『筺底のエルピス』
新刊が今月出るのに備えて、既刊1~7巻を読み直した。
初読時の記事は以下の通り
ちなみにそれぞれの発売日が、
1巻:2014年12月→2巻:2015年8月→3巻:2016年3月→4巻:2016年6月→5巻:2017年8月→6巻:2019年1月→7巻:2021年2月
3巻と4巻は上下巻みたいなものなので、5巻までは年に1回、6・7巻は2年に1回ペースで刊行されていて、8巻は4年たって刊行される形になるので、待望の新刊ということになる。
自分は2巻以降は刊行時に読んでいるので、読んできたのも刊行タイミングと同様のタイミングとなる。新刊が出たときに多少読み直しをしたりはしていたが、既刊を改めて1巻から全部読み通したのは、初めてだったかもしれない。
どれも面白かったけど、やっぱ5巻が好きだわ~
で、1~6巻については、もちろん色々忘れているところはありつつも、読み替えしていたら「そうそう、こんな話だった」という感じで読めたんだけど、7巻についてはびっくりするくらい内容を覚えていなくて、結構、初読に近い感覚だった。
読んだ当時のブログ記事を見直しても、めちゃくちゃ内容が薄い。
7巻だが
捨環戦で増えてしまった自分をどうするか問題
叶は、どうにかして物理的に2人が共存する方法を探る
阿黍は、人格と記憶を合流させてきた
これに対して、百刈圭はどうするか、という話をやっている。圭の場合、物理的には増えてなくて人格データだけがやってきた状態で、脳内で2人格を共存させる方法をとることになる。
ところで、じゃあマーシアンはどうしてんだって話で、絶えず別々の地点にいて移動し続けるという方法をとっているわけだけど、彼女ら自身がどう思っているか掘り下げられてはいないので、気になるっちゃあ気になる。
1号車が少し話してたっけ?
それから7巻は、奥菜正惟と霧島幸緒の関係の決着と、霧島とギスの出会いが描かれ、脇筋だけど面白い話じゃんと思うんだけど、マジで覚えてなかった……
読み返しておいてよかった。
あと、今まで名前だけ出てた結の両親とメルクリウスが初登場、かな
ところで、『エルピス』6巻に『月とライカと吸血鬼』の広告入ってた。エルピス6巻の時に1巻出たシリーズだったのか、と。そして、エルピス7巻には、月とライカと6巻の予告が……。
まあでも、6巻と7巻の間に2年あるんだから、その間に6冊でるシリーズがあっても全然不思議ではないな。
『月とライカと吸血鬼』気になりつつも、アニメも見れてないし、原作も読めてない。
著者によると、8巻は脇役たちの話で、9巻が最終刊になるとのこと。
『ねじまき少女』
エルピスを再読するのと並行して、バチガルピ『ねじまき少女』も再読していた。
なんで再読することにしたんだっけか
2011年に刊行された作品で、2011年に読んでいるけれど、それ以来読み直したりはしていなかったので、内容は忘れていた。
あらすじは、初読時のブログ記事におおむねまとまっている通り
中盤、読んでいてやや中だるみがあって、「あれ、読み返してみるとそこまで面白くなかったのか?」と不安になったが、そんなことはなく、面白かった。
エルピスと並行して読んでたから、というのもあると思う。
アンダースンがンガウや種子バンク探すくだりとかは、世界観を段々明らかにしていくところではあるけど、ちょっと飽きるところはある。
ジェイディーが死んで白シャツ隊パートの主人公がカニヤに変わったあたり、エミコのリミッターが外れるあたりから、どんどん面白くなっていった気がする。
過去にパンデミックがあった世界で、その際に、タイは強権的な検疫体制をとることで独立を維持した経緯があって、環境省に強い権力がある(クーデター起こしてて、その時の将軍が環境省のトップ)
これに対して、外国に対する開放政策を進めようとする通産省が対立している。
あと、子供女王陛下というのがいるのだけど、一切姿を現わさなくて、摂政が牛耳っているという政治環境がある。
で、環境省と通産省の対立がヒートアップしていく中、エミコが偶発的に摂政を殺してしまい、内乱状態に突入してしまう。
化石燃料は基本もう使われていないんだけど、軍用車両だけは石炭エンジンつかっていて、ガンガン、石炭燃やす軍用車が首都に入り込んでくる。
温暖化で水位が上昇していて、高い堤防を築いて首都の水没を防いでいるんだけど、この最後の内乱シーンは、首都水没へと繋がっていく緊迫感もある。
エミコをはじめとした「ねじまき」は、遺伝子改良された「新人類」なんだけど、基本的には日本で使われていて、日本が最先端のテクノロジー国家として描かれているのがムズムズするが、そもそもこの作品の日本描写、実際の日本というよりサイバーパンクジャンルへのオマージュとして描かれている感じはする
ホク・センって実際何歳くらいなんだろ
老人なんだけど、結構体力やバイタリティあるので。
実際結構高齢だけど、バイタリティがあるのか、難民になる過程で実年齢以上に老け込んでしまったのか。
マイとの関係もあるので少し気になった
まあ、老人と少女という組み合わせは、それはそれでベタな組み合わせなので、普通に老人なのかもしらんけど。
政治的対立を王宮で謝罪して手打ちにするの、タイって感じがする、知らんけど。
一方、遺伝子技術者が聖人のような扱いしてるのが、カロリーパンク的
タ帝国主義の時代に独立を保ったことと度々クーデター起きては国王が諌めるみたいなことを繰り返す政治風土というタイの特徴と、パンデミックや温暖化に石油枯渇が起きた未来というのを組み合わせて、世界観作ってるのがなかなかうまくできてる
人間への服従を組み込まれているクミコが、そこからの離脱を図るというメインプロットは、ロボットSF的でもあるし、SFに限らない王道な物語展開でもあり、そこに、タイがいかに独立を保つのかとか、二重スパイがいかに良心に従うかとか、難民と化した男がいかに再起を図るかとか、いかに食い物にされずに自立するか(もしくは従うか)みたいなプロットが色々と並行して走っているんだろうなあ、と。
で、そういう関係から解放されてるっぽいギ・ブ・センがトリックスターめいてる。