ジェイムズ・カー=リンゼイ、ミクラス・ファブリー『分離独立と国家創設』(小林綾子・訳)

タイトルが面白そうなので気になっていた奴で、タイトルに「国家創設」とある通り、新しく国家ができるとはどういうことなのかについて、様々な事例を交えて解説している入門書
国家が作られる方法はいくつかあって、「分離独立」*1はそのうちの1つだが、現代においてはこれが主流なので、分離独立とは何か、というのもテーマになっている。
一問一答の形式で書かれており、国際政治についての知識に疎くても読みやすい内容になっている。
(節が非常に細かく分かれていて、海外の本にしては珍しいなと思ったのだけど*2、一問一答形式になっているからだった)
ある地域で何らかの独立運動があって、それがかなって独立する・あるいは失敗する、というの、何となくそういうもんだよなあって思っていたけど、考えてみると、どうすると独立できるのかとか、独立する場合どういうことをすればいいのかとか、あんまり分かっていなかった。そういうところにもちゃんと原理原則がある。
具体例が多いので、「そういえばそんなニュースあったなあ」と思いながら読めるものもあれば「え、そんなことがあったんだ」というトリビア的な豆知識として読めるものもあって、読んでいて楽しい。


「分離独立」は国家が作られる方法の1つである、と書いたが、他にも「脱植民地化」というのがある(もっというと、解体とか併合とかもある)。
20世紀は、新しい国がたくさんできているけれど、その多くは「脱植民地化」によって創られている。
ただ、この「脱植民地化」の流れはもう一段落していて、まだ、その可能性のある地域は残っているが、脱植民地化によって独立する見込みは低いとされている。
で、この「分離独立」ってのが重要になってくる。
国家はどうすると創られるのか、ということを考える上で、まず「国家性」という概念が出てくる。簡単に言うと領土・国民・政府の3要素のこと。
法学的には、国家性が揃えば国家になる、というのが主流の見解らしいのだが、政治学的には、国家性が揃うだけでは国家とはならず、加えて、他の国家からの「承認」が必要になる、と考えられている。
実際、国家として承認されている/されていない、というのはニュースでも聞く話である。
そして、本書の筆者はまさにこの「承認」とかを研究しているらしいのだけど、訳者解説によれば、特に注目すべき点というのは、近年、国家性を備えているけれど承認は得られていない「事実上の国家」が増えいていて、本書が特に論じているのは、この事実上の国家って一体何だ、というところらしい。

序章 「すべての国家は平等か?」
第一章 国際政治における国家性と分離独立
第二章 旧ルール——分離独立と国家創設、一七七六─一九四五年
第三章 現代的ルール——自決と脱植民地化、一九四五─一九九〇年
第四章 ルール変更?——現代の分離独立、一九九〇年以降
第五章 独立と国家性たらしめる機構
第六章 国際社会に参加する
第七章 現代的課題と将来的方向性
訳者解説
付録A:一九四五年以降の国連加盟国数の増加
付録B:国連総会決議第一五一四(XV)号、一九六〇年
お薦め文献

序章 「すべての国家は平等か?」

第一章 国際政治における国家性と分離独立

国家の条件というと、領土、国民、政府が思い浮かぶけど、これは1933年のモンテヴィデオ条約によって定められたものらしい*3
しかし、じゃあそれぞれ一体何なのよ、と細かく見ていくと、曖昧なところがある
「確定された領域」というか、国境が未定のまま成立した国家というのは多々ある
また、これに関連して飛び地と包領というのが紹介されている。完全に別の国に囲まれてしまっている飛び地を包領というらしいが、かつて、バングラデシュ内のインド領内のバングラディッシュ領内のインド領(ダハラ・カグラバリ)なるものがあったらしい。
政府とか「実効支配」って何だ、とか
どこかの領域が分離しようとすると、親国家や他の国家は反対することが多いけど、それは何故かとか、当たり前のことのようにも思えるけど、そういうところから解説してあって読みやすい。
また、分離独立には、親国家が合意したものと一方的なものがあって、前者は国際的にもすぐ認められやすいけど、後者はなかなか認められないよね、という、それまた当たり前だなあという話もある。1945年以降だと、バングラデシュだけ一方的独立宣言で独立が認められているのだとか
世界に国はいくつあるのか
国連加盟国が193国
加えて、
名目上は国家で、ニュージーランド自由連合の関係にある2領域(ニウエとクック諸島
国連加盟国ではないが、広い意味では国家とみなされる4領域(バチカンパレスチナコソボ、台湾)
国家性を有するが国家としての承認をほとんど受けていない諸領域(ソマリランドナゴルノ・カラバフ*4、トランスニストリア、アブハジア南オセチア北キプロス
がある、と。
そして、分離派運動はいくつあるのか
これは数え方によって相当異なる。著名な分離派運動は30~60ある、としている。
近年、ジェノサイドや民族浄化に対して「救済的分離」という考え方が浮上してきているが、当然、議論を呼んでおり、あまり支持はえられていない。
「領土回復主義」は、自分たちの領域を回復するという政策で、かつては国家創設の強い根拠で、ギリシャ、ドイツ、イタリアはこの賜物。しかし、1945年以降はすたれた。イラククウェート侵攻、ロシアのクリミア侵攻は、この領土回復主義によるもの。

