- 詳報:ノーベル賞 日本人ダブル受賞
- 特集:縄文以前の人びと
- 特集:量子情報創世記 実験家たちの挑戦 量子コンピューターの実現目指す 古田彩
- ジュノーが明かした 木星系の姿 R. G. アンドルーズ
- サイエンス考古学
- ADVANCES
- From nature ダイジェスト 撤回された「ヒ素生命」論文
- BOOK REVIEW
詳報:ノーベル賞 日本人ダブル受賞
制御性T 細胞の輪郭を突き止めた 遠藤智之/出村政彬
T細胞を成熟させる胸腺を切除すると免疫が暴走し自己免疫疾患が起きる。そのメカニズムを調べようとした。
当初、制御性T細胞の候補を発見した際、反応は冷たかった。というのも、サプレッサーT細胞という仮説が過去にあり、それが間違っていたことが分かったばかりの頃だった
とにかく、どのような特徴があるかを突き止めていった
坂口の研究室の学生が、転写因子の研究をしていて、別の大学で発見された転写因子(Foxp3遺伝子)に注目する。2人は、これが制御性T細胞を特徴付ける転写因子だと気付く。
この時ばかりは、坂口は発表を急いだ。転写因子を発見した研究者も免疫の研究者であり、すぐに制御性T細胞との関係に気付くはずだから。
この競争を制したのは、坂口だちだった。
2010年代からは、医療応用にむけての研究競争が始まっている、と。
特集:縄文以前の人びと
縄文人の祖先を探る 3万年より前にいたゴースト集団 出村政彬
縄文人の祖先集団が一体どこから来たのか、という話と、縄文人の祖先集団より前に日本列島にいた集団がどうもいたらしい、という話
協力でクレジットのあがっている渡部はゲノム人類学、出穂は考古学
まず、渡部によるゲノムの研究について
縄文人は縄文時代、大陸との間に遺伝的交流がなかった。縄文人集団の中だけで広まった遺伝的変異はなにか。
中性脂肪の代謝や肥満度を高める遺伝子が見つかり、これは飢餓への適応だと考えられるが、それはいつでも起こりうることで、何故縄文人集団が独立したあとに増えたのかわからない。
しかし、これに加えて「非ふるえ熱産生」という性質の遺伝子があることがわかった。これらの特徴は寒冷地への適応だと考えられる。さらにイヌイットと同じような食習慣に適応した変異も見られた。
こうした変異は、最終氷期最盛期(2万6500年前〜1万9000年前)に生じたと推定される
また、合祖理論という方法で分岐年代を推測した場合も、やはり同じ頃の値がでてくる。
続いて、出穂による考古学的な研究について
日本列島には、3万8000年前から人類が住んでいた痕跡がある。
日本列島の遺跡において、3万年前を境に、発見される石器に変化が見られる。
3万年前以降の石器の作り方から、北方のステップやオープン・タイガから持ち込まれたと出穂は考えており、渡部のゲノム研究が示唆することと合致。
一方、3万年よりも前の石器は、南方の森林環境に由来すると考えられる。
日本列島には、縄文人集団がくる以前に別のゴースト集団がいたと推測される。
出穂は、モンゴルでも、4万年前のゴースト集団を調べている。
見えない島を目指した航海を追う 遠藤智之
- 協力:海部陽介(東京大学総合研究博物館)張育綾(海洋研究開発機構)/郭新宇(愛媛大学)
台湾から与那国島へ、当時あったと思われる技術のみで航海する実験が行われた。
加えて、当時の海でも同じことができたのか、シミュレーション研究も行われた。
台湾と琉球諸島の間には黒潮があって、それを越える必要がある。もともと海部は、漂流仮説というのを唱えていたこともあったが、調べてみると、単に流されるだけだと琉球諸島には到達できない。
また、記事タイトルにもある通り、琉球諸島の島々の間、あるいは台湾と与那国島との間は距離が結構あって、直接、視認できない。
直接見えない対象に対して、かなり計画的に航海しないといけない
特集:量子情報創世記 実験家たちの挑戦 量子コンピューターの実現目指す 古田彩
日経サイエンス 2025年11月号 - logical cypher scape2の「情報を量子で語れ 理論家たちの思考をたどる 古田 彩」に続く後編・実験家編
量子コンピューターには、色々な方式があるとは何となく聞き覚えがあったけど、よく分かっていなくて、整理された。
- 量子暗号
ベネットとブラッサールが1984年に考えた量子暗号は、BB84と呼ばれている。92年にベネットらが自身で検証実験を行っている。
