ポール・オースター『幽霊たち』

初オースター。
何となく面白い。「ニューヨーク三部作」の他の作品も読みたくなった。
この作品の魅力は、訳者あとがきと、2本収録されている解説に大体書いてある。
テーマの一つは、三浦雅士の解説のタイトルにもなっている「書くことの不安」
というか、クリスマス・テロルの元ネタだった*1
それからもう一つは、匿名性とでもいえばいいか。
訳者あとがきで、「オースターは、ベケット安部公房と比較されている」と書いてあった。
それから、「お前が俺で俺がお前で」的な話でもある。変装、分身によって自分が誰でもなくなっていく(匿名的)。ミッチャムの映画についての挿話がよい。


しかし、何というか小難しかったり壮大だったりするわけではない。
この文章と文体(現在形の多用)が、とてもあっさりとした、いい意味で淡泊な雰囲気を作っている。


セリフに全く鉤括弧が使われていないなあ。


幽霊たち (新潮文庫)

幽霊たち (新潮文庫)

*1:ユヤタンはほんとにパクリばっかりだ