『大人のための「恐竜学」』小林快次監修・土屋健著

インターネット上で募った質問をもとに、Q&A方式で恐竜について入門する本。
「大人のための」というのは、恐竜というと子供が好きなものというイメージが強いが、そうでなく大人であっても恐竜について色々知りたい人はいるだろうから、そういう人たち向け、という意味。
確かに、例えば超ひも理論とかは新書なり何なりで入門書が色々とあるように思えるが、恐竜となると意外と点数は少ない気がする。子供向けの図鑑は沢山あるけど。


内容は、Q&A方式なので、「恐竜とは一体何か」といった基本的な話から始まり、多岐にわたる。
個人的には、知ってる話も知らない話も色々あったという感じ。
小田隆さんの挿絵の点数が結構沢山入っているのもポイントかもしれない。

第1章 そもそも恐竜って何?
第2章 恐竜はどのように進化してきたのか?
第3章 恐竜のカラダはどうなっている?
第4章 恐竜のライフスタイル
第5章 もっと知りたい! 恐竜豆知識

以下、印象に残っているところを並べていく感じで紹介
あんまり本の順序などとは対応してないし、かなり部分的


恐竜とは何かということについて、「トリケラトプスと鳥類のもっとも近い祖先から生まれたすべて」というような言い方をしていて、鳥盤目の代表としてトリケラトプス、竜盤目の代表として鳥類を挙げて、この二つをひっくるめて恐竜といいますよという話。説明されれば別にどってことない話だけど、そういう言い方するのねという感じだった。
鳥は恐竜である、ということについては、今となっては既に何度か聞いた話なのでいいんだけど、骨盤の形が鳥に似てたから鳥盤目って名前がついたのに、肝心の鳥は竜盤目だったっていうのが、なんか腑に落ちないというか頭がこんがらがるんだよなー。鳥が竜盤目っていうのも、鳥は獣脚類から進化したってのは自分が子供の頃から言われていた話だから、別に問題なく受け入れられるんだけど、じゃあなんで鳥盤目に「鳥」盤目っていう名前つけたんだよ、ってとこがねw


個人的に衝撃的だったのは、アンキロサウルスのしっぽのこぶが中身スカスカで武器として使えないって話。
同様に、ステゴサウルスの背中の板、エドモントニアの肩のスパイクも中身スカスカらしい。
ステゴサウルスについていえば、しっぽのスパイクは武器として使えるし、実際使っていたらしいので別にいいんだけど、ヨロイ竜2種の体たらく(?)といったらw 「はったり」だったのではないかという話。
求愛に使っていたのではないかという説もあるらしい。
求愛ということでいうと、最近何かと話題の羽毛恐竜についても同様の話があるらしい。
羽毛恐竜が何で羽毛を持つことになったか諸説あるらしいのだけど、羽毛恐竜の特徴として、幼体には羽毛がないが成体には羽毛があるというのがあるらしく、そこから成体だけに必要→繁殖活動に用いられていたという説が有力っぽい。で、繁殖活動って何かっていうと、抱卵か求愛かと。羽毛は抱卵っぽいけど。
この本にはそこまで書いてなかったけど、確かに現生の動物でも変な(?)デザインの動物は、性選択によってそんな形になってたりするので、恐竜の様々なデザインが性選択の結果ってのは確かにありそうな話だなと思った。


最近、何かとトリケラトプス(とトロサウルス)が話題になってたりするけど、その手の話題、種の名前ってどうやってつけるの系の話もいくつかあったり。
ブロントサウルスとアパトサウルスの件は、なんとなーく知っていたのだけど、ちゃんとは知らなかったところだった。自分が子供の頃は両方、図鑑に載っていたが、今ではアパトサウルスだけになっているらしい。
別々に名前をつけられたが、あとで同一種だと分かったというパターンだが、実はそれは1903年のことらしい。その論文がどうもあまり有名でなかったがために、最近まで一般向けの図鑑にはブロントサウルスが残り続けていたらしい……。
属名と種小名の二名法の分かりやすい例として、ティラノサウルス・レックスがあるけれど、ティラノサウルス属にはレックス種しかいない(1属1種)だということを知らなかった。何でこいつだけ、種小名まで有名になったんだろうか(『ジュラシック・パーク』?)。


