『リトル・バイ・リトル』

島本理生作品2本目読了
以前、群像でユヤタン乙一と対談していたの読んでから、「女性作家とか恋愛小説読んだことないし」と思って読み始めた島本作品。
今までこの手の小説をほとんど読んでないこともあって、自分が島本作品を好きなのかどうかもよくわからないけど、多分あと『ナラタージュ』も読みます。
でもおそらく嫌いではない。
文体がとても落ち着いていて、淡々としている。
主人公が冷静なのか、淡白なのか、描写が非常にシンプル。
こういう小説(恋愛小説だったり一人称小説だったり)ってもっと感情豊かに書かれているのか、と思い込んでいたので、この文体のシンプルさには最初驚いた。
そして、このシンプルな文体になれていると、突然不自然に長い文が出てきて、再び驚いた。
不自然に長い文、というと、たとえば舞城なんかが思いつくのだが、「若い」作家の特徴なのか。
どちらにしろ、文体というものをコントロールして書いているのだろうな、と思う。
描写の淡白さや、台詞の合間に挟まれる主人公の言葉に、自分と他人との独特の距離感があり、その距離感ゆえに物語中で劇的な何かは起こらないのだけど、でも確かに他人、世界とのコミュニケートはある。
感情を掻き立てられることはないけれど、静かに主人公の変化が感じられる。
文庫の巻末、原田宗典による解説で小説は「話すように書けばいい」というようなことが書かれているのだが、まさに「話すように書いて」いるからこその淡白さ、距離感なのだろう。

リトル・バイ・リトル

リトル・バイ・リトル