2017-01-01から1年間の記事一覧

『アウトレイジ最終章』

ピエール瀧と大杉漣をいかに面白く殺すかという映画 いや、アウトレイジシリーズは、無印、ビヨンド、そしてこの最終章という三部作になっているのだが、自分は、無印は見ていたのだが、ビヨンドを実は未見で、それにもかかわらず、まあビヨンド見てなくも分…

キム・スタンリー・ロビンスン『グリーン・マーズ』上下

キム・スタンリー・ロビンスン『レッド・マーズ』上下 - logical cypher scapeの続編 2020年代〜2061年までを描いた前作に引き続き、2100年代初頭の火星を描く。 タイトルにあるとおり、火星の緑化が少しずつ進行している。人為的な温暖化が進行し、大気も厚…

『裏切りのサーカス』

TLで見てる人がいて、なんか見てみたくなったので、ネット配信されているものを見た 1970年代のイギリス諜報部=サーカスを舞台に、ソ連の二重スパイが誰かを探していく物語 ル・カレの小説が原作 ゲイリー・オールドマンやベネディクト・カンバーバッチが出…

『フィルカルVol.2No.2』

「分析哲学と文化をつなぐ」雑誌、通算4号 これまでただの一読者として読んできて、自分が投稿するとかは全然考えていなかったのだけど、気付いていたら投稿していた。 というわけで、シノハラユウキ「メディアを跨ぐヴィヴィッドな想像」が掲載されていま…

キム・スタンリー・ロビンスン『レッド・マーズ』上下

マーズ三部作の第一弾 200年間に及ぶ火星植民の歴史を描く大河SF作品 『レッド・マーズ』原作1992年、邦訳1998年 『グリーン・マーズ』原作1993年、邦訳2001年 と出ていたところ、第三部の『ブルー・マーズ』は原作1996年に対して、邦訳が2017年と随分と間が…

『日経サイエンス2017年11月号』『Newton2017年11月号』『ナショナルジオグラフィック2017年10月号』

日経サイエンス2017年11月号 日経サイエンス 2017年11月号出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2017/09/25メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 記憶をつくり変える 井ノ口 馨 連合記憶の話 記憶の脳神経メカニズムとして、記憶は、神経…

月村了衛『機龍警察狼眼殺手』

機龍警察シリーズ長編第5弾 ミステリマガジンでの連載をまとめ加筆修正したもの。 疑獄事件と連続殺人事件を異例の合同捜査態勢を追うも、正体不明の殺し屋「狼眼殺手」に捜査本部は翻弄される。物語の核心と日本の闇に迫る巨大な事件が次第に姿を現していく…

D・ルイス『世界の複数性について』(出口康夫監訳、佐金 武・小山 虎・海田大輔・山口 尚 訳)

様相実在論についての本 D.ルイスの本は、以前、デイヴィッド・ルイス『反事実的条件法』 - logical cypher scapeも読んだ 『フィクションは重なり合う』の構想段階で、タイトル案として『虚構世界の複数性について』というものも考えていたので、やはり読ま…

弱肉強食うんたら

弱者を抹殺する。不謹慎な質問ですが、疑問に思ったのでお答え頂けれ... - Yahoo!知恵袋 2011年の知恵袋なのだけど、ここ数年の間、まとめサイト的なニュースサイト的なものに拾われて目にすることが、何度かあったので、気になっている。 「この回答が秀逸…

「ベルギー奇想の系譜」展

Bunkamuraザ・ミュージアム 1 15-17世紀のフランドル美術 ボスを売りにした展覧会だったが、ほとんどは、ボスの死後に起きたボス・リバイバルの中で描かれたボス・フォロワーによる作品 ポスターなどに使われている《トゥヌクダルスの幻視》のみボスの作品 …

S.E.P.「Depiction描写」

Depiction (Stanford Encyclopedia of Philosophy) 1. Resemblance Theories of Depiction 1.1 Resemblance and its Critics 1.2 Recent Resemblance Theories 2. Conventionalist Theories of Depiction 3. Psychological Theories of Depiction 3.1 Experi…

宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』

中央アジアの架空の国アラルスタンを舞台に、若き女性たちが一夜にして臨時政府を樹立せざるを得なくなった顛末を描く物語 アラルスタンの設定がよくできていて、それで勝ったも同然という感じ 物語も一気に読み進めることができて、終始面白かった 前半と後…

『日経サイエンス2017年10月号』

若冲、特に興味ないしなあと思ってスルーしてたんだけど、宣伝ツイいくつか読んでたら、いくつか興味ありそうな話題かもしれないと思いなおし、眺めてみたら面白かった。 若冲、ボヤジアン星、地衣類の3つ日経サイエンス 2017年10月号出版社/メーカー: 日本…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス5-迷い子たちの一歩-』

壮絶なる幕引きを迎えた4巻からおよそ1年あまりを経て刊行された、続刊たる5巻 絶望的な状況からの再起を描く 筆者曰く、ここから後半が始まるとのこと。今後、物語の根幹に関わる謎へと迫っていくことになるのかもしれない。 それにしても、毎度のこと思…

藤川直也『名前に何の意味があるのか 固有名の哲学』

固有名について、それがどのように指示を行っているかの哲学的説明と、「その意味は指示対象に尽きる」というミル的な立場から、ミル説への反論として持ち出される問題について解決を図る本。 固有名の哲学というと、ラッセルの記述説とクリプキの直接指示説…