  • 独立を失った領域は、独立を再主張する権利を有するか?

占領等、非自発的に失った場合は、それを取り戻す権利は通常尊重される。
例として、ソ連から独立したバルト三国
逆に、自発的に統合した場合は、分離する権利は失ったと解されている。
例として、テキサスがある。
ソマリランドスコットランド南イエメンは、かつて独立国家だったが、自発的に統合している。
UAEやマレーシアでは、一部の領域が、分離する権利があるとして、中央政府に対して離脱の脅しをかけたことがあるが、そうした権利は認められていない。


分離の権利、というのが法学上は議論されているけれど、そういう権利を実際に認めると、非常に細かく分裂していくことが予想され、現実的ではない。

  • 国家は領域を切り離すことができるか?

1945年以降では、マレーシアがシンガポールを切り離した事例があるが、このたった1例しか知られていない。
このため、本書では、実際にやろうとした場合、どうなるのか、よくわからない。法的・政治的に色々問題がありそう、と述べられている。


法学者は、国家性を満たせば国家は存在することになるという「宣言学派」と、国家性要件だけでは不十分でほかの国家からの承認が必要になるという「構成学派」に分かれていて、宣言学派が勝利してきたらしい
しかし、本書では、それはあくまでも学術的論争で現実的ではない、と一蹴する
現実世界では、承認は不可欠


「事実上の国家」は、国家性を有しているが承認を受けれていない国家
「失敗国家」は、承認を受けているが、実効支配ができなくなっているなどしている国家
「ミクロ国家」は、バチカン市国など、非常に小さい国のこと
「ミクロ・ネーション」は、シーランド公国など、国家性有してないけど勝手に名乗っている国

第二章 旧ルール——分離独立と国家創設、一七七六─一九四五年

近代的国家のスタートをウェストファリアにおくが、本章で重要視しているのは、アメリカ合衆国の独立である。
これが国家創設にあたって、ほかの国家からの承認が重要であるということを確立したという
承認による国家の独立自体は、アメリカ合衆国以前にもあったが、その際は、承認の慣習は成立しなかった、と
アメリカ合衆国は、独立の際、はっきりと他国からの承認を求めた、と


これに続いて独立が進んだのが、ラテンアメリカ諸国
ラテンアメリカ諸国の独立で重要なのは「ウティ・ポシデティス・ユリス」原則の確立
これは、基本的に独立前の行政的な境界線が独立後の国境になる、という考え
植民地だったところが独立する際、植民地時代の境界線がそのまま国境になるのは、このため。
この考えは、本書でも何度も出てくる。


ウィルソンによって「自決の原則」が提案されるが、これはしかし、実践上の困難を色々と抱えていて、画期的ではあったが、そのまま実現されることはなかった。
国家性の条件としてあげられる、モンテヴィデオ条約だが、これは実はグローバルな条約ではなくアメリカ諸国のローカルなもの。ローズヴェルトが、ラテンアメリカに対する反介入主義的な善隣外交を支えるために結んだ。


