阿部和重と伊坂幸太郎の合作小説
これが面白くならないわけがない
というわけで、面白かった
何でこの2人が合作小説なのか、っていう経緯とか、どういうふうに進めていったかといったことは、以下のインタビューで読める
http://hon.bunshun.jp/articles/-/2856
ひたすら痛快なエンターテインメントだった
山形と仙台が舞台で
小学校時代に野球友だちだった2人の男が、30手前になって偶然にも再会して、あれよあれよというまに大事件に巻き込まれていくっていう
なんか陰謀があったりして
阿部和重要素もちらほら見え隠れするんだけど、確かにこれ、阿部和重1人では書けないよなあという感じする
上にあげたインタビューで、2人で村上春樹に立ち向かうって書いてるんだけど、作中で出てくる風土病みたいな奴が、村上病なんだよなー、村上レンサ球菌
相葉時之
昔から、まあいわゆるやんちゃ系で、20代もずっと定職には就かずに過ごしてきて、後輩の女の子がAV女優やらされて辞めるにやめられなくなったのを助けようとしたばっかりに、借金を背負ってしまい、母親が実家を売り払ってしまう。そのために金が必要。愛車はトランザム*1。
井ノ原悠
小学校時代、相葉と悪友だったが、中学からは山形から仙台へと転校する。今は、コピー機の営業をやっていて、妻1人子1人、しかしその息子が慢性的な湿疹を患い、その治療費がかさんで大きな借金を背負っている。コピー機に仕掛けを施して、情報を抜き出してはそれを売り払う「副業」をやって、借金を返そうとしている。
桃沢瞳
山形は蔵王の御釜や、お蔵入りになった劇場版『鳴神戦隊サンダーボルト』について調べている謎の女
相葉が、自分の借金を返す計画として、インチキ水を売っている詐欺師をハメようとするのだが、手違いによって、謎の外国人の取引を妨害してしまい、それに巻き込まれる羽目になる。
蔵王の御釜は、「村上病」という感染症の感染源とされ立入禁止区域となっているのだが、謎の外国人は何故かそこの水を手に入れようと思っている。御釜にお宝があるのではないかと考えた相葉は、何とかそれを手に入れようと考え、謎の外国人から逃亡する中で、偶然、井ノ原と再会する。
金に困っていたのは井ノ原も同じで、渋々ながら、相葉の行動に巻き込まれていく。
まあ、そこからあれよあれよで、色々なシーンの何気ないセリフとかが伏線になって、後半での解決とかに繋がっていくのが楽しい
あと、ひたすら陰謀がでかくなっていく感じも、阿部和重っぽい
楽天の田中将大が無失点記録を伸ばしてた頃の話で、そのあたりも絡ませたりしていたりする(阿部和重の日付芸的なものじゃないかと思うけど。日付芸といえば、とある日付が、とある重大な時刻に使われてたりもする)
小学校時代の友人が、大人になって再会してみれば、お互い、小学校時代には思ってもいなかった、ある意味、ちょっとしょぼい人生を送っているんだけど、ひょんなことから世界を救うヒーロー的なことをやらなければいけなくなるっていう、『20世紀少年』を思い起こさせるものでもある。
ちゃんと伏線を回収して、すっきりとハッピーエンドで終わる『20世紀少年』だよ、これw
*1:映画『サンダーボルト』に出てくる車