冲方丁『マルドゥック・ヴェロシティ』

うああ、面白い!
冲方丁のプロット力!
次から次へと事件が起こり、人も色々と出てくるのだけれど、それが連鎖的に連なっていく様が何とも楽しい。途中でややこしくなっていくのだけど、しかしちゃんと分かるようにできている。登場人物一覧とかを見ると人数多いなあとか思うのだけど、人数配分とかキャラの配置とか、うまくできているなあと思う。
そもそもあの文体なのに、ってところもあるw
アクションシーンも、ボイルドが戦うところとかちゃんと思い浮かぶものな。


身体改造された元軍人が、カリスマ的なクリストファー教授に率いられて、大企業とギャングと警察が癒着して悪徳蔓延る街であるマルドゥック・シティを浄化していく、という設定。
クリストファー教授は、09という新規な法執行機関を作り上げ、マルドゥック・シティを平和な街にしようと考えている。ここでちょっと公安9課っぽいなあと思ったのだけど、9課が正義を掲げるのに対して*1、こちらは有用性を掲げる点が違う。基本的に証人保護プログラムだし。
有用性が強調されるのは、彼らが、特にネズミのウフコックが道具存在であるから。
09とボイルドが、過酷な運命というか虚無という深淵へと落ちていかざるをえなくなったのは、どこかでこの有用性が綻びてしまったからかなと思うが、しかし、この破滅への道行きは切ない。
シュピーゲルシリーズが泣けるのは、成長物語だからなのだが、こちらはハードボイルドというか大人な物語である。ボイルドとナタリアの関係とかね。
物語は基本的に、陰謀というかマルドゥック・シティの背景にある、大企業とギャングとの癒着と、カトル・カールという拷問傭兵集団の謎を暴き出していく、という形で進行していくのだが、最後の最後にSF的仕掛けが施されているのがすごい。シザーズって連接脳派だったのかよ、という。


09のメンバーが、その登場の仕方から何から、キャラが立っていてかっこいいのだけど、
クルツがかっこいい
盲目ってことで、脳内イメージはるろ剣の宇水なんですがw 彼より断然かっこよい。
09メンバーじゃないけど、フライト刑事は、こういうジャンルだと必ずこういう刑事でてくるよなって感じのキャラを最後まで通してくれてよかったw
カトルカールメンバーのキメラっぷりもやばい

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

*1:特にSACね