- 発見なるか プラネット・ナイン R. G. アンドルーズ
- リュウグウが語る太陽系惑星の起源 遠藤智之 協力:渡邊誠一郎/小久保英一郎/奥住 聡
- アルマ望遠鏡で迫る 惑星誕生の現場 遠藤智之 協力:大橋永芳
- 恐竜の知覚を再現する T. レックスの頭の中を覗いてみた A. M. バラノフ/D. T. セプカ
- 小さな化石が解き明かす 大恐竜時代 K. A. カリー=ロジャーズ/R. R. ロジャーズ
- 福井県立大学恐竜学部 どんなことを学べるの? 内村直之 協力:西 弘嗣
- グラフィック・サイエンス 大量絶滅
- ヘルス・トピックス 緩和ケアの現在地
- ディスレクシア 見落とされてきた読み書き障害 S. カー
- The Universe 宇宙はでっかい
発見なるか プラネット・ナイン R. G. アンドルーズ
ブラウンは、エリスやセドナを発見した天文学者で、冥王星を「準惑星」に「降格」させることになった人で、娘から、新しい惑星を見つければ罪滅ぼしになる、と言われていた。で、当初はそんな冗談をと思っていたが、今では実際に第9惑星探しをしている。
2014年頃から、海王星以遠天体の軌道の偏りを説明するにあたって、第9惑星の存在を仮定する説を提唱
未知の惑星を仮定する以外にも色々な説明はあるが、しかし、その中で一番ありえそうなのは未知の惑星
既知のデータを説明するには最も妥当な説明だが、そもそも既知のデータが偏っていないとは言い切れない(つまり、未発見の天体がもっとたくさんあって、それら全体が発見されれば、説明を要するような軌道の偏りはない、という反論(観測バイアス))
ルービン天文台
2025年に開眼予定の望遠鏡が、この問題を解決すると考えられている。
天文学者が観測時間を要求することはできず、自動化した観測計画を実行し、天文学者はおのおのその観測データを調べる。
掃天観測するので、観測バイアスもない。
2~3年以内に、第9惑星があるかないかが分かると言われている。
(天の川領域に重なって存在していると、見つけにくい可能性はある)
ブラウンらが発見できるかは分からない。同じデータを見た他の天文学者が発見する可能性も当然ある。
ブラウンの共同研究者は、誰が見つけるかは大事じゃない的なことを答えているけれど、ブラウンは、できれば自分が見つけたい的なことを言っていて、(娘とのエピソードの件もあり)それはそれで人間味があってよいなと思った。
リュウグウが語る太陽系惑星の起源 遠藤智之 協力:渡邊誠一郎/小久保英一郎/奥住 聡
小惑星について、元素の同位対比でグループ分けができる。これまで、小惑星から飛来した隕石はNCとCCという分類があり、同位対比からもはっきり分かれていた(同位体の二分性)。
リュウグウから得られたサンプルにより、リュウグウはどちらとも異なる特徴を持っていた。NC、CC、CIの3グループ(同位体の三分性)
同位体の三分性は2022年に発見されたが、同時期、他の研究グループからこれに対応するような、惑星形成に関するシミュレーション研究が発表される。
原子円盤が3つのリングを形成する、というもの。
内側から、シリケートライン、スノーライン、COのスノーライン
それぞれの箇所で惑星形成が行われていったとすると、同位体の三分性も説明できる。
また、ちりから小惑星へと形成される過程で、ある一定のサイズ以上になると太陽へと落下してしまう、という惑星形成理論上の謎があるが、ラインで形成されるリングがバリケードとなって落下を防いだのではないか、と。
しかし、同位体の三分性を説明する理論は、他にもある。
次の記事にあるように、太陽系以外の惑星系での惑星形成過程でもリングが観測されている。
円盤からどのようにリングを形成されたのか、天文学者が100人いたら100通りの説明があるといわれるほど
CIはまだサンプルが少ない。大きく言えばベンヌもリュウグウと同じグループだが、しかしその中の小分類ではグループが異なって、組成が異なることがわかっている。