国家の領土保全の原則は、国際連盟規約とパリ不戦協定を起源としている
力の行使によって領域を獲得してはならないというやつで、満洲はこのために承認されなかった。

第三章 現代的ルール——自決と脱植民地化、一九四五─一九九〇年

脱植民地化は、ウィルソンの自決の原則の問題点を解決
(国連が、自決権あるのはこの領域だと定めた)
また、必ずしも実効的な政府がなくとも、名目的な政府があれば承認される、というように基準を変えた。
国境はウティ・ポシデティス原則のもとで決められたが、植民地の境界と民族の境界線とは一致してないという問題があった。
自決は、しかし一方的分離を認めないという形で、領土保全の原則と折り合いをつけられた
一方的分離は、19世紀から20世紀初頭までは認められていたが、脱植民地化の時代以降、受け入れられなくなった。分離のドミノによる不安定化を国際社会が恐れたため。
これが明確になったのは、1960年、カタンガコンゴ民主共和国からの独立と、1967年、ビアフラ共和国のナイジェリアからの独立で、いずれも国際社会は承認せず、前者では国連軍が、後者では内戦がおき各国がナイジェリアに支援を行った。
こうして、一方的分離は認められないことが明らかになったが、1971年、東パキスタンバングラデシュとして一方的に独立を宣言したことについては、結果的に承認された。
しかしこれは、最終的にパキスタンがこの独立を認めたことが大きく、例外的なケースとされる。


基本的に、独立運動は内政問題とされ、国連が出てくることは少ない。
国連が反応した稀な事例として、北キプロスローデシアの一方的独立がある。
北キプロスの場合、国連の平和維持プロセスが進行中に起きたため、国連安保理による非難の対象となった。
(国家が他の国家を承認することは、国家の主権の1つであって、国連がどうこういう問題ではないが、北キプロスは例外的に安保理からこの国家は承認しないようにという要請が出ているとか)
ローデシアは、自決権による脱植民地化というより、植民地経営をしていた白人たちがその特権を維持するための独立宣言であったため、国際的非難を受けた。1980年、ローデシアジンバブエとなる。
脱植民地化の過程で、独立できず、隣国からの妨害を受けた事例として、東ティモール西サハラがある。
1975年、東ティモールは独立を宣言したが、直後にインドネシアが侵攻し併合した。東ティモールは2002年にようやく独立をかちとる
一方、西サハラは国連により自決権を有する領域とされていたが、モロッコモーリタニアが主権を主張。現在、西サハラは、40以上の国連加盟国が承認し、アフリカ連合にも加盟しているが、国連加盟国にはなっていない。


東ティモール独立のニュースは覚えている。西サハラは世界地図見たとき、国境が点線で書いてあるなあとは思っていたけれど、あまりよく知らなかった。
あと、他に全然知らなかった奴として、エジプトとシリアが、一時期アラブ連合共和国という連合国家だったということ。

第四章 ルール変更?——現代の分離独立、一九九〇年以降

バルト三国の独立。これらは新国家ではない。ソ連に占領されていた国の復活。
ウクライナベラルーシ。これらも実はソ連崩壊前から国連加盟国であった。
ロシア連邦ソ連の地位を引き継ぐことで合意し、ソ連を構成するほかの国々も独立し、複数の新国家が一気に出来た。これらは国連加盟国にもなった。
一方、旧ソ連にあった領域で「事実上の国家」となった領域に、沿ドニエストル共和国(トランスニストリア)、南オセチアアブハジアナゴルノ・カラバフがある(ドネツクとルガンスクについても触れられている)。
ウティ・ポシデティス・ユリスの適用により、ソ連のもっとも高次な領域のみが国際的に承認されていたため、これらの4つの領域は国家として承認されてない=事実上の国家。

連邦の解体
セルビア人は、連邦を構成していた6つの共和国ではなく民族に自決権があると主張したが、これは国際的には認められなかった。
解体後のユーゴスラビア連邦は国連に新たに加盟する必要があった。
セルビアモンテネグロは、ユーゴスラビア連邦という一つの国として独立したので、ユーゴスラビアの解体によって5つの国ができたことになる。
が、このセルビアモンテネグロも90年代に紛争状態となり、2006年にモンテネグロは独立する。モンテネグロは、もともとのユーゴスラビア連邦を構成する共和国の一つだったので承認された。
一方、コソボセルビア自治州ではあったが、かつてのユーゴスラビア連邦の中で共和国として認められたことはなかった。このためコソボの独立は、一方的分離の例とみなされて、独立が承認されない。ロシアや中国などが独立を認めず、西側諸国は、人権侵害があった等の理由で独立を認めている。国連加盟国の中でもコソボを承認するかは完全に二分されている(なお、セルビアが各国に交渉をすすめて、コソボの承認を取り下げた国もある)。

