テリー・ギリアム『ローズ・イン・タイドランド』

ギリアムのアリス
もっと、『パンズ・ラビリンス』みたいなのを想像していたのだけど、そうではなかった。
ってかすごい。


10歳の少女ジェライザ=ローズは、父親が売れないミュージシャンで両親が揃ってヤク中。
ってか、父親はヘロイン注射を娘にやらせてたりして、ひどい環境なんだが、映画が始まってすぐに母親がODで死んじゃう。父親とローズは、母親の死体放置して、父親の田舎へと。
大草原のど真ん中にたったあばら屋。祖母はもうとっくに他界しており、誰も住んでいないんだが、父親もローズもどうすることもできないのでそこに住み始める。
んだけど、父親もしばらくしてODで死んじゃう。
ローズは、ピーナッツクリームなんかを舐めながら、友達である人形の頭部と一緒にその草原で暮らし始める。
で、全身黒づくめの中年女性デルと出会う。デルもなんかちょっと頭おかしい人なんだけど、一応ローズに食事とかは与えてくれる。ただ、ローズの人形のことは嫌い。
それからデルの弟のディキンズ。こちらは自閉症っぽいんだが、てんかんを持っていて過去にロボトミーをしたっぽい。
ローズはディキンズと仲良くなる。
お互いに草原を海に模して遊んでいて、ディキンズの潜水艦に遊びに行ったりしている。
ローズとディキンズは性的知識は全くない(ローズは、デルが宅配の兄ちゃんとセックスしているところを見てデルが吸血鬼だと思っているし、ディキンズはどうもローズの祖母に性的虐待まがいのことをされているっぽいのだが本人は気付いていない)のだが、戯れでキスをしてみたりするなどしてかなり危うい。(ローズは10歳だが、ディキンズは明らかにかなりいい年なので)
デルは、趣味としてなのか仕事としてのなのか分からないが、動物の剥製を作ることができ、さらにいうと人間も同様にすることができるスキルを何故か持っている。
デルはもともと、ローズの父親を慕っており、ローズとの出会いをきっかけに再会を果たす。ただし死体と。だがデルは、そういうことは全く意に介さず、エンバーミング(?)を始めてしまう。
実はデルは、自分の母親の死体も同様にして保存している。


ローズの妄想が映像化されるところも時々あるけれど、全体的にはそういうイメージの可視化みたいなことはあんまりなくて、むしろそういうのがないからこそ子どものごっこ遊び的な感じが良く出ている。
ってか、人形の頭部だけで遊ぶとかマジグロテスク。
あと、死体。父親の死体は舌とかふくれあがって、腹の中にもガスが溜まっていたりするし。


ディケンズは、何故かダイナマイトを隠し持っていて、サメ(本当は鉄道)をいつかそれで殺して世界の終わりをもたらすということを考えている。
ローズがデルの母親の死体を壊してしまった夜、果たしてディケンズはそれを決行してしまう。
真夜中の爆音。爆破現場へと向かうローズ。
横転した列車の横で立ちすくみ、蹲る人たち。
ある女性がローズに声をかけてオレンジを渡す。
そのオレンジを食べるローズの美しさ。


ローズ・イン・タイドランド [DVD]

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