ハッキング二冊目。
統計にまつわる科学史。
面白い章も色々あったのだけど、一方で統計がよく分かっていないとよく分からない部分も多かった。統計について解説してくれるかと思ったら、統計や確率の概念についての説明はほとんどなくて、統計や確率といった概念の歴史。なので、結構むずいといえばむずい。
生理学・医学と社会学がわりと中心で、行政との関わりもあったりして、それでいて、決定論と自由意志という哲学的問題に対する話でもあり、いわゆる「科学哲学」ではあまり取り扱われていない分野を通して、「科学哲学」的な問題にアプローチしているような気がする。「平均人」とか「統計法則」とかにリアリティが生じていく過程を描く概念史なので、一種の実在論みたいな話でもあるかもしれないし*1。
カンギレムの名前が2,3回出てきており、またバイオポリティクス(生政治)にも言及していて、エピステモロジー的な方法論でもあるんだろうなあと思う。
ルクールが、英米系科学哲学と仏エピステモロジーを繋ぐ人としてハッキングを挙げていたのを思い出した。
主要な登場人物を挙げるとしたら、コンドルセ、ブルセ、ポアソン、ケトレ、エンゲル、ベルナール、ル・プレ、バルザック、コント、デュルケム、ゴルトン、パースといったあたりか。
特に、統計に対してリアリティを与えていった人としては、ケトレ、デュルケム、ゴルトンかな。
あと、偶然の哲学として、パースに最後の一章があてられている*2。パースにつながる伏線(?)として、新カント学派がいる。この新カント学派からデュルケムにも繋がっているみたい。
パースの話は、帰納法と確率の話はちょっと面白かったけど、全体的にはよく分からなかった……。
個人的には、ケトレについて扱っている章が一番面白かったかな。
- 作者: イアン・ハッキング,石原英樹,重田園江
- 出版社/メーカー: 木鐸社
- 発売日: 1999/06/01
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 38回
- この商品を含むブログ (40件) を見る