『日経サイエンス 2025年8月号』

2025年振り返り - logical cypher scape2で「日経サイエンスは(...)8月号が気になっていたんだけど読み損ねている。」と書いたが、それの回収

プラナリアから脳の進化が見えてくる 出村政彬 協力:阿形清和/梅園良彦

プラナリアの脳の発生についての研究
普通、脳の発生は生涯に一度だけだが、プラナリアは身体が切断されると、トカゲの尻尾よろしく身体が復活し、その際、脳すらも再生する。なので、脳の発生を調べやすい。
プラナリア無脊椎動物でヒトは脊椎動物。神経系は相似器官だと思われてきたが、1990年代にショウジョウバエとマウスとで同じ遺伝子が発生に関わっていることがわかり、遺伝子レベルでは相同ということがわかってきた。
阿形らは、プラナリアの脳が発生するときに働く遺伝子をみつける
この遺伝子をノックアウトしたら、脳が発生しなくなる、かと思いきや、脳は普通に発生した。だけでなく、ほかの場所にも眼ができた。
この遺伝子は、脳が発生する場所を決める遺伝子で、発生に関わる物質をせき止めるための役割を果たしていた。(nou-darake(脳だらけ)遺伝子と命名
そして、この遺伝子が脊椎動物でも働くことを突き止めた
マウスのを逆にプラナリアにもってきたりする実験とか

知能の在り処  R. ジェイコブセン

レヴィンという生物学者プラナリアの研究
脳以外でも認知は行われていると考え、「原初的認知」という分野の研究を行っている。
普通の細胞にもイオンチャンネルはあるわけで、情報処理は行われており、神経細胞との差は程度の差だと考える。
違う人の研究で、アメフラシに学習させた後、その脳のRNAを別の個体に注入すると「記憶」が移植されたような現象が起きたという実験がある
レヴィンは、プラナリアに学習させた後、二つに切断。尾部の方から脳が再生したあと、尾部の方も学習していたことができたという実験を行った。脳以外の場所に記憶が保持されていたのではないか、と。
レヴィンは、局所的な電気活動がそれをになっていると考えている。
ツノガエルの細胞から作られたゼノボットというものがある。
細胞の集合体で、水中を泳いだりすることができる。カエルの細胞をもとにしているがカエルではない存在。しかし、(入力に対して適切な応答をするという意味で)知能らしきものがある
進化の過程で知能は生まれてきたと考えられるが、ゼノボットは生物進化の中で生まれてきた存在ではない。
この記事は最後に、監修者である阿形によるコラムがつけられている。
というのもレヴィンの主張は、まだ一部の研究者が唱えているだけで、研究者の世界でのコンセンサスが得られたものではないからだ。
レヴィンによるプラナリアを切断して脳以外の場所が「記憶」していたとされる実験だが、これは別の解釈も可能だという指摘がある(試行回数が減ったから記憶していたという解釈だが、別にそれは学習内容を記憶していたわけではないのでないか、とか)
レヴィンの実験以外にも、脳以外の場所に記憶されていたとされる実験はあるが、そうした実験もほかのメカニズムで説明可能だったりする、とのこと。

生成AIはロボットの頭脳になるか  D. ベレビー

ChatGPTの登場で、これはロボットに使えるのではという機運が生じた、と。
レヴァタス社では、工場巡回に使っているボストン・ダイナミクス社のロボットとChatGPTを組み合わせた。従業員がロボットへの指示をするのに使える。ただ、これは工場という限定された環境だから。
問題は、ロボット側にある。
LLMがどんなに賢かったとしても、ロボット側の方にそれを実行できる能力がなかったりする。
南カリフォルニア大のトマソンらは、ロボットが実行できる範囲にしぼるプロンプトを作ったり、あるいは、Pythonで出力するプロンプトを作ったりした。
Googleの研究グループは、ロボットが実行できる行動を予めリストアップしておいて、LLMには、必ずそのリストからロボットへの指示を出力させるようにした
プリンストン大学では、見たことない道具を使うことができるか、というメタ学習実験。「汎化」が可能なことがわかった。例えば、バールを見たことないロボットにバールを持たせる。長い方を持てばいい、ということを、ほかの類似の道具から学習している
LLMとロボットを結びつけることの危険性についての指摘もある
反AI論者として有名なゲアリー・マーカスは、人間からの指示を誤解することの危険性や、仮に理解できた場合でも危険な動作をする可能性を指摘している。
(ゲアリー・マーカスは「筋金入りの反コネクショニスト」と次田瞬『意味がわかるAI入門 ――自然言語処理をめぐる哲学の挑戦』 - logical cypher scape2で紹介されていたな)
トマソンらは、ハルシネーション対策として、LLMと「古き良きAI」を組み合わせる。LLMが突拍子もないハルシネーションを出しても、古き良きAIがそれを弾く仕組み
LLMは偏見も学習してしまうことがある。
ロボットによく利用されている言語モデルを使って、やはり人種的偏見が出力される実験結果がある
ただ、LLMとロボットを組み合わせることの問題はもっとその手前にある、と。ボトルネックは、例えばものをちゃんと掴むとかもっと簡単なことにあり、それは非言語的なものだ、と。

最後にブラウン大のテレックスの言葉として、LLMにはインターネットのよいところのすべてと、インターネットの悪いところのすべてがある、という内容の言葉が引用されていた。
最初読んだとき、何うまいこと言ってんの、と思ったのだが、その後、悪いところは結構詰まってそうだけど、よいところも一部は入っているがすべては入ってなくない、と思ってしまった。AIに対する偏見かもしれないけど。

ヘルス・トピックス 座りっぱなしにご用心

座ることの健康への悪影響は以前からよく言われているが、自分も座っている時間が長いので気になっている。
運動をすることで、座ることの害はある程度打ち消せるらしい。座る時間が長い人は、普通に推奨される運動量よりもっと多い運動量が必要になるよ、ということになるが。
最近、座ることを喫煙に喩えることすらあるらしいのだが、さすがにそれは大げさ、とも。
あと、座る時間が長くなる場合、時々動くことが大事。立ち上がるだけでもあり。数分歩くなら1時間に1回とか。
立ったまま作業する、というのもよく聞くけど、あれはあれで別の健康リスクがあるらしい。
ずっと止まったまま、というのがよくないので、ちょっとでもいいから時々動くのがいい、と。