エカートが考案した量子暗号はE91と呼ばれ、ベルの不等式の破れを利用するという点で物理学者の注目を集めて、実験で検証された。
ジザンは、レマン湖のケーブルを用いてBB94を実証し、以降、BB94の方が実用的ということで主に用いられるようになった。
97年 ツァイリンガーの実験
98年 古澤とキンブルの実験
量子コンピュータは理論的な研究は進むもなかなか実験が行われなかったが、1994年、こうした状況を打破したいエカートの講演により、実験家からも注目されるようになる。
量子コンピュータは、量子もつれを実現できるものであれば、何でも素子とすることができるので、色々な方式が考えられる。
イオントラップ方式
まず、イオントラップについての研究者が、量子コンピュータを作れることに気付く。
ワインランドとモンローなど
イオントラップは、クリーンな
NMR(核磁気共鳴)
チャンは、核スピンを量子ビットに用いる量子コンピュータを開発。チャンは、山本のもとで量子コンピュータについて研究したいと
光回路
同時期に竹内は、光を用いた量子コンピュータを開発
イオントラップ、NMR、光回路と様々な方式が誕生し、量子コンピュータは実現可能であることが示された。
だが、応用に向けては、固体素子での実現が望まれた。
固体の方が製造しやすいからであるが、量子コンピュータにとって固体はノイズが多すぎという問題があった。
超伝導
80年代初め レゲットは、超伝導状態で重ね合わせが、ということを理論的に示していた。
1985年 クラーク、デヴォレ、マルティニスは、レゲットの理論をもとに実験を行い、マクロなトンネル効果を発見した。これが今年のノーベル物理学賞へと繋がった。
1999年 同じくレゲットの理論に注目していた中村・蔡は、超伝導を用いた量子ビットの実現に成功。
2014年 マルティニスによって5量子ビットが実現し、誤り耐性量子コンピュータへの道を開いた。
イオン・トラップ方式と光回路方式もそれぞれベンチャー企業等で開発が進んでいる。
NMR方式は挫折したが、チャンは他の方式で量子コンピュータの研究開発を続けている。
- 量子暗号
2007年 ジザンは、ジュネーブでの電子投票に量子暗号を用いた。
2016年 中国で、潘・ツァイリンガーの量子暗号衛星通信
ジュノーが明かした 木星系の姿 R. G. アンドルーズ
木星探査機のジュノーの軌跡・これまで発見してきたことについて
ここで紹介されている内容について、単発で見た覚えのある話はいくつかあったが、ジュノーの業績としてまとめった形で把握していなかった(*)し、また、科学的にどういうインパクトのある発見だったのかも分かっていなかったので、面白かった。
(*)自分のはてブを見返してみたら、以下の記事があった。個々の内容に見覚えがあったのは、これがあったからか、と思った。
木星探査機「ジュノー」は科学者が持っていた木星に対する認識を大きく塗り替えてきた - GIGAZINE
それにしても内容が似すぎだなと思ってよく見たら、このgigazineの記事、『サイエンティフィック・アメリカン』の記事の要約だった(『日経サイエンス』は『サイエンティフィック・アメリカン』の記事を翻訳して掲載している)。
ジュノーについては、すでに想定されていた寿命を超えている。木星圏は放射線が強く、その放射線に電子部品が耐えられるか、という課題があった。極軌道を周回して放射線からの影響を減らすことと、電子部品をチタンで覆うことという対策をして、現在まで無事に活動してきた。
この記事では、トランプ政権下におけるNASAの予算カットの話への言及はなかったが、ジュノーはミッション延長が認められなかった。最終的にジュノーは木星へ衝突させて役目を終えるはずだが、現在、状況が分からなくなっているのではなかったか。
NASA次年度予算案の詳細が明らかに–職員は3割減、40近い科学プログラムを中止 - UchuBiz
木星探査機「ジュノー」、ミッション終了予定も確認不能–政府機関閉鎖でNASA動けず - UchuBiz
- 極地の嵐の謎
ジュノーというと、木星の極地に複数の嵐の渦がある写真が一般的にも有名でないかと思う。
ジュノーの中でも初期の方の発見ではないかと思うが、この嵐のメカニズム、いまだによく分かっていないらしい。
木星探査機「ジュノー」の初期成果:両極の嵐、不均一な磁場 - アストロアーツ
- 雷の謎
