『幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク

実は、クラーク読むの初。
大御所とか古典SFは、ほとんど読んでいない……。
50年代に書かれているものだから、やっぱり色々と変だなあと思うところはあるけれど、それは仕方ない。
物語として面白いのは、青年が密航を企てているところ。
しかし、SFとして面白いのは、最後のカレレンの演説。
集合として一つの知性となる、そしてそれはさらに巨大に、巨大になっていく。なんてプログレ
こういう方向での未来、進化というのは、もう今の時代では書けないだろうけど。イーガンが面白い、とは全く別の意味で、面白い。
このカレレンという地球外知的生命体とのコミュニケーション(?)は、ストーリーを面白くしている。この作品をSF的に支えているのは人類の進化だけど、ストーリー的に支えてるのは、こっちの方でしょ。人類、カレレン達、上主心の非対称性がもたらす丁々発止というか何というか。
それから、ちょっと中核からはずれるアイデアだけど、記憶の因果的な順序が逆転することもある、というアイデアはよかった。記憶の形成において、時間的順序が逆かもしれない、というのは、今の脳科学か心理学あたりの話を見ていてもありえる話。つまり、昔作られた記憶を今思い出しているのではなくて、昔の記憶というのは今作られているということ。因果則をどうにかしようとすると、かつてはオカルトとか人智学あたりを呼んでこないといけなかっただろうけど、今ならむしろ記憶に関する科学を呼んでくると面白いのかもしれない。

地球幼年期の終わり (創元推理文庫)

地球幼年期の終わり (創元推理文庫)