス 日経サイエンス2022年7月号 [雑誌]日経サイエンスAmazon SCOPE ITで目の不自由な人をナビゲート 靴が振動してナビゲートする。横浜で実験。 ADVANCES 細菌のエピジェネティクス エピジェネティクスというのは、真核生物のものであって、細菌…

『ラブ、デス&ロボット』シーズン3

NetflixオリジナルのSF短編アニメオムニバス。 2019年にスタートしたシリーズ。 『ラブ、デス&ロボット』 - logical cypher scape2 最近、シーズン3が公開された。なお、シーズン2は、昨年2021年に公開されていたようだが、全然気付いていなかったので、…

土谷尚嗣『クオリアはどこからくるのか?』

ジュリオ・トノーニの統合情報理論と、筆者が提案しているクオリア構造についての入門的解説書 生体の科学 Vol.73 No.1 2022年 02月号 特集 意識 - logical cypher scape2を読んだ際に、この本の筆者である土谷や共同研究者である大泉の論文に出てくるクオリ…

『現代思想2022年1月臨時増刊号 総特集=ウィトゲンシュタイン』

『論考』刊行100周年を記念した特集号。 本誌前半には『論考』について、中盤には「倫理学講話」について、後半には『探求』についての論文が収録されている。 『論考』の読み方が時代によってどのように変遷してきたかを論じている吉田論文、ダイヤモンドの…

ジョナサン・ストラーン編『創られた心 AIロボットSF傑作選』

最近、テーマ別の書き下ろしSFアンソロジーの翻訳が東京創元社から度々出ているが、今回はタイトル通り、「創られた心」をテーマにしたもの。 基本的にはAI・ロボットだが、脳インプラントものやサイボーグものっぽいものもある また、英米の作家以外に、バ…

Newton2022年5月号

ごく一部をパラっと立ち読みしただけなのだけど、ちょっとメモNewton 2022年5月号: 科学雑誌Newton作者:株式会社ニュートンプレスニュートンプレスAmazon 量子論2022 量子生物学という見開きがあり、植物の光合成で光エネルギーがロスなく葉の中心だったかに…

ゴールデンカムイ(完結)

雑誌連載の最終話まで読み終わったので軽く感想 なお、自分は、前回と今回の無料公開時に読んでるだけなので、大雑把な話しかできません ここでは、『ゴールデンカムイ』で何が描かれていなかったのか、ということについて思いついたことを書こうと思う。 た…

Nick Zangwill "Formal natural beauty"

以前、動物の美学について、Glenn Persons "The Aesthetic Value of Animals" - logical cypher scape2を読んだが、それに引き続いて動物の美学関連論文 上述のパーソンズ論文でも紹介されていた、ザングウィルの形式主義について ザングウィルは、そもそも…

Origins, Worlds, and Life(未読)

話題の天王星探査について。まずこの天王星探査は、全米アカデミーズ(NASEM)が「NASAが今後10年で大規模ミッションとして取り組むべきである」と報告書に記したもの。10年前の報告書では「火星サンプルリターンを優先して取り組むべき」と書かれ、現在NASAが…

Mark P Witton "Patterns in Palaeontology: Palaeoart – fossil fantasies or recreating lost reality?"

www.palaeontologyonline.com復元画について、どれだけ科学的に正確で、どれだけ画家の想像なのか、という論文 で、当たり前の話だが、色々な科学的根拠もあるけれど、もちろん分からない場所は想像で補うしかないのであり、単純に正しいのか想像なのかと言…

成田憲保『地球は特別な惑星か』

サブタイトルは「地球外生命に迫る系外惑星の科学」 筆者は天文学の人で、系外惑星探査についての入門書となっている。 2020年3月刊行で、2019年までの最新データに基づき、様々な探査手法の観点から整理されている。例えば、系外惑星探査には、トランジット…

生体の科学 Vol.73 No.1 2022年 02月号 特集 意識

生体の科学 Vol.73 No.1 | 雑誌詳細 | 雑誌 | 医学書院 鈴木さん、渡辺(正)さん、大泉さん、土谷さん、乾さんと、門外漢でもよく見かける名前が並び、日本における意識研究者オールスターかもしれない、分からんけど。 普通に売ってる雑誌ではないが、筆者…

上田早夕里『獣たちの海』

オーシャン・クロニクルシリーズの書き下ろし短編集 温暖化で海面上昇した未来世界を舞台にしたオーシャン・クロニクルシリーズ 本作は、海上民からの視点で描かれた短編が4作収録されている。獣たちの海 (ハヤカワ文庫JA)作者:上田 早夕里早川書房Amazon 迷…

圀府寺司『ユダヤ人と近代美術』

タイトルにある通り、ユダヤ人と近代美術の関係について論じた本。19、20世紀のユダヤ人画家やパトロンについて書かれている。 本書は、繰り返し注釈されているが、「ユダヤ美術」についての本ではない。 このテーマにはいくつかの困難がある。 まず、ユダヤ…

