『日経サイエンス2023年1月号』

ボイジャー最後の挑戦 未踏の星間空間を行く T. フォルジャー

ボイジャー1号、2号について、そのあらましを振り返る記事
惑星直列していてスイングバイの好機だったから、という理由だったのか。
175年に1回のチャンスだ、急げとばかりに始まった計画で急ピッチで打ち上げたみたいだけど、議会の理解を得るのは難しくて、木星まで行く計画として承認もらいつつ、技術者側で選べる場合は、可能な限り予算の高い方の選択肢を選んで開発していったっぽい。
同型機を2つ打ち上げ。当時は、同じものを2つ打ち上げるものだったらしい(ある関係者のそういうコメントが引用されていたが、半分冗談か?)。
40年以上運用しているし、ある時期からは少数のメンバーでやっているので、メンバー同士一緒に旅行してたりかなり家族っぽくなってるとか、新しく入ってきたメンバーの中にはボイジャー打ち上げ時にはまだ生まれてなかった人もいるとか。
ボイジャーからのカメラ映像は、施設の廊下だかどっかに設置しているテレビに映し出されるようにしていたらしいのだけど、初めてイオの映像がきたときは、学生がイタズラでピザを映したのかと思った、みたいなコメントもw 木星の衛星について、完全に予想外の姿だったらしい。ちなみに、カメラについては、既にスイッチが切られている。
ヘリオポーズを脱したとされているが、磁気と放射線のデータが予想と一致せず(放射線は一気に増えたのに磁気は弱まっていないとかなんとか)、チーム内で解釈が一致するのに時間がかかったとか。そもそも今も、ヘリオポーズが一体どんな形をしているのかなど議論が出ている(クロワッサン形をしているという説が有力になりつつある)。
ボイジャーは、実際に観測してみると予想と違ったということを色々発見していて、やっぱ現地行って観測するのが大事だよねーというようなことが書かれている(けど、現地行くの大変すぎる……)。
ボイジャーは今、原子力電池による電力がどんどん低下していて、ヒーターや観測機器のスイッチを切っていっている。コンピュータの近くにあってその