内田亮子『生命をつなぐ進化のふしぎ』

サブタイトルに、生物人類学への招待
書評 「生命をつなぐ進化のふしぎ」 - shorebird 進化心理学中心の書評などで紹介されいてたのを見て、読んでみた。
内容に関しては、そちらでしっかりとまとめられているので参考までに。
平易な語り口ながら、最新の専門的研究にまで引き込んでいく。
概説だったり理論だったりというわけではなくて、「食べる」とか「連れ合う」とかいったテーマごとに、様々なトピックが紹介されていく。
今までにこういうことが分かった、こういうことがまだ分かってないということが並べられていて、「へえ、なるほどー」という感じ。
生物人類学ということで、生物学の見地からの人類についての研究。
まあ、ネズミの話とかトカゲの話とか象やハイエナといった哺乳類の話とか、ヒト以外の話もあるけれど、基本的にはヒトと類人猿の話が多い。ヒトに関しては、現代のヒトについてもあれば、化石人類の話もある。欧米先進諸国の話もあれば、アフリカや南米、アジアの話もあれば、過去*1の話もある。


新書としては驚くほどに、知的に誠実*2
巻末の参考文献一覧がすごいし、本文での記述もそう。
で、生物人類学とか聞いて、氏か育ちか的な話を想像しているとしたら、もはやそういうレベルでは全然ないということに気付かされるはず。
普通に考えて、そんな単純な話があるわけがなく、そして実際に全然そんな単純な話ではない。
当たり前だけど、研究方法も色々ある。
色々な博物館で頭蓋骨を見て回ったり、多くの人たちから唾液を摂取したりとか。
野生動物の研究であっても、行動を観察するだけでなくて、糞とか毛とかを採取して、その中に含まれる成分を分析したりとか。


内容に関しては、ちょっと多岐にわたるので紹介できない。
上のリンク先に一部が紹介されているけど、それでも一部。
第1章 いのちの説明
第2章 食べる
何を食べるか(果実食とか肉食とか)、エネルギー消費の話とか
第3章 みんなと生きる
社会の話。他のサルの社会、ランクとかストレスとか。社会と脳のサイズとか、相手への信頼とか制裁とか
第4章 連れ合う
繁殖の話であり男女のパートナーの話。
第5章 育つ・育てる
性分化とか、思春期とか青春期とか、親の子育てへの投資とか
第6章 いのちの坂
老化の話
終章 いのちの終わりとつなげる知


内容と関係ないが、著者が美人。
ちくま新書は背表紙に著者の顔写真があるが、それとは別に帯にも著者の顔写真が載っている。背表紙の方はちょっと怖い表情をしているが、帯の方は笑顔。
ハーバードのPh.Dとって、早稲田の教授ということで、まさに才色兼備という感じ。

生命(いのち)をつなぐ進化のふしぎ―生物人類学への招待 (ちくま新書)

生命(いのち)をつなぐ進化のふしぎ―生物人類学への招待 (ちくま新書)

*1:江戸時代だったり、狩猟採集生活をしていた頃だったり

*2:っていう言い方でいいのかよくわからんけど