『日経サイエンス2023年2月号』『Newton2023年2月号』

日経サイエンス2023年2月号

SCOPE 不要なシナプスを”食べて”整理

グリア細胞シナプスを食べることによって、記憶定着に一役買っているという話
また、精神病理との関係も

ADVANCES 軟組織が化石になるには

軟組織がどうやって化石になるのかはまだ謎が多く、同じ内臓組織でも、化石に残るものと残らないものがあるが、何がそれを分けているのか分かっていない。
pHの違いではないかと言われていたのだが、実際にpHを計測しながら腐敗過程を調べた研究で、これは関係なさそうということが示され、リン酸の量の違いではないかと言われ始めているとかなんとか

撮像の舞台裏  C. モスコウィッツ

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡特集の中の記事の一つ
パラパラ眺めた中で目にとまったのが、JWSTの画像処理している人の「これはリアルだよ」というコメント
JWSTは赤外線望遠鏡なので、JWSTから得られた画像は、人間が直接その天体を見た場合の見え方とは異なる。異なるけれども、画像処理の仕方は、普通のカメラマンがやってる処理と同じなんだから、という話っぽい

小惑星リュウグウから火星のフォボス

はやぶさ2プロジェクトマネージャの津田雄一とMMXプロジェクトマネージャの川勝康弘の対談・インタビュー
触ることで(実際に着陸してみて)初めて分かることがあるという話とか
サンプルが手に入るっていうのはやっぱ色々と重要だという話とか(リュウグウのサンプルの60%はそのまま保存するらしい。今後の調査技術の発達を見越して)。

にくづきにくら  柞刈湯葉

タイトルからはどんな話がよく分からないが、月面を舞台にしたSFスリラー
そもそも月面基地作ったとして金になるのかよという問題に対して、低重力を利用した人工臓器培養を挙げている。が、作中でもそれが軌道にのっているわけではなく、なんとかそれを月面開発・産業の端緒に据えようとしている頃の話。
そこに1人のテロリストが乗り込んでくる。
たまたまその時に宿直にあたっていた科学者とテロリストとの間で、トロッコ問題みたいな問答が繰り広げられる

データを駆使したクリミアの天使 ナイチンゲール  RJ アンドリューズ

ナイチンゲールが、戦地の衛生状況改善のために、インフォグラフィックスを駆使したという話
実状、要因、改善案を短いページのパンフレットにまとめて、わかりやすいグラフによってそれらを語らせる彼女の方法論を、筆者は「データ・ストーリーテリング」だと述べている。

Newton2023年2月号

ゼロからわかる分子生物学

次世代シーケンサーのあたりだけ読んだ

隠れた「異次元」を探しだせ

高次元がミクロスケールに畳み込まれている云々の話
90年代の研究だけど全然知らなかったものとして、高次元ってプランク長じゃなくてもっとマクロなスケールにあるのではないかという説
重力が距離の二乗に比例する、というのが、空間が3次元であることの証拠らしいんだけど、重力の強さの計測って難しくて数センチとか数ミリとかの幅だとよく分かっていなかったらしい。そういうスケールで、二乗則が破れていた場合、そこにより高次の次元があることになるらしい。残念ながら、今のところ、二乗則の破れは発見できていない、と

世界の高速鉄道

文字通り、世界の高速鉄道の写真
日本の新幹線から、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなどのヨーロッパから、中国、ラオスウズベキスタン、モロッコなどのアジア・アフリカまで
イタリアの車両かっこよくてさすがイタリアだなと思ったり、アジア・アフリカの奴は、どの国から技術提供受けたかとかがその国の背景を物語ったりしていて面白い

バイアスの心理学

色々な認知バイアスについて紹介している
確証バイアスとかその他色々、大体まあ聞いたことのある項目ではあった。
ネット上で「脳は否定形を理解できない」というよく分からん題目で紹介されることのある「皮肉過程理論」ないし「シロクマ実験」について
これ、「シロクマについて考えない」ように指示された後、「シロクマについて考える」ように指示されると、単に「シロクマについて考える」ように指示されるよりも、よりシロクマについて考える頻度が増える、という実験だったらしい。
あと、「シロクマについて考えない」ように指示されている間も、シロクマについて考えたかどうか計測してて、この場合も、全く考えないのは無理で、時々シロクマについて考えていた、という結果になっている。
また、「シロクマについて考えそうになったら、赤いなんとかについて考えてください」(なんとかはもっと具体的に書いてあったが忘れた)という指示をすると、シロクマについて考える頻度がぐんと減るとかで。
まあ、この実験から一体どういう理論ないし教訓(?)を引き出せるのか、というのは正直よく分からんな、という印象。まあ、そういう実験があったんだな、と。
上で、大体聞いたことあるって書いたけど、勉強した内容について勉強を完了させてしまうと逆に忘れやすくなる、みたいなのがあって、経験的になんか分かるけど、心理学的にもそういうこと言われているのは知らなかった。
それから、正常性バイアスは、非常に有名な奴で、特に目新しいことは書いてなかったが、自分これに当てはまる気がして怖いなあと常々思ってる。

生殖医療の未来

生殖医療関連で色々あったが、iPS細胞から配偶子を作ることができるという話とか色々。
iPS細胞から配偶子が作れると、同性愛者やあるいは独身者でも自分の遺伝子で子どもが作れるようになったり、不妊治療というものが不要になるかもしれなかったり。
あと、一般の人たちに、どこまでだったら許容できるか、ということをアンケート調査している研究があって、一般の人たちの倫理的直観がきれいに割れている結果になっていて興味深い。また、高齢カップルが使うのは許容できるかとか、同性カップルが使うなら許容できるかとか、色々なアンケートがあって、国によってそれも色々違うとか(概ねその国の結婚制度とかと対応しているっぽい)。

暗号通貨の技術と課題

ブロックチェーン、トラストレストラスト、ビザンチン将軍問題、プルーフオブワークとプルーフオブステークについて
ビザンチン将軍問題は、なんか別のところで以前読んだような気もするけど忘れてた。
プルーフオブワークとプルーフオブステークは、全然知らなかった。プルーフオブワークは普通の暗号通貨の仕組みだけど、マイニングで電気消費量食い過ぎ問題があり、それを解決するのがプルーフオブステーク方式。でもこっちは、保有し続けることにインセンティブが生じるので、格差が拡大する・流動性が低下するという問題がある、と。


広告に『暇と退屈の心理学』(Newton新書)という本があった
Newtonこういうタイトル付けすることあるのか
というか、そもそもThe Psychology of Boredom(サブタイトルが)という本の翻訳なのか。まあ、とはいえそこに「暇と」をつけるのは明らかに意識しているだろうけど。