『ユリイカ2019年12月号 特集=Vaporwave』

松下哲也「ビアズリーの挿絵はマンガの形式に影響をおよぼしたのか?」(『ユリイカ2019年3月臨時増刊号』) - logical cypher scape2の勢いで、こっちの号のユリイカもちらっと眺めた
やはりこちらも主に松下さんの記事について

imdkm「空間ならざる空間の響き――エコージャムズと零度の空間」

vaporwaveの方法(でありvaporwaveという名前がつく以前はジャンル名でもあった)エコージャムズについて
好きなフレーズを繰り返すというだけなら、何故テンポチェンジやディレイがかけられているのか
レコーディングされた音楽は、その空間についての情報も入っているが、そうした空間が消える
聴覚的な空間表象(?)みたいな話としたら面白いなと

柴崎祐二「Vaporwaveと俗流アンビエント――ニュー・エイジの消費主義的異形をめぐって」

俗流アンビエント」は筆者の造語で、ヒーリングミュージックとかその手の奴

松下哲也「Vaporwaveと「シコリティ」の美学」

魔夜峰央特集の時もそうだけど、特集にこじつけて特集とあんま関係ない話するの得意(いい意味で)
ここでいう「シコリティ」はもちろんネットスラングに由来するが、元のネットスラングが持っていた意味とはかなり違う意味を持たせており、その点で、本当にその名前のいいのか感はあるのだが。
ここで着目されているのは、色収束やレンズフレア、レンズによってもたらせている歪みなどの視覚効果、ならびにそのような視覚効果を画面の「つなぎ」として用いていること。
何故それを「シコリティ」なる用語で呼んでいるのかというと、「ゼロ・シコリティ」というアート作品があり、それが低予算エロゲーの背景画を集めたものなのだが、そうした背景画は(ゲームにとって重要なキャラクターと違って)クオリティが低く、上述の視覚効果が使われていない。何がゼロなのかといえば、そうした「つなぎ」がないのだ、と。だから、逆に言えば(?)、そうした「つなぎ」こそが「シコリティ」の正体なのだ、というつながり。
ところで、あえてレンズの歪みとかを、ある種のリアリティのために用いることって、マフノヴィッチの『ニューメディアの言語』にも書かれていたような気がする(ニューメディアはオールドメディアの特徴を模倣する)。
この現象ないし概念自体はとても興味深い

難波優輝「Future Funkとアニメーション――ふたつの夢の分析」

銭清弘「不安を与えるミームたち――さらにもう一つの(悪趣味な)Vaporwave史」

これ、以前ブログで書かれていたvapermemeについての補遺みたいな