アレステア・レナルズ『啓示空間』

とりあえず長い、長かったw
文庫で1000頁越えだから、京極並だよね、きっと
正直、もう少し圧縮できるんじゃないかとは思うんだけど、それはそれとして、十分面白かった
以前これを買うか『シンギュラリティ・スカイ』を買うか迷った末に後者を買って、いまいち面白くなくて、最初からこっち買っておけばよかったよ、厚さにひるまずに、と思ったw
長いのは、ドラマシリーズ的に複数のエピソードを繋ぎ合わせて一つの作品にしているからかなあと思ったり。あと、背景にレナルズ未来史があるし。
基本的にスペオペなんだけれど、オチのハードSFっぷりが素晴らしい
SFはやっぱりこういうのがなきゃね、と思う
見た目は中性子星だけど、実はブラックホールを利用した、時空を越えたスーパーコンピュータって一体なんだよ、それっていうw しかも、それを使ってシミュレーション化する、とか。最後の最後でイーガンかよっていうw
あ、そういえば、クーリはこの後結局どうなるんだろうなあ、復活したけど、元素が普通の人間と違うんだよなあ、きっと。


読んでいる最中にmixiで書いたメモ

太陽系の外を舞台にしたスペオペなんだけれど、タイムスケールの扱い方がうまい。
超光速とかワープ航法とかはない。一番早い宇宙船でも、近光速。しかも数が限られているので、星系ごとにわりと隔絶されてる。人体改造と冷凍睡眠はあるので、数世紀単位で生きてる人間はいる。ただし、人体改造しまくって近光速船であちこち行ってるウルトラ属と呼ばれている人類と、普通の人類とでは時間感覚が異なっているっぽい。
ウルトラ属含めて、基本的に地球人類しか出てこないのだけど、地球人類以外の知的生命体も存在している。そいつらの扱いが結構この話の肝かな。

ウルトラ属も面白いけど、データ化されたシミュレーションという奴らもいて、こいつらは基本的に人間扱いされないわけだが*1、あと物語において占める役割はあくまでも脇役だけど、最後のカルビンとダンの関係とか考えると面白い。
地球人類以外の知的生命体の話が肝、と書いたが、まさにその通りで
黎明期戦争とかインヒビターとかによって、他の知的生命体は滅ぼされてしまっている、と。なので、どこまで宇宙探査しても、地球人類以外出てこなくて、滅亡のあとばかり見つかる、と。
宇宙SFってあまり読んでないのでよく知らないけれど、超越的な知性体が出てくるというファーストコンタクトものが多いと思うのだけど、これは似ているようで違う。結局地球外知的生命体と接触しないし、超越的な知性体が現在存在しているのかどうかよく分からないし。そこらへんの抑制効いた感じが全体の雰囲気ともマッチしていて、なかなかよい。


ところで、タイトルも裏表紙に書いてあるあらすじも、実は釣りってのもなかなかw 『12モンキーズ』っぽいかもしれないw 脅威の科学技術、そこには隠されてなかったし、サンスティーラーも実はあんまり凄い奴じゃないしw でもそこをミスリーディングさせることで、話がドライブしていっている。読者だけじゃなくても、登場人物も騙されてるし。
ドライブというと、全体的に登場人物のモチベーションが分かりにくいところが難点かも。
ダン・シルベステとイリア・ボリョーワはまあ、科学者としての異常な知的好奇心ってことで納得するにしても、クーリとサジャキがもうひとつ分かりにくい。いや理屈としてはまあ分かるけどw
ページ数も長いし、スケールもでかい話だが、登場人物は少なめ。6人くらいか。
どいつも結構キャラが立っているが、人間味あるウルトラ属ってことで、一番魅力ある主人公タイプはボリョーワかなって感じがする。
サジャキはイラストとキャラにギャップがあって、面白いw ってか初登場時に、一人称で吹いたw 拙僧ってすごいな、英語だと何なんだろうな。
あと、ヘガジがもののみごとに空気w 最初はいい味出してたのなあ。何故あんなに雑魚いw


SFとしてのオチは、インヒビターやら中性子星やらを巡るハードSFなわけだが、その部分は分量的にはそれほど多くなくて、この作品をこれだけ分厚くさせているのは、話のメインは、シルベステ親子を巡る政治闘争みたいなものだから、なわけだが、それに関わるイエローストーン星の歴史が詳しく書かれていないこともあって、これだけ長いのにまだはっきりしない部分があって、気になる。続編が過去編らしいので、そっちに引っ張るのかなという感じ。
イエローストーン星のカズム・シティはなかなか魅力的なのだけど、『啓示空間』ではあんまり出てこないので、そういう意味でも続編『カズムシティ』が気になる。

啓示空間 (ハヤカワ文庫SF)

啓示空間 (ハヤカワ文庫SF)

*1:死んだ人間の記憶を利用するためのものっぽい