Derek Hodgson "The Visual Brain, Perception, and Depiction of Animals in Rock Art"

 認知考古学による洞窟壁画の研究について
描写の起源に関わるような話で、人類史的な起源でもあるし、どんな認知能力が基盤になったのかという意味での起源でもある。
筆者のHodgsonは考古学者であるが、神経科学・知覚心理学進化心理学などの知見を取り込んだ認知考古学を行っており、旧石器時代の芸術を研究している。
直接的には美学の論文ではないが、個人的には美学・描写の哲学について勉強する一環で、ちょっとここらへんも何やっているのか興味あるなーと思ってググって見つけてきた論文


輪郭を検知する能力が関わってるよ、みたいな話
http://dx.doi.org/10.1155/2013/342801dx.doi.org

1.Introduction
2.Perceptual Precursors
3.Diagnostic Cues and the Typical Viewing Profile
4. Outlines
5. The Indexical and Iconic
6. Discussion
7. Conclusion

1.Introduction

動物の絵が広く普遍的に描かれていることについて、文化的な説明だけでは不十分

2.Perceptual Precursors

対象を特定するための脳の視覚的な機能
動物はカモフラージュをする、色やテクスチャより形が優先。形は状況が変わっても維持される性質。
カモフラージュした動物の検知は、サバイバルに重要で、そのための視覚能力が脳に結線("hard wired")されている

3.Diagnostic Cues and the Typical Viewing Profile

まず、いくつかの研究が簡単に紹介されている
・伝統的な狩猟者は、動物の顕著な部分に特に注意を払う
・動物を見ている時の情報入力は、腹側経路と辺縁系で処理されるが、処理される特徴は色やテクスチャより輪郭の形
・人やサルの視覚系は、動物を同定するために、形などの粗い視覚情報に頼っている
・側面からの見た目が、動物を同定するためにもっとも一般的な手段
視覚系は、形から徴候的な特徴を沢山拾ってくる。その特徴を、イメージャリーや記憶の中に蓄積された情報とマッチングしている

4. Outlines

輪郭のアウトライン
動物がカモフラージュしててもアウトラインを見つけ出すことができる
劣化したアウトラインを認識する能力が2歳からある(欠けた形を埋めることができる)

5. The Indexical and Iconic

パースのいうインデックス記号とイコン記号
インデックス記号の方が基礎的で簡単に描ける
手のプリントが広く見られるのはここから説明できる
手のプリントから動物の描写へと次第に変化していく

6. Discussion/7. Conclusion

文化的影響もある
狩猟採集者だけでなくのちの時代の定住グループにも動物の絵について同じような特徴がある