倉田剛「社会存在論の「統一理論」について」「いかにして社会種の実在性は擁護されうるのか」

倉田剛による下記の2つの論文が、グァラに触れているので、フランチェスコ・グアラ『制度とは何か』(瀧澤 弘和 監訳・水野 孝之 訳) - logical cypher scape2を読んだついでに、これらの論文も読んでみた 倉田剛「社会存在論の「統一理論」について」 htt…

フランチェスコ・グアラ『制度とは何か』(瀧澤 弘和 監訳・水野 孝之 訳)

社会科学の哲学の立場から書かれた制度論 経済学的な制度理解と哲学的な制度理解とを架橋するための議論が展開されている。 二部構成となっており、前半では、制度についての均衡説と制度についてのルール説を統合した統一理論「均衡としてのルール」説を展…

南谷奉良「洞窟のなかの幻想の怪物―初期恐竜・古生物文学の形式と諸特徴」東雅夫・下楠昌哉編『幻想と怪奇の英文学4』

恐竜・古生物学文学研究の論文 同じ著者による恐竜・古生物文学研究の記事としては、以下もある。 最近、福井県立大学に恐竜学部ができるというニュースがあった時に、とある古生物学者の方が、ぼくの考えるさいきょうの恐竜学部的な感じでこんなツイートを…

高山羽根子・酉島伝法・倉田タカシ『旅書簡集 ゆきあってしあさって』

高山、酉島、倉田の3人が旅先からそれぞれ2人に手紙を出しているという形式で進む、リレー書簡小説。 架空旅行記と書簡小説とリレー小説の面白さがかけあわされている。 奇妙奇天烈な土地を旅しながら、それがユーモラスさを生んでいて、読んでいて時々笑っ…

『日経サイエンス  2022年3月号』

少し前にこれだけ読んでた 太陽になりそこねた星 褐色矮星 褐色矮星についてちゃんと理解してなかった*1 水素核融合をしていない天体で、実際に発見されたのは1995年(系外惑星と同じ年) 恒星と惑星の間みたいな星で、核融合はしてないけど光は発していて、…

プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』(関口英子訳)

1966年に刊行されたSF短編集、日本語訳は2008年。 レーヴィというと、アウシュビッツ体験について書いた作家でアガンベンが論じていたということしか知らなくて、このような作品を書いていることは全く知らなかったのだが、下記のモッタキさんのツイートで存…

板坂耀子『平家物語』(一部)

TVアニメ『平家物語』を見るにあたって参考書として手に取った とはいえ、ごく一部しか読んでいない 大きく分けて二部構成になっていて、前半であらすじを紹介し、後半では登場人物の関係を図式的に当てはめた読解、というか平重盛にフィーチャーした解説を…

『現代思想2021年12月号(特集=大森荘蔵)』

大森荘蔵の弟子筋にあたる人たち(前半に並んでいる人たち)は、大森との思い出を述べたのち、それぞれの大森論を展開している。 自分は大森荘蔵には全然触れていないのだが、野家、飯田、丹治、野矢という、現在における日本分析哲学のビッグネームが並んで…

高山羽根子『暗闇にレンズ』

高山羽根子の芥川賞受賞後第一作で、映画・映像をテーマにした長編小説 ということで、以前から気になっていたが、大森望編『ベストSF2021』 - logical cypher scape2 の中で、大森望が、プリースト『隣接界』*1に喩えていたのが最終的なきっかけとなり手に…

大森望編『ベストSF2021』

2020年に発表された日本の短編SFの中から、大森望が選んだ11作 2008年から2019年まで創元から出ていた「年刊日本SF傑作選」の、版元が竹書房に、編者も大森・日下から大森単独に変わっての後継シリーズ第2弾*1 タイトルは『ベストSF2021』だが、収録されてい…

紺野大地・池谷裕二『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線 』

BMI・BCI研究のここ最近の動向を分かりやすくまとめてある本 筆者の紺野は、池谷研究室に所属しており、まえがきによれば、本書の構想は池谷が担当し、実際の執筆は紺野が担当したとのこと。紺野はメルマガやnote、twitterで最新研究の紹介を行っており、そ…

古井由吉『杳子・妻隠』

SFじゃない小説(文学とか)も読もうと思って手に取った本第3弾である。 古井由吉は全然読んだことがなくて、どこから読めばいいのかもとっかかりもなかったのだが、亡くなった時にいくつか紹介記事を読んで、とりあえず「杳子」から読めばいいのかなあと思…

青木淳編『建築文学傑作選』

建築家である青木淳による「建築文学」アンソロジー ここでいう「建築文学」というのは、編者が建築的だと考える文学のことであり、必ずしも建築物が出てくる文学という意味ではない。ただし、候補となる作品があまりにも多くなったので、「日本文学」と「建…

Newton2022年2月号

Newton 2022年2月号作者:科学雑誌NewtonニュートンプレスAmazon ハプティクス─触覚をあやつる新技術 触覚VRについて 感覚については特殊感覚(眼と視覚、耳と聴覚など専用の感覚器官があるもの)と体性感覚があり、体性感覚はさらに皮膚感覚と深部感覚*1とに…