共産党一党独裁体制の崩壊後、世論調査ではチェコスロバキアへの解体は望まれていなかった。しかし、選挙の結果、連邦制を望むチェコ側と連合制を望むスロバキアとで割れ、新たな国家体制を創るのが難しくなった。為政者たちは、混乱を避けるために住民投票は行わずに、連邦体制を終了させた。

  • ドイツやイエメンの合併

冷戦終了後、解体だけでなく合併も起きている。
ドイツの場合、もともと同じ国だったのが分裂していたのがまたもとに戻っただけ、ともいえる
ところで、この本は巻末付録に、国連に加盟した国の年表がついているのだが、東西ドイツ両国の国連加盟って1973年と結構遅くて驚いていたのだが、これは西ドイツが東ドイツを承認しないとかそういうのがあったからか、と納得した。
イエメンの場合、北イエメンは1918年にオスマン帝国から独立した国で、南イエメンは1967年にイギリスから独立した国で、ドイツとはかなり事情が違う。両国は1990年に合併した。しかし、南北の関係はその後悪化し、南部の独立運動が起きている。

ソマリランドはかつて独立国だったが、ソマリアと自発的に統合した。しかし、その後状況は悪化し、1991年に一方的に独立した。
ソマリランドの事例は、国際的に同情を集めているが、しかし、一方的分離であるために承認を得られるに至っていない。

ずっと紛争状態だったが、最終的には住民投票を行い、親国家との合意もあって独立が承認された。
とはいえ、南スーダンはその後も紛争が続いており、失敗国家とみなされている

  • 軍事力による分離運動の抑え込み

ロシアによるチェチェン支配、クロアチアによるクライナ・セルビア人共和国への侵攻、スリランカによるタミルの討伐、アゼルバイジャンによるナゴルノ・カラバフへの軍事行動

  • 平和裏に解決した事例

アチェインドネシアの合意

親政府が、分離独立のための合法的なプロセスに合意した珍しいケース
しかし、住民投票の結果、独立に至らなかった
また、スコットランドは再度の投票を求めているが、今度はイギリス政府側は認めていない。
追随する国はなく、一般的な影響力は低いとされる

住民投票では、独立が支持されたが、それぞれの領域の指導者が、親政府の合意なく進めたため、承認されなかった
これらの地域は、いっときは次に独立する国の候補リストの上位であったが、焦って事を進めようとして逆に事態が後退してしまったケース

  • 台湾

台湾は分離独立の事例ではない。国家承認の問題ではなく政府承認の問題、と整理している。

  • 次に国連加盟国となると思われるのはどの国か?

まず、南太平洋地域の、ブーゲンビル(パプアニューギニア)、ニューカレドニア(フランス領)、チューク(ミクロネシア連邦
それから、ソマリランドパレスチナコソボがあげられている。
また、ケベックスコットランドで再び住民投票が行われる可能性
可能性は低いが考えられる領域として、西サハラグリーンランド
ほかに、ナイジェリアやエチオピアが解体する可能性もある、と。


この章、まさに現代史って感じで、出てくる国名・領域名はおおよそ見覚えがあるものの、その経緯についてはちゃんと分かってないところもあって、その点で勉強になるし、何より、その背景にある原理原則があるというのは知らなかったので、その点で整理されているのが面白かった。
というか、ウティ・ポシデティス・ユリス原則がかなり強力というか、色々なことが説明できるな、と。あと、一方的分離と見なされるか否か、ということが、独立の成否に大きく影響するのだな、と。
ところで、「おおよそ見覚えがある」と上述したが、本書で繰り返し出てくる地域のうち、ソマリランドって全然知らなかった。


第五章 独立と国家性たらしめる機構

国家はどのように創設されるのか。
国家創設には、原始取得、漸進的権限移譲、分離、脱植民地化、解体、併合がある。
自由連合といって、基本的に国として独立しているけれど、外交とか防衛とかは他の国と共有しているものがある。アメリカとの自由連合となっている太平洋の島嶼国家だったり、クック諸島やニウエとニュージーランドだったり。


分離独立するにあたって住民投票は必須ではない。
チェコ・スロバキアは解体の際、住民投票は行っていない


解体した際、元の国を引き継ぐのが継続国家、そうでないのを後続国家と呼ぶ。ソ連が崩壊した際に、ソ連の継続国家となったのがロシア、それ以外の国は後続国家
後続国家は、国連に新規加盟する必要がある。
ユーゴスラビア連邦共和国は、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の継続国家を自認していたが、国際社会はこれを認めず、国連に新規加盟することになった。
チェコスロバキアは本来、どちらも後続国家になるはずだったが、チェコが結局、継続国家になっている。