木星でも雷が発生していることが分かったが、雷が起きるには水が必要なはずで、驚かれた。アンモニアが関わっていることが分かっている。
木星の大気にはアンモニアが含まれているのだが、分布が一様ではなく、一部にアンモニア欠乏領域がある。これも当初は謎だったが、現在は、説明がつけられている。
- 核の謎
従来、木星には、岩石型惑星同様の金属コアがあるか、もしくはコアがないか、のいずれかだと考えられていたが、ジュノーの観測により、そのいずれでもないことが分かった。
惑星形成理論で説明ができない謎
また、木星には重元素があることも分かったが、コアではなく上層に存在している。重いものは普通、中心に沈んでいくはずなのに、そうなっておらず、これも謎、と
高温・高圧の世界だから起きていることで、実験室で再現して調べたりするのが難しい、とも
- イオの謎
イオには火山活動がある。それは潮汐加熱によって、地下にマグマの海があると考えられてきた。しかし、そうではなかった。これも何故そうなのかはまだわかっていない。
自分のはてブ検索して出てきたジュノー関連の記事
NASAの木星探査機「ジュノー」、太陽から最も遠く離れた太陽電池駆動の宇宙機に
祝!探査機ジュノーが木星周回軌道に、偉業を解説 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
定説覆す木星の研究成果を一挙発表、写真8点 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
米探査機、木星の3衛星に20年ぶり大接近へ 新発見の期待高まる | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
NASAの探査機ジュノーが撮影した木星のクローズアップ、異なる色調の画像を公開
天文学:木星の稲妻と地球の稲妻の類似点 | Nature Communications | Nature Portfolio
NASA木星探査機「ジュノー」が衛星ガニメデの表面で塩と有機物を検出
最低でも20km 木星の衛星「エウロパ」表面の氷の厚さを衝突地形から推定
木星の衛星イオの火山活動、太陽系の初期から続くとついに判明 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
木星の手前を横切っていく物体の正体は? NASA探査機ジュノーが撮影
惑星科学:木星の衛星イオに浅いマグマの海はない | Nature | Nature Portfolio
サイエンス考古学
ハイムリック法
のどにモノが詰まったときの奴、50年前に広められたのか
疲れ切った宇宙/電話外交
シベリアへの新ルート/ノミの訓練
ADVANCES
- マイクで変わるあなたの評価
Zoomなどのオンライン会議で、音質によって評価が変わってしまうという研究結果
「人は見た目が9割」じゃないけど、話す内容よりも外見などの情報で人のことを評価してしまうことはよく知られており、それの音質版と考えれば、記事内で言われている通り、驚くような結果ではないけれど、調べてみたら本当にそうだったのか、という話
いいマイクをちゃんと使うこと、自分の声が相手にどのように聞こえているかちゃんと確認すること
- 驚きの動物庭師
動物地形学を提唱
動物が地形などに及ぼす影響
今まで見過ごされてきた。動物が地面を掘り起こしたりなんだりする量は、実は思われていたよりもずっと多い、ということを推計した研究
- 皮膚細胞も電気信号で情報伝達
かつては、電気信号を使うのは、神経細胞だけだと思われていた。ある時期から、心筋細胞も電気信号を用いていることが分かってきた
そして今回、皮膚細胞も電気信号を発していることが分かった。
神経細胞と同じくイオンチャンネルを使う。神経細胞の電気信号ほど速くはないが、化学伝達と比較すれば遙かに速い。
宛先はまだ分かっていない。他の皮膚細胞が受信するのか、あるいは神経細胞が受診するのか
情報伝達の経路が分かると、それは医療への応用ができるので、重要だ、と。
From nature ダイジェスト 撤回された「ヒ素生命」論文
BOOK REVIEW
- 『恐竜研究の未来』 書評子:平沢達矢
恐竜についての本は無数にあるが、この本は、まだ分かっていないことについて着目している点が特徴だ、と。
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