今後、他の小惑星や彗星からのサンプルリターンにも期待
恐竜の知覚を再現する T. レックスの頭の中を覗いてみた A. M. バラノフ/D. T. セプカ
恐竜の知能については昔から色々言われていたという例として、ステゴサウルスの「第二の脳」があげられていて、今では、あれはグリコーゲン体というエネルギーの貯蔵場所だったと言われている、というのが紹介されていた。あれが、第二の脳じゃないのは知ってたけど、グリコーゲン体と呼ばれているのは知らなかった。
本題のティラノサウルス・レックス
身体の大きさの割に脳は大きくないが、これに対して、知能は脳の大きさではなくニューロンの数で決まるという主張があり、ニューロン数を色々推定する研究があって、それによると、T・レックスの知能はヒヒ並とされた。
しかしこれに対して、この記事の筆者は、この研究は脳幹に脳細胞がぎっしり詰まっている前提になっているけれど、実際はそうではないこと。また、知能にとって、脳のどの部位が発達しているかも重要だと指摘して、ヒヒ並ってことはないだろう、と否定している。
昔から指摘されていることだが、嗅球という部位が大きい。
嗅球の大きさと嗅覚受容体遺伝子数に関係があって、そこから考えると、ティラノは600くらいの嗅覚受容体遺伝子があったと考えられる。鳥は、嗅覚受容体遺伝子が多いが、600は鳥の中でも多い部類。
鳥は、視覚優位の生き物
脳の中では、視葉という部位が関係する。
脳の一番前に嗅球があって、その後ろに大脳があって、その後ろに視葉があるという位置関係。ワニ、恐竜、鳥の脳構造の比較イラストが掲載されていた。
ワニや鳥から、恐竜の色覚を推測する
目の位置や視野から立体視できたかどうかを調べる研究
眼窩の大きさや強膜輪から、夜行性かどうかを調べることができる。ただし、強膜輪の化石は落ちたりしてちゃんと見つかっていないことも多い
その研究で対象になった種はほとんど昼行性だったが、シュヴウィアという種とアルヴァレスサウルス科の種が、夜行性とされた。
三半規管は長いほど複雑な動き(飛行)ができる
蝸牛(形状からこの名があるが哺乳類以外は形が違う)から、高音域を聞くことができたかが分かる。
ワニも高音域を聞けるのだが、ワニは低音域でしか発声できない。
→幼体は高音域を発するので、子育てのために高音域を聞けるようになったのではないか、と考えられる。
(ワニも恐竜も鳥も子育てする。ヘビ・トカゲはしない)
その後、鳥類が鳴き声でコミュニケーションできるようになったのは、これが前適応になってた。
小さな化石が解き明かす 大恐竜時代 K. A. カリー=ロジャーズ/R. R. ロジャーズ
この記事の筆者は、古生物学者と地質学者の夫婦で、脊椎動物微化石層(VMB)についての共同研究を行っている。
妻は元々竜脚類に魅了されて古生物学者となったので、微化石研究へ転向するのは最初抵抗があったらしい。
微化石というと、放散虫とかが思い浮かぶのだが、ここでいう微化石はもっと大きいもので、主には歯とか鱗とか、あるいは小動物の化石とかを指しているらしい。
これらの化石がボーンベッドを構成しているらしい。
恐竜だけでなく、恐竜以外の鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類の歯やら鱗やら卵殻やらが発見されて、どのような生態系があったのかを知る手がかりとなっている。
ワニがガーをどう食べたのか(消化器官の強い酸を使っている)とか
生痕化石として貝に膨らみがあって、これは何かと調べていて、寄生性の扁形動物によるものだと分かったというのがあり、寄生性の扁形動物の記録が数千年前から一気に7000万年前まで遡ったとか。
ところでこの記事、結構な分量が、研究内容よりは、彼らの研究フィールドである、ミズーリ川沿岸のブレイクスの自然描写などに費やされていたりする。
