2012-01-01から1年間の記事一覧

月村了衛『機龍警察 自爆条項』

機甲兵装というパワードスーツみたいな兵器がテロに使われるようになった近未来、対機甲兵装テロのために新設された警視庁特捜部の話。 シリーズ2作目なのだが、ネット上のどこかで誰かが、「これから読む人は自爆条項から読むのがいいかも」みたいなことを…

『ART TRACE PRESS 01』

特集ジャクソン・ポロック ポロック展行く前の予習ってことで読んでみた。あと、美術批評って全然知らないので、その勉強も。 松浦寿夫と林道郎の責任編集で作られた批評誌の創刊号。 唯一にして多数のポロック 松浦寿夫×林道郎 責任編集2人による対談。 対…

パオロ・バチガルピ『第六ポンプ』

バチガルピ作品の特長は描かれる世界や物語の空気感。一つには、舞台となっている世界の風土的な意味での空気、もう一つには、物語の展開から醸し出される雰囲気という意味での空気。 後者についていうと、以前上田早友里が『ねじきまき少女』をノワールと称…

『Newton2012年4月号』

久しぶりにNewton読んだ。目当ての記事は「書き換えられる「不確定性原理」」。小澤の不等式の解説記事。 「誤差」と「ゆらぎ」の違いが重要らしい。ハイゼンベルクの不等式は「誤差」についての式。小澤の不等式はそこに「ゆらぎ」についての項を加えている…

シュルるPによる「ソーシャルパンク(高速ボカロック)」

少し前から、シュルるP(シュールレアリスムを正しく理解するP)が、「高速ボカロック」なるものについてちょくちょく書いてるのが気になっていた。 togetterにおいてまとめられているのだが、いくつかあって分散しているので、自分用メモとしてここにまと…

『SFマガジン2012年2月号』

日本作家特集の4本を読んだ。 普通にさくさく読めて、面白かったけど物足りない感じ。 SF設定がすごいというのではなくて、SF設定を背景においてそこから紡ぎ出される物語の叙情の方に重点がある、とでもいえばいいのだろうか。 宮内悠介「ヨハネスブルグの…

『ボカロクリティークvol.02』

『ボカロクリティークvol.01』 - logical cypher scapeの第二号 発起人の島袋八起さんからご恵投いただきました。どうもありがとうございます。 今回は、GUMIさんのおっぱいが表紙です 今回もやっぱり作品論がねえっていうのが、物足りないポイントでした。 …

田中慎弥「共喰い」円城塔「道化師の蝶」

久しぶりに雑誌で小説を読んだ感じ。 それだけでなく、文芸誌系小説読むのも久しぶりかな。 読み終わったときの感想引用 芥川賞選評、インタビューならびに受賞作読み終わった。「道化師の蝶」面白かった!! 円城塔読むの久しぶりだったんだが、リーダブリ…

青山拓央『分析哲学講義』

ちくま新書から出た分析哲学の入門書。 分析哲学の入門書というと、先日、講談社選書メチエから、八木沢敬『分析哲学入門』という本も出ているが、この両者はある意味ではよく似ているし、ある意味では結構違う。 どちらも分析哲学とは何かというところから…

高階秀爾『20世紀美術』

高階秀爾『世紀末芸術』 - logical cypher scapeの続き。 序章 現代美術の課題 ピカソの言葉「人はみな絵画を理解しようとする。ではなぜ人は小鳥の歌を理解しようとはしないのだろうか。(...)人はなぜ理解しようとはせず、ただひたすらそれらを愛するのだろ…

北方謙三『黒龍の柩』

土方歳三を主人公に、池田屋事件から箱館戦争までを描いた作品。新撰組を人斬り集団で終わらせたくないと考える土方が、蝦夷地独立に夢を託そうと奔走する話。 歴史小説・時代小説はほとんど読まないけど、北方謙三読むのは実は2作目。 以前、新聞で連載さ…

桑島秀樹『崇高の美学』

美学における「崇高」という概念についてまとめられた本。 崇高とは、何か超越的な気高いものを指しているというわけではなく、むしろ山とか石とか地面とかいったものを徹底的に凝視することで感じられる感性的な価値である、というのがざっくりしたまとめ。…

