マジック・ランタン 光と影の映像史

マジック・ランタンなどの機器などの展覧会。都写美。
以下の記事を読んで気になったので、見に行った。

あと、途中でぽんと出てくるリュミエール兄弟の初期映画がめちゃくちゃ異質に見えて、並置されているメリエスのほうがかえって「マジック・ランタン」展のなかだと地続きに見える。あんな変な――そしてめっちゃかっこいい――視覚をいきなり経験させられたら、例の「機関車の到着にビビって逃げ惑う客」なる伝説がうまれるのもさもありなんだ。あの構図のとり方は映画作家として圧倒的に天才だわやっぱり。

caughtacold.hatenablog.com


展示の構成は以下のとおり

1 マジック・ランタンの誕生
 誕生からファンタスマゴリアまで
 影絵の時代
2 マジック・ランタンの流行
 科学の眼
 興行
 家庭のあそび
3 日本のマジック・ランタン
 最初の渡来
 二度目の渡来
4 スライド
 パノラマ・スライド
 滑車式スライド、仕掛けスライド、クロマトロープ
 トイ・マジック・ランタンのスライド
5 マジック・ランタン以後
 シネマトグラフの誕生
 投影の現在


マジック・ランタン等の機器やスライドのほか、上映されていた様子を描いた当時の本の挿絵なども展示されている。
また、いくつかのスライドなどは、実際に壁に投影されていて、どんなだったのか何となくわかるようになっている。
で、冒頭のリュミエール兄弟の件だが、これが他のスライドなどが上映されていたために、「なるほど、こういう衝撃があったのか」というのが何となく体感できる
スライドには色々仕掛けがされていて、動くようになっている。
もっとも簡単なのは、背景の描かれたスライドの前を影絵の描かれたスライドを動かすものなどである。
つまり、投影された絵ないし映像(のようなもの)を見るという経験は、映画以前からあったわけだが、基本的に平板なものであったし、動くとしても非常に単純な動きであった、と。
リュミエール兄弟の作品の中で、赤ん坊を中心に親子が庭で食事しているというものがあるが、これについて、当時、背景の葉が揺れているということが話題になったという逸話がある。この逸話とあわせて、映画というのは、目に見えない風を描くことのできるメディアなのだ、的な話を聞いたことがある
が、他のスライドを見た後で、これを見ると、なぜ背景の葉が揺れているのを見て驚いたのかが分かる。動きを見せるスライド自体は当時からすでにあった。しかし、それは、静止している背景部分と可動する部分との組み合わせでできていたから、背景は止まっているものだったのだろう。
(背景の動いているアニメ作品見ると、今でもすげーなって思うことあるし、うんうん)
あと、これもよく言われる話だけど、駅の奴にしろ、工場の奴にしろ、ホースから水が噴き出す奴にしろ、奥行き感のある構図をとっているものが多い。これも、スライドだとなかなかなかったものだったのだろうなと思わせる。
そこいくと、メリエスの『月世界旅行』は、書き割りのセットの前で人々が演技しているのを撮影しているもので、動かない背景と動く前景、かつ、構図に奥行きはあまりないと、確かにスライド時代と地続き感があるのである。
合成とかもやっているわけだけど、スライドとスライドを重ね合わせて~みたいなものをやってたりするわけだから、そこもそこまで目新しさがあるというわけでもない