科学哲学

イアン・ハッキング『偶然を飼いならす』

ハッキング二冊目。 統計にまつわる科学史。 面白い章も色々あったのだけど、一方で統計がよく分かっていないとよく分からない部分も多かった。統計について解説してくれるかと思ったら、統計や確率の概念についての説明はほとんどなくて、統計や確率といっ…

三中信宏『分類思考の世界』

生物学哲学の大問題である「種」を巡って、その博覧強記をもって様々なエピソードから描き出した一冊。 というわけで、これは紛うことなき科学哲学の本であり、実際著者も何度も形而上学という言葉を使っているのだけど、哲学という言葉を聞いてこういったも…

内井惣七『ダーウィンの思想』

ダーウィンが如何にして進化論を考えるに至ったのか、ということがまとめられている。 進化論そのものの解説としてもコンパクトにまとまっているけれど、それが実際にダーウィンがどのように考えていったのかがわかる。 まずはビーグル号の話と、地質学者ラ…

今日立ち読みした雑誌(『日経サイエンス(三中インタビュー)』『Newton(マルチバース)』『ユリイカ(諸星大二郎特集)』『RATIO05(戸田山・伊勢田往復書簡)』)

立ち読みしつつtwitterしてたのを抜粋。 今月の日経サイエンス。茂木インタビューの相手は、三中信宏。新書に載ってた顔写真と顔が違うw(多分髭) 系統樹コレクションの話、「種」概念の話、ダーウィンの話をしてる 種の話は、分類学はもっと認知心理学とか…

内井惣七『進化論と倫理』

上とあわせて、今日は進化論漬け。 それにしても、ダーウィンはすごいなあと思う。 20世紀の天才はアインシュタインだとして、19世紀の天才は間違いなくダーウィン。 進化論は、ダーウィン以後様々に改訂されてきたし、そもそもダーウィンは分子生物学は…

イアン・ハッキング『表現と介入』

科学的実在論を扱った、科学哲学の本。 タイトルにあるとおり、本書は大きく分けて、表現についてと介入について扱っている。 この場合、表現というのは、科学の理論のことであり、介入というのは、実験や観察や測定のことである。 従来、哲学者があまり注目…

『科学哲学』サミール・オカーシャ

岩波から出ている「1冊でわかる」シリーズの新刊。 「1冊でわかる」というタイトルに名前負けせず、科学哲学が一体どういう営みであるかということが、コンパクトにまとめられている。 過度に抽象的にならず、具体的な例が適宜用いられているし、また何故…

『ドーキンスvsグールド』キム・ステルレニー

薄いのだけれど、とても密度の濃い、科学啓蒙書。 これまた作者は哲学者。 『自由は進化する』について書いたときも書いたけれど*1、現在の哲学者の仕事というのは、何らかの思索というよりは、様々な科学の学説の整理という面が強くなってきているように思…

野家啓一『増補科学の解釈学』

論文集なので、章ごとの独立性が結構高いけれども、大きくは3つの部分に分けられている。 すなわち 第一部科学哲学の構造転換 第二部「知識の全体論」をめぐって 第三部ウィトゲンシュタインの問題圏 である。 第一部 新科学哲学、すなわち、論理実証主義的…

グッドマン『世界制作の方法』

訳者あとがきに従えば、グッドマン哲学は、「ヴァージョンの複数性」「非実在論」「根本的相対主義」ということになる。 ヴァージョン=世界である。 グッドマンは文字通り、世界は作られるものであり、そして多数の世界=ヴァージョンがあると考えている。…

三中信宏『系統樹思考の世界』

久しぶりに新書を買って読んだ気がする。 06年の本で、既にある程度話題の本になっていたっぽいが、なかなかいいタイミングで読むことができたなあと思った。 著者は、進化生物学を専門にしている*1ので、この本はまずは進化論の本といえる。 だが、いわゆ…

あらゆるものが科学で説明することが出来るか

心の哲学についてちょっと勉強してみて思ったことは、 心については、もう自然科学の領域に任せてしまえばいい、ということ。 哲学者ないし人文系の人間が何か携わることが出来るとすれば、個々の研究を繋ぐようなロードマップを作ったりインタープリターに…

ヘンペル「意味の経験論的基準における問題と変遷」(現代哲学)

9月から11月まで、週に1本論文を読んできて、ディスカッションするという授業を取っています。 他の週の授業はこちら 前回までが言語哲学だったとすると、今回からは科学哲学。 経験論的基準というのは、いわゆる線引き問題のこと。 線引き問題とはつま…

「世界はなぜ、このように存在しているのか──不確定性の形而上学」『RATIO03』

ネットで目次見たときは、特に惹かれるものがなてく、RATIO03はスルーでいいかと思っていたのだが、店頭で実際に手に取ってみたら、ディビッド・ルイスとチャールズ・サンダー・パースの類似と相違についての論文が載ってたりするのだからこれは読まざるをえ…

内井惣七『空間の謎・時間の謎』

オルタナティブな物理学史を描き出した一冊。 科学哲学と隣接する学問に科学史というものがあって、その科学史の研究成果の一つだと思う。 普通考えられている歴史観とはちょっと異なる歴史観を提示するという仕事。 歴史「観」を強く打ち出すので、歴史家で…

伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』

「何読んでるの?」と聞かれて表紙を見せたら、ひかれた。 またそんな小難しそうな本読んで、と思われたようだ。 だとすれば、この本はタイトルで損をしている。 この本は科学哲学に関する入門書で、非常に読みやすく、また分かりやすい。 帰納法って何?反…

『科学哲学』ドミニック・ルクール

今、自分の中でとても科学哲学が盛り上がっていたりするんですが。 科学哲学の歴史が書かれた入門書。 これだけ広範に取り上げているのはないんじゃないか、という感じだけど、一方で、一つ一つの紹介に割いてるページ数が少なくなっているので(自分が)消…