北野圭介『映像論序説――デジタル/アナログを越えて』

映像を巡る言説を、アナログとデジタルの区別について吟味する形でまとめたもの。 冒頭で、方法論として概念分析と系譜学的考証というのを挙げている通り、映像という言葉がどのように使われてきたのかというのを追いかけている。 アナログ映像とデジタル映…

モーグルワールドカップ(レイクプラシッド)

1月19日のレイクプラシッド大会のリザルトを見た。 男子はまたもKINGSBURY Mikael が1位 女子はハンナ・カーニーが1位で、DUFOUR-LAPOINTE Justine が2位。どうも開幕以来ずっとこの二人がこの順位にいるっぽい。3位はニコラ・スドヴァで、スドヴァもずっと…

高階秀爾『世紀末芸術』

タイトルにある通り、世紀末芸術についての本。 以下、内容のまとめ。 序章 世紀末芸術とは何か 1転換期の芸術 19世紀末は、19世紀と20世紀に挟まれて美術史の盲点になっている時代*1。この二つの時代を繋いだとされると転載として、セザンヌ、ゴーガン、ゴ…

『けいおん!』

映画館行ったら、ちびっこもいるし、女性客もいるし、公開から一ヶ月以上たってるのに客の入りもいいし、「こ、これが社会現象か」とびびったりしたw 話には聞いていたけれど*1、見るまでは信じられなかった。というか、『けいおん!』は確かに面白いけれど…

東浩紀『サイバースペースは何故そう呼ばれるか+』

「サイバースペースは何故そう呼ばれるか」を河出文庫版で再読。 それから、収録されている論考「精神分析の世紀、情報機械の世紀」「想像界と動物的通路」「スーパーフラットで思弁する」を読んだ。「精神分析の〜」は再読、残り2つは初めて読んだ。対話の…

「ルドンとその周辺――夢見る世紀末」

三菱一号館美術館。 ルドン、面白かったー。 実はルドンのことは、バックベアード様くらいしか知らないような状態で見に行ったのだけど、初期から晩年まで網羅的に展示してあって、とても見応えがあった。 三部構成になっていて、一部は白黒時代のルドン、二…

『背景から考える――聖地・郊外・ミクスドリアリティ』

『アニメルカ』に何回かにわけて掲載されてきた、みよじ・はるを・よしたか、tricken、反=アニメ批評による座談会を一冊にまとめたもの。 さらに、『マイマイ新子と千年の魔法』の監督と、『けいおん』の高校のモデルとなった豊郷小学校がある豊郷町産業振…

磯崎憲一郎『肝心の子供/眼と太陽』

どちらも雑誌で読んでいたが、文庫になったので*1再読 「肝心の子供」は、記憶にあったのより短かく感じた。 そのときはふたりとも言葉も出せずただごくりと飲み込み、虎から眼を逸らさぬようにしてゆっくり、ゆっくり後ずさり、すると虎のほうも後を追って…

ワールドカップモーグル(ルカ・メリベル)

めちゃくちゃ久しぶりにリザルトを見てみた。 どうも去年は全く見ていなかったようだ。Bravoskiも長いこと買ってない気がする。 12月10日のフィンランド・ルカ大会と12月20日のフランス・メリベル大会。 今シーズンはちゃんと12月中に2回も開けて…

吉田直『トリニティ・ブラッド』

2001年から2004年に出てたラノベ。著者が早くに亡くなってしまったため、未完のままとなっていることは知った上で読んでいたが、読み終わってやはり続きが読めないのが惜しいと感じる作品。 “大災厄”以後、文明レベルが衰退した世界。教皇庁が各国を…

スコット・ウエスターフェルド『リヴァイアサン』

新年最初の更新ということで、まず簡単にご挨拶。 昨年も何とか当ブログを更新し続けることができました。 今年もまた変わらずやっていければと思っていますので、これからもよろしくお願いします。 新☆ハヤカワ・SF・シリーズの第一回配本となった本作は、…