『現代思想2017年7月号 特集=宇宙のフロンティア』

おおむね系外惑星やアストロバイオロジーについて。いくつか宇宙開発に係るものもある(宇宙倫理なども含む)。 宇宙特集といっても、宇宙論とかブラックホールとかそういった話題はなし現代思想 2017年7月号 特集=宇宙のフロンティア―系外惑星・地球外生命…

冲方丁『テスタメントシュピーゲル』3下

堂々の完結! 帯によれば、「10年がかり」とある。 自分は2009年からの読者なので、この物語との付き合いは8年ということになる。 これまでの感想 冲方丁『スプライトシュピーゲル』『オイレンシュピーゲル』 - logical cypher scape あんまりちゃんと感想メ…

金杉武司「自己知と自己認知」(『シリーズ新・心の哲学1認知篇』)

『シリーズ新・心の哲学』の中で、とりあえず自己知の章だけ読みたかったのでそれだけ。 ただ、他の章も気になったものがあるので、後日また読むかもしれない。 第1章は、フォーだーの思考の言語説(LOT)及び概念原子論とそれに対する認知心理学のプロ…

鈴木貴之『ぼくらが原子の集まりなら、なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう』

サブタイトルは「意識のハード・プロブレムに挑む」 意識の自然化に挑むものであり、「本来的表象はすべて意識経験である」という「ミニマルな表象理論」を展開する。 結論部に筆者の主張がまとめられているので、一部を以下に引用する。 ◎意識経験は全て知…

土屋健『カラー図解 古生物たちのふしぎな世界 繁栄と絶滅の古生代3億年史』

講談社ブルーバックスから、古生代について1冊にまとめたハンドブック 古生代については以前、同じ著者によるいわゆる黒い本シリーズを読んだけれど、こちらはそのエッセンスをコンパクトにまとめた本とも言えるかもしれない。 黒い本シリーズだと、古生代は…

鈴木雅雄+中田健太郎編『マンガ視覚文化論 見る、聞く、語る』

鈴木雅雄編著『マンガを「見る」という体験』 - logical cypher scapeの続編 前著が、シュールリアリスムとマンガとの比較という観点があったのに対して、こちらはよりマンガ中心である。 タイトルが示す通り、視覚文化論とのかかわりから論じられるものが多…

『ロード・オブ・ウォー』

『ヨルムンガンド』のアニメを見ていた頃に、元ネタらしいと聞いて、見てみたいなあと思いつつ気づけば5年が過ぎ、なんとかプライムさんのおかげでようやっと見れたw ニコラス・ケイジ演じる武器商人の話 一発の銃弾が工場で造られ実際に銃から発射されるま…

ギガ恐竜展2017

幕張はやっぱ遠いなあと思いつつ、なんか幕張行くことが最近多いなあ (ライブと恐竜展、あとBLAME!の映画を幕張で見た) なかなか色々見れて面白かった 福井県立博物館から来たものが多かった。 実際、展示の一番最後は福井コーナーだったし もっというと、…

真鍋真編『別冊日経サイエンス よみがえる恐竜』

過去の日経サイエンスに掲載された恐竜関係の記事をまとめたもの 恐竜(に限らないが)関係の情報は次々と新しくなっていくところがあるので、これも色々と知識をアップデートさせてくれる。 鳥との関係についての記事や、あるいは従来は、絶対に保存されな…

グレッグ・イーガン『アロウズ・オブ・タイム』

グレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』 - logical cypher scape、グレッグ・イーガン『エターナル・フレイム』 - logical cypher scapeに続く直交三部作完結編我々の宇宙とは物理学上のパラメータが異なる宇宙を舞台にした世代宇宙船SF 1巻の主人…

清塚邦彦『フィクションの哲学 改訂版』

新章が追加されたということで、取り急ぎそこの部分だけ読んだ。フィクションの哲学 〔改訂版〕作者:邦彦, 清塚発売日: 2017/06/24メディア: 単行本 第七章 フィクションの意義と意味 この章のタイトル、目次だけ見てた時、どういうことかわかってなかったん…

チャイナ・ミエヴィル『爆発の三つの欠片』

28編もの短編が収録されている短編集 いわゆる「サイエンス」なSFというよりはむしろ、奇妙な話、不思議な話というテイスト わりと現代のロンドンを舞台にしたような作品が多い気がした 28編もあるので、面白いものもあればそうでもないものもある。というか…

ジェシー・プリンツ『はらわたが煮えくりかえる』(源河亨訳)

サブタイトルは、「情動の身体知覚説」 認知科学、心理学、文化人類学などの情動研究に基づいた、情動についての哲学の本。 情動についての哲学とは、つまり、情動についての理論的・概念的な分析がなされているということ。そもそも情動とは一体何なのかと…

『芸術の言語』から現代の分析美学へ

グッドマン『芸術の言語』発売を記念して、東大駒場で開催されたイベントへ行ってきた。 5つのトピックについて、5人の登壇者がそれぞれ、グッドマンの主張とその後の分析美学における主張とを紹介するというもので、とても勉強になって面白かった。 特に、…

源河亨『知覚と判断の境界線』

サブタイトルは、「「知覚の哲学」基本と応用」であり、そのタイトル通り、知覚の哲学の基本から始まり応用問題に至る。著者の博士論文を元にした著作であり、既存の理論の紹介だけでなく、後半では、著者による「高次モード知覚説」が論じられることとなる…