『日経サイエンス2022年8月号』

特集:渡り鳥の量子コンパス

高精度ナビの仕組み 鳥には地磁気が見えている  P. J. ホア/ H. モウリットセン

渡り鳥がどうやって正しいルートを見つけているのか
1970年代に量子コンパスを使っているという仮説をシュルテンが提唱し、近年、その仮説が実証されようとしている。
渡り鳥は、太陽、月、そしてこの量子コンパスの3種類を使って方角を割り出している。
普通の原子は、スピンが打ち消し合っているが、電子が少ないあるいは多い「ラジカル」は、そうならない。ラジカルが2つある状態が「ラジカル対」で、ラジカル対が網膜の中にあって、これで地磁気の方向を感知しているという説
鳥の地磁気感覚にはいくつかの特徴があって(例えば光に依存しているなど)、この仮説はそうした特徴に沿う。
近年、実験によって確かめられつつあることが紹介されている。
ところで、渡り鳥の方向感覚って、例えば、東南に渡る個体と西南に渡る個体のつがいから産まれた雛は、南に渡るようになるらしい。そんな遺伝の仕方するのか……
初めて渡りをする奴は、遺伝にプログラムした通りの方向に向かい、強い風に吹き飛ばされたりすると戻れなくなるが、一度成功すると、脳内に地図ができてかなり高い精度で修正が可能になるらしい。
渡りの時期が近くなると、わたる方向へ行こうとする。小屋の中とかに入れておくと、みんな同じ向きを向くという行動をとるらしいが、磁場を遮蔽するとしなくなるとかなんとかそういう実験の話とかが書いてあった気がする。

動物たちの磁気感覚  出村政彬

以前、鳥が視覚的に磁場を見ている仕組み、量研機構などがその一端を解明 (1) | TECH+というニュースがあったが、これの紹介
これはハトの話だが、近年、他の動物でも磁気感覚を持っているらしいという研究が次々出てきているらしい。
鳥が量子コンパスに使っていると考えられるタンパク質は、他の生き物ももっている(一つは真核生物なら持っているような奴で、もう一つは多くの動物が持っている奴らしい)ので、実は、磁気感覚は(人間が持っていないだけで)比較的ポピュラーな感覚なのかもしれない、と。
ただ、それがゆえに、人間が気付いていないだけで、人間が知らずに動物たちに与えている影響があるかもしれない、とも。
非常に弱い磁場にも(地磁気は非常に弱い)反応するので、人間が発生されている磁場の影響を受けているはず。
逆に、渡り鳥の営巣地などの環境が破壊された際に、別の営巣地へ移動させるために、磁気感覚を利用できるようになるかもしれない。
あと、鳥は磁気を視覚で感じ取っているようだけど、具体的にどのような見え方をするのかも今後の研究課題。もし桿体細胞で検知してるなら明るさとして見えているのだろうし、錐体細胞で検知しているなら色として見ているのではないか、とか
また、量子コンパス以外の仕組みで磁気感覚を有している生物もいて、磁鉄鉱を使った細菌や昆虫がいるらしい。渡り鳥の磁気感覚もかつては磁鉄鉱によるものではないかという説があったらしい。