ティラノサウルスはやはり人気で質問も多く集まったのか、ティラノサウルスコーナーが作られていた。
最強の肉食恐竜であることが強調されていた。
ティラノサウルス白亜紀最強)とアロサウルスジュラ紀最強)が戦ったらどっちが強いのか、なんていうのは恐竜少年であれば誰もが考えることではあるわけだが、サイズが圧倒的に違うので、まあティラノサウルスだろう、と。さらにいえば、タイプも違っていて、ティラノサウルスは噛み砕く、アロサウルスは歯で切り裂くタイプだったらしい。
噛む力について、ティラノサウルスアロサウルス、ワニ、ライオンを比較したグラフが載っているのだけど、ティラノサウルスが圧倒的すぎる。ライオンの10倍、アロサウルスの6倍である。
身体の大きさという点では、スピノサウルスやギガノトサウルスがティラノサウルスを上回っているのだが、スピノサウルスは魚食がメイン、ギガノトサウルスもティラノサウルスと比較して頭部が細く、噛む力は弱かった、と。
そういえば、ティラノサウルスといえばいっとき、ハンターかスカベンジャーかみたいな議論がよくなされていたけれど、この本ではスカベンジャー説への言及が全くなかった。
小林さんの研究で、ティラノサウルスの嗅覚がとても発達してたということが分かっている(それはこの本でも2回ほど言及されている)。で、どうもそれがハンター説の裏付けになっているみたい。ティラノサウルス 化石で 「 鋭い嗅覚 」 裏付け 腐肉食説に終止符? - ここは (*゚∀゚)ゞカガクニュース隊だった


この本の最後の方では、恐竜を勉強するためにはどうすればいいのかということにもページが割かれている。
どんな本を読めばいいのかとか(巻末に参考文献もある)、日本で恐竜を研究している大学の紹介とか
ここで紹介されているのは、北大、東大、福岡大。特に北大の小林快次研究室は、日本で本格的に開講した最初の研究室とのこと。
ここには書かれていないが、今日、福井県立大学の恐竜学研究所のニュースがあった。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/school_education/46248.html


自分の子供の時は、恐竜の本の大半には、監修・小畠郁生とあって、その名前を深く心に刻みこんだものだけど
、今ではそのポジションに小林さんがいるのだろうなあという感じ。今の恐竜少年は北大を目指していたりするのだろうか。
なみで、小畠郁生が1929年生まれ、冨田幸光が1950年生まれ、真鍋真*1が1959年生まれ、小林快次が1971年生まれ


自分と恐竜との関わりについてちらほら
以下自分語り
幼稚園くらいの時から恐竜が好きな子供で、その頃に結構名前を覚えたりして、今でもそれなりに覚えていると思う。
でも次第に恐竜への興味は薄れていって、というか興味関心が広がって相対的に恐竜への関心が低くなったというか。小学校高学年から中学生くらいになった頃にはもう恐竜の本とか読まなくなっていた。
『Newton』をわりとずっと読んでいたので、そこで恐竜特集とかをやっていたら読んだりはしていた。このブログにも多少残っていたりする(例えばこれとか)。
自分のはてブを見ると、恐竜タグをつけているのが20個くらいはある。まあその程度の興味関心度合という感じ。
それが去年の夏くらいに、急に恐竜展に行きたくなってきて、ちょっと本を読んで恐竜展にも行ってきた。
小林快次『恐竜時代1 起源から巨大化へ』 - logical cypher scape
ヨコハマ恐竜展 - logical cypher scape
後藤和久『決着!恐竜絶滅論争』 - logical cypher scape
行ってきたものメモ - logical cypher scape
それから最近、ラブライブ!というアニメを通じて、新田恵海という恐竜好きの声優がいることを知ったのだけど、その彼女が恐竜検定3級に合格した。
お知らせざうるす(m'◇'m) : えみりんごの唄
恐竜検定というもの自体、知らなかったのだけど、これにちょっと刺激を受けて恐竜検定が気になり始めている今日この頃だったりする。
https://www.animal-planet.jp/kentei/example/index.html


大人のための「恐竜学」(祥伝社新書)

大人のための「恐竜学」(祥伝社新書)

*1:真鍋博の息子らしい