ゲアリー・マーカス『心を生み出す遺伝子』

氏か育ちか対立に対して、どっちもだよということを言っている話。
基本的な話は、まあ遺伝子のことをある程度知っていれば知っていることが多いかな、という感じ。
そんな中で、へえと思ったことは
遺伝子は思った以上にリアルタイムに機能していること。生きている間ずっと遺伝子が機能しているのはもちろん知ってたけど、こんなにダイナミックなのか、と。
化学物質の濃度分布で色々コントロールしていること。
氏か育ちか論争の中の議論のひとつとして、遺伝情報が表現型の複雑さに比して少なすぎないかという話があるのだけど、ひとつの遺伝暗号が多岐な機能と対応していることを挙げている。どのタイミングで発現するか、他の遺伝子との関係などで、同じ遺伝子であっても具体的な働きは色々と変わってくる。
あと、進化がどう起こるかの具体的なメカニズムとしての、重複とか。同じ遺伝子群が二つ以上できたとき、一つを残してもう一つを改造する。例えば、目の細胞。最初は一種類しか色を感知できなかったのが、重複を繰り返して三色に対応できるようになった、とか。
脳のモジュール仮説に対して、進化や遺伝子の仕組みを考えるに、そのまま受け入れることはできないんじゃないかーということを言っているが、それに対してはコネクショニズムを挙げてるっぽい。
遺伝子と心の関係について、その両者が当然関係していて、探求していくことができるのを前提としているが、「○○の遺伝子」みたいな言い方には注意を促している。一つの遺伝子が、一つの特徴に対応しているわけではないからだ。


遺伝子やゲノムというと、設計図や青写真と呼ばれることが多いけれど、むしろ、IF-THENで書かれているプログラムないし料理のレシピのようなものだということが繰り返し主張されている。
確かに設計図よりもよいメタファーだと思うけど、こういうメタファーの変換ってのは必要なものなのかもね。

心を生みだす遺伝子 (岩波現代文庫)

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