日経サイエンス2019年6月号

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特集:金星 地球の双子星

「あかつき」が見た金星の風

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あかつきは、2019年1月に、金星の影に2時間入るというピンチを切り抜けていたらしい。
ピンチなのは、ソーラー電池使えなくなるから。うまく運用して切り抜けた、と。まあそこは、話の枕で本題ではない。
本題は、金星の気候についてなのだけど、その前に、金星というのは、自転の向きが地球とは逆向きで、とてもゆっくり回っている、と。
(ゆっくり回っているから、ダイナモによる磁場が発生しなくて、磁場がないから、水素イオンがどんどん宇宙へ放出されちゃって、かつてあったとされる海がなくなってしまったと考えられているらしい)
金星には「スーパーローテーション」という、自転よりも速い風が吹いている。地球でいえばジェット気流(ただし、地球のジェット気流は自転より速くはない)のような気流だが、ジェット気流と違って、低緯度・中緯度でも吹いている。
この現象が何故起きているかは謎で、二つの仮説がある。
1つは、南北の大気循環が角運動量を輸送している説
もう一つは、熱潮汐波説で、東西へ角運動量が輸送されている説
あかつきは、中層の雲を観測し、そこが思っていたよりもダイナミックな動きをしていて、「赤道ジェット」と名付けられた現象を発見する
赤道ジェットや他のあかつきの観測は、熱潮汐波説の証拠となる
金星の気候については、JAMSTEC地球シミュレータを使ったシミュレーション研究もおこなわれているらしい
また、低層は静かだと思われていたが、あかつきの観測は、それも覆す。南北方向に弓状のパターンが現れるという現象が発見される。これは、地上にあるアフロディーテ高地が影響してできたパターンと考えられている、とか

第2の地球がたどった道

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金星は厚い大気があって地表が見えないが、電磁スペクトクルの窓があって、地表の鉱物を調べることができて、ビーナス・エクスプレスが実際にその観測をしたとか
あと、金星の地形から、今、プレートテクトニクスが始動しつつあるのではないか、とか

ジャンク化石の山から人類史の宝を探す

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ZooMS(質量分析計を用いた動物考古学)という手法による化石人類学研究
デニソワ洞窟は、化石はたくさんあるけれど、粉々になっていて何の動物の骨か分からない。が、ZooMSを使うと、何の動物か分かる(種までは特定できないが、まあ大型の類人猿だろうくらいなら分かる。そして、デニソワ洞窟で大型の類人猿はホミニンしかいない)
筆者の研究グループは、この手法を使って、小さな骨のかけらからホミニンの骨を探す。ペーボと共同研究しており、ペーボがDNA分析を行う
デニソワは、骨は粉々だけど、分子の保存状況はよいらしい
それで、デニソワ人とネアンデルタール人のハーフを発見した、と
同じく、ZooMSを使って、フランスのトナカイ洞窟を研究。ここでは道具や装飾品が見つかっているのだけど、ネアンデルタール人のものなのかどうかで議論があって、筆者らの研究は、やはりネアンデルタール人の道具や装飾品だっただろう、と

米国の進化論教育のいま

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アメリカで、進化論教育を禁止する法律を作れとか、創造論と進化論を同じ時間だけ教えるようにしろとか、そういう法廷闘争があったことは日本でも話題になった件だと思う。
裁判の結果は、基本的に進化論側の勝利で、創造論側は進化論教育を禁止することもID論の時間を増やすことにも失敗した。
しかし、学校の現場は、そう簡単ではないという記事
アメリカの大多数の生物学の教師は、進化論には触れないか、ほんの軽くしか触れない
センシティブな話題になってしまって、すごく扱いにくくなっているらしい


で、重要なのが、まず科学と宗教とは別で、両立させることができるんだということ、生徒に伝えるようにしないといけない、と
進化論を教える際に、宗教について触れるかどうかというのが結構重要な分かれ目になっているらしい
進化論を否定する環境に育ちながら、大学などで進化論を学び、それを受け入れるようになった人が、どのようにして教えられたかを調べたところ、宗教についても触れられていた、と。
宗教について全く触れずに進化論だけ教えようとすると、反発を受ける。
あるいは、進化論を学ぼうとしても、これまで持っていた信念体系との齟齬などから、色々な不安が生じてくる。
そういう不安をどうやって解消していけばいいのか、ということも併せて触れていきながら教育していく必要がある、と。

ロボット使う疑似体験 提唱から実用化へ:舘暲

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最近取り組んでいるのが、三原色みたく、触覚の基本的な要素となる「触原色原理」を作ろうとしている話
圧覚(硬い・柔らかい)、振動覚(ざらざら・すべすべ)、温度覚の組み合わせで触覚を表現できれば、データの効率化になる、と

NEWS SCAN

じつは単細胞 海ぶどうの謎

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多核単細胞生物らしい
細胞が分かれるかわりに、細胞核がたくさんあるらしい
ゲノム解析により、ホメオボックス遺伝子の重複によって単細胞ながら機能分化していることができているのが分かってきたみたい
細胞核が自分の位置をどうやって認識するかはいまだ謎

手のひらに乗る恐竜

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これは足跡化石だから、まだよくわからんけど

美術のなかのエントロピー

絵画の画素の、複雑さ(変動性)とエントロピーの値を調べ、それの変化が、美術史における様式の変化と対応しているのではないか、という研究があるらしい

人工の「8文字DNA」

ベンナーのチームの研究らしい
ベンナーについては『日経サイエンス』の合成生物学記事 - logical cypher scape2

ゲリマンダー幾何学で見破る

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気になったけど未読