岡和田晃『アゲインスト・ジェノサイド』

正確には小説じゃなくて、TRPG「ガンドックゼロ」のリプレイ。
リプレイというのは初めて読んだので、形式として小説と違うことに一瞬戸惑ったけれど、読み進めていく上で問題があるということはなかった。
むしろ、TRPGを全くやったことのない自分にとっては、ルール説明などが細かく書かれてあったおかがで分かりやすかった。
ゲームシステムとしては、TRSというのがハラハラドキドキ感をうまく演出していて、よかった。狙撃シーンや脱出シーン、かーチェイスシーンなどで、成功条件をいくつかのフェーズにわけて、そのフェーズ毎にサイコロを振って判定を行っていくもの。
ただ、やっぱりプレイヤーとしてのセリフとキャラクターとしてのセリフが混じり合うのは、没入を妨げる。いや、リプレイというのはこういうものなのだろうけど。
だがストーリーは面白かった。
というか、GMとプレイヤー5人(とサイコロの出目?)の共同作業によって、こういうストーリーが組み上げられるというのは興味深いなあ。キャラクターが死んでしまったりする。もちろんGMがストーリーを用意するわけだけど、プレイヤーがキャラクター設定として用意してきたネタも回収していくのだからすごいなあと思う。やったことがないので、いまいち感覚が掴めないが。
3つのキャンペーンが収録されているが、その3つを通して一つのストーリーになっている。短編連作みたいなものを想像していたので、これはちょっと驚いた。そしてそれがよかった。ゲームというよりは、やはり物語をみんなで創っていくという感じで、キャラクターもそれぞれが3つのキャンペーンを通じて成長していくし、3つのキャンペーンを通して大きな話も動いていく。
舞台はカフカス地方。
ロシアの民間保安企業に所属する、二重スパイのアサルト、陰気なスナイパー、戦争中毒のコマンダー、トラウマを抱えた爆弾屋の4人が、隠蔽されたチェチェンの虐殺を暴いていく。
ロシアの民間保安企業、イギリスの親会社、ロシアの石油会社、チェチェンのテログループとその過激派、国際テロ支援ネットワーク、それを支援するアメリカ企業、グルジア政府、日本の企業と様々な組織の思惑が入り乱れていく、という展開もなかなか複雑で圧巻。
あっという間に読めた。

ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド (Role&Roll Books) (Role & RollBooks)

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