福井県立大学恐竜学部 どんなことを学べるの? 内村直之 協力:西 弘嗣
簡単な福井の恐竜発見史
フィールド調査→恐竜研究だけでなく防災とかにも役立つ
データのデジタル化
グラフィック・サイエンス 大量絶滅
ビッグファイブについて、その原因や、絶滅した割合、期間が視覚化されている。
原因としては、白亜紀末だと、きっかけは隕石衝突だけど、隕石にぶつかって死んだわけではなくそこから引き起こされた諸々の現象で死んだわけなので、そういうのも含めて書かれている。
白亜紀末以外、無酸素化があるなあ、とか。オルドビス紀末とデボン紀末は、寒冷化と温暖化が交互に起きてるとか。
デボン紀末は、何回も起きているらしくて、期間がやたら長い。400万年間
逆に、白亜紀末は1万年くらいでめっちゃ短い
ヘルス・トピックス 緩和ケアの現在地
緩和ケアって大事だけど、まだまだ必要としている人が受けられていないよ、という記事
緩和ケアというと末期のものと誤解されたりもするが、実際にはもう少し広い概念で、末期じゃなくても対象となりうる。
緩和ケアを受けるとQOLが上がり、受けてない人よりも少し余命が伸びたりもしている。
もちろん、必要性が高いのは重度の患者であり、誰もが早くから受けた方がいいというわけでもない、とも。
ディスレクシア 見落とされてきた読み書き障害 S. カー
アメリカにおけるディスレクシアを巡る支援状況の話
ディスレクシアかどうかを判定するのに「乖離モデル」というものが用いられている(た)。
これは、IQが高いにも関わらず読字のテストの点数が悪い場合に、ディスレクシアだと判定するというもの。
ディスレクシアかどうか判定するのに「IQが高い」という前提条件が入っているため、IQが低かったりすると、ディスレクシアだと判定されないという問題がある(正確にはIQから期待されるスコアとの差なので、この差が少ないと判定されない)。
しかし、これはディスレクシア研究の最初期において、たまたま高IQの人でこの障害が発見されたからにすぎず、実際は、研究がすすむにつれて、IQとは関係していないことが分かっている。
にも関わらず、教育現場では長らく「乖離モデル」が用いられてきたために、ディスレクシアが見逃されてきたり、あるいは、本人や親はディスレクシアだと認識しているのに支援教育が受けられなかったりしてきている。
ディスレクシアは、適切な学習支援を受けるとよくなるらしい。
判定方法が見直されたりしたが、それも乖離モデル2.0にしかなっていないという。
でもって、ちゃんとディスレクシアへの支援をやろうという方向になっている学校とか地区とかは、結局、富裕層がいるところであって、貧困層やマイノリティが多いところだと進んでいなくて、ディスレクシアの支援状況にも経済格差が反映されてしまっている、と。
黒人なんかは、何か支障があっても「大丈夫」と言わないと、というのがあって、より一層見逃されてきた、という問題もあるらしい。
アメリカについての話なので、日本ではどうなのかな、というのが気になった。
The Universe 宇宙はでっかい
宇宙の大きさについてのコラム記事
太陽の大きさを何とかに喩えると冥王星はどこどこくらいにある、みたいな、よくある、身近なものに換算してみる、という話から始まって、次第にスケールを大きくしていく。
面白かったのは、大きさと距離の比率を考えてみるという奴で
例えば、恒星は、恒星の直径に対して恒星間の距離が数千万倍とかで、お互いに非常に離れている。恒星同士が衝突することはありえないことが分かる。
これに対して、銀河は、銀河の直径に対して銀河間の距離は30倍とかで、銀河同士は近い。なので、銀河と銀河の衝突は珍しくない、と。
最後に、宇宙の大きさは、天文学者だってよくわかってないよ、としめられている
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