資産や債務の分割の話なんかは、「そうか、独立するとこういう業務が発生してくるんだなあ、言われてみれば」となんか面白かった。
チェコスロバキアは数週間で合意に至ったが、旧ユーゴの5か国は10年かかったとか
不動産、動産、財産、これらはまあなんとなくわかりやすい
外交資産、すなわち大使館や領事館というのも、国家が解体した際に分割が必要。
旧ソ連はロシアが全部とって、ほかの国は新たに代表団を派遣
チェコスロバキアは同じ建物を共有
旧ユーゴは合意に何年もかかった、と
それから、出生・死亡・婚姻等の記録、登記簿、公文書などをどうするか、あるいは債務。
また、重要なのが年金だという。
旧ユーゴの場合は、生まれの共和国とは別の共和国で働いていた場合、そこで働いた時間数に応じて働いた共和国から年金が受け取れるという合意がとれている、と。複数の国から年金をもらうケースも珍しくないとか
あと、公務員はどうなるのか、とか。
例えば、セルビア出身の海軍士官はモンテネグロ独立後、内陸国セルビア)で働くことになった、というのが紹介されていたりする。
誰が市民権を有するのか、というのももちろん結構面倒な問題


通貨とか軍隊とかが必要になってくるけど、自国の通貨や軍隊もってない国もあるよ、ということで、どこはどうとかいう豆知識
国旗や国歌とか
独立するまでにかかる時間とか、あんまり考えたことなかった。セルビアモンテネグロははやくて、住民投票から独立宣言まで数週間。南スーダンは6か月。

第六章 国際社会に参加する

新国家が独立した際、やることは、他の国からの承認を得ること。
ところで、承認とは一体何か、というと、色々な方法があるようだ。
承認は、国家による特権の1つとされる。ある国家がどの国家を承認するかどうか、他の国家や国際機関から強制されることはない(例外的なケースとして、北キプロスについて承認しないようにという国連安保理の要請。しかし、これも要請にとどまる)



国連加盟国になると、国際社会から国家であると認められていることの確証になる
国連加盟国であっても、他の加盟国全てから承認されているわけではない。イスラエルとか中国とか。韓国と北朝鮮は互いに承認していない
国連による承認はない。国家の承認は必ず国家によって行われる。


国連加盟国になるには、安保理からの勧告に基づき総会で決定されるので、常任理事国が拒否権発動すると国連に加盟できない(例:アメリカに拒否権発動されているパレスチナ
なお、この過程は速くて、独立宣言から1週間とか数週間とかで加盟となる

国連以外の国際機構の話が面白い
ここで色々承認具合にグラデーションが出てくる。
国連加盟によって参加できるものもあるが、国連に加盟していなくても参加できるものもたくさんある。
コソボは世銀やIMFのメンバー。パレスチナはUNESCOのメンバーで、クック諸島やニウエもUNESCOやWHOのメンバーになっている。
それから、各種の地域機構(EUとかASEANとか)とか、貿易機構とか
ほかに、旧イギリス帝国の国によるコモンウェルスとか、フランス語圏の国によるフランコフォニーというフォーラムがあるらしいのだけど、近年、旧イギリス帝国でもフランス語圏でもない国がメンバーになったりしているらしい。
ほかにも国際社会の中に受け入れられるには、より実践的なものとして、国際電気通信連合(電話番号の取得)や万国郵便連合(郵便制度の国コードの取得)、国際標準化機構トップレベルドメイン名の獲得)への加盟がある
あと、オリンピックとかサッカーワールドカップとかもそれなりに重要みたい。
世界の人にPRするには、オリンピックとかは確かに大きい
で、ユーロビジョン歌謡コンテストなるものがあって、これも結構そういう場らしい。全然知らなかったが。と、本書を読んでいたら、まさにこれについてのニュースを見かけた。イスラエル代表が出場しているらしい。
欧州歌謡祭からイスラエル排除を スペイン首相 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News


「台湾化」とは、国連に加盟できていないけど色々な国際機構に加盟して、国際的な地位を得ている状態。事実上の国家にとって、台湾は結構目指すべきポジションらしい。
最近、台湾は承認している国家が減っているらしいというのを以前何かで見かけたことがあったが

第七章 現代的課題と将来的方向性

国家の消滅について
占領とか解体とかで国家は消えるが、将来的に、気候変動による領土の消滅で国家消滅が起きるかもしれない。
これは波及する影響が大きくて、色々検討課題が多いらしい。


他国からの承認の度合いで、様々な「国家」があることを示している
(1)国連加盟国で、かつ、すべての加盟国から承認されている国
(2)国連加盟国であるが、一部の加盟国から承認されていない国
(3)国連非加盟国であるが、相当程度の承認があり、複数の国際機構に参加できている国
(4)少なくとも一つの国連加盟国には承認されているが、広範囲の受け入れはされていない国
(5)国家性の基準を満たす領域ではあるが、いかなる国連加盟国からも承認されていない国


基本的に国際社会は、一方的分離を拒否する
しかし、バングラデシュコソボのように、全ての一方的分離が否定されたわけではない。
ところで、ロシアはアブハジア南オセチア、クリミア、ドネツク、ルガンスクの一方的分離を、コソボの例を引き合いに出して正当化しているらしい。
はっきりした基準が明確にならないままに前例をつくると、そういう変な正当化に使われる、と本書は指摘しつつも、一方的分離について再考すべきではないかと論じている。
いくつかの理由があげられているが、紛争が長引く原因になる、というのがある。

訳者解説

国家承認について、国際法分野では研究の蓄積があるが、国際関係論ではあまり注目されてこなかった
筆者二人は、国家創設、国家承認、国連加盟、未承認国家、事実上の国家、失敗国家といった研究の第一人者
現代は、国家が死ににくく、生まれにくい時代
訳者は、「国家」と「事実上の国家」とで2×2となるマトリックスを使って、本書の議論を説明している
国家×国家という伝統的な国家関係以外の国家関係への着目

序章 「すべての国家は平等か?」
第一章 国際政治における国家性と分離独立
 国家とは何か?
 主権とは何か?
 「確定した領域」とは何か?
 国家となるには領域に最小限の人口が必要か?
 国家性の文脈において「政府」とはどういう意味か?
 他の国家と関係を取り結ぶ能力とはどういう意味か?
 国家はいくつあるか?
 国家と国の違いは何か?
 分離とは何か?
 国々が分離に反対する傾向があるのはなぜか?
 他の国々が分離に反対するのはなぜか?
 一方的独立宣言とは何か?
 一方的分離行為に対して親国家はどう反応できるか?
 世界にはいくつ分離派運動があるのか?
 領域や集団が分離を求めるのはなぜか?
 国家は分離を抑える目的で軍事力を使えるか?
 「救済的分離」とは何か?
 領土回復主義とは何か?
 独立を失った領域は、独立を再主張する権利を有するか?
 分離の当然の権利というものがあるべきか?
 分離を認める国はあるのか?
 国家は領域を切り離すことができるか?
 承認とは何か?
 承認はどのくらい重要なのか?
 非承認とは何か?
 集団的非承認とは何か?
 事実上の国家とは何か?
 失敗国家とは何か?
 ミクロ国家とミクロ・ネーションの違いは何か?
第二章 旧ルール——分離独立と国家創設、一七七六─一九四五年
 近代的国家が出現したのはいつか?
 承認はどのように発展したのか?
 アメリカ合衆国の独立は国家創設をいかにかたちづくったか?
 ラテンアメリカはどのように独立を獲得したのか?
 ラテンアメリカ諸国の独立はなぜそれほど重要だったのか?
 アメリカの南北内戦は分離独立への態度をどう決定づけたか?
 十九世紀後半において国家創設はどう進展したのか?
 国家性のためのモンテヴィデオ基準はどう発展したのか?
 国家の領土保全の原則はいかに出現したのか?
第三章 現代的ルール——自決と脱植民地化、一九四五─一九九〇年
 脱植民地化はどのように始まったのか?
 脱植民地化の過程はなぜそれほど重要だったのか?
 新たに独立した国家の国境はどのように決められたのか?
 自決と領土保全の原則はどのように折り合いがつけられたのか?
 一方的分離がこれほど受け入れられなくなったのはいつか?
 一九四五年以来、一方的分離の成功事例はあったのか?
 一方的な分離行為に対して国連はどう反応したのか?
 ローデシアの一方的独立宣言はなぜそれほど珍しかったのか?
 すべての植民地が独立したのか?
第四章 ルール変更?——現代の分離独立、一九九〇年以降
 冷戦の終結は分離独立や国家性をどのように変化させたか?
 ソビエト連邦はどのように解体したのか?
 なぜいくつかのソビエト領域は独立を獲得しなかったのか?
 ユーゴスラビアはどのように解体したのか?
 なぜチェコスロバキアは平和的に分かれたのか?
 ドイツやイエメンをつくった合併はどのように起こったのか?
 ソマリランドはなぜ承認されないのか?
 エリトリア南スーダンはどのように独立したのか?
 一九九〇年以降、軍事力によって抑え込まれた分離運動はあったか?
 その他のどの分離事例が力で抑え込まれ得るか?
 独立はしないが平和裏に解決された分離問題はあるか?
 モンテネグロは国連に加盟したのにコソボは加盟していないのはなぜか?
 国際刑事裁判所コソボの一方的独立宣言について何といったのか?
 アブハジア南オセチアはより広い承認を受けるだろうか?
 クリミアがロシアに併合される前に独立を宣言したのはなぜか?
 カナダとイギリスは分離独立の民主的モデルをつくったか?
 カタルーニャクルディスタンが独立を勝ち取れなかったのはなぜか?
 台湾は分離独立の事例か?
 パレスチナはなぜ国連加盟国でないのか?
 イスラム国は純粋な意味で国家だったか?
 脱植民地化からさらに多くの国が現れるか?
 次に国連加盟国となると思われるのはどの国か?
第五章 独立と国家性たらしめる機構
 新しい国家はどうつくられるのか?
 分離は解体や脱植民地化とどう異なるのか?
 自由連合とは何か?
 新しい国家をつくるためには住民投票が実施される必要があるのか?
 独立を問う住民投票はどのように準備されるのか?
 継続あるいは後続国家とは何か?
 新国家の国境はどう画定されるか?
 国家の資産や債務はどう分けられるか?
 誰が新国家の市民となるのか?
 新国家にはどのような機構が必要か?
 国家は機構を共有できるのか?
 国家には自国の通貨が必要か?
 国家には自国の軍隊が必要か?
 どのような国家の象徴が必要とされるか?
 独立するまでにどれくらいの時間がかかるか?
 国は独立後に名称を変えられるか?
 国家は国歌や国旗を変えられるか?
第六章 国際社会に参加する
 承認はどのように起こるのか?
 国家は別の国家を承認するよう強制され得るか?
 集団的承認とは何か?
 承認は諸条件の影響を受けるか?
 国家は「脱承認」され得るか?
 国々はどのように外交関係を樹立するか?
 国は大使館や在外派遣団を有する必要があるか?
 なぜ国連の一員であることが重要なのか?
 国はどのように国連に参加するのか?
 国連の一員となることはいつか個別の承認と置き換えられ得るか?
 完全な国連加盟の地位に代わる選択肢は何か?
 国家はその他にどの国際機構に参加できるか?
 国際社会に参加するために他にどのような段階が必要とされるか?
 国々は分離した地域が承認されることをどのように防げるか?
 「台湾化」とは何か?
 国家はお互いに承認しなくてもやり取りできるのか?
第七章 現代的課題と将来的方向性
 国家は存在することをやめられるのか?
 気候変動は国家消滅をもたらし得るか?
 ここでわたしたちは国家の二つのタイプ——事実上の国家と「本当の」国家——について
考えられるか?
 一方的分離への反対について再考するときが来たか?
 わたしたちが「国家」のない世界を目の当たりにする未来があるか?
 国家性はまだ重要か?
 訳者解説
 索引/略語一覧/註/付録A:一九四五年以降の国連加盟国数の増加/付録B:国連総会決議第一五一四(XV)号、一九六〇年/お薦め文献

*1:原書ではsecession。訳者解説によると、基本的な訳語は「分離独立」としつつ単に「分離」と訳した場合もある、と

*2:アメリカのポピュラーサイエンス本、章よりも下のレベルで文章が分けられていることがなくて、読みにくいと感じることがある

*3:もうひとつ、他国との関係を持つ能力というのがあって4条件なのだが、まあそれは政府に含まれると考えてもいいでしょう、というようなことも書かれている

*4:原書刊行時。訳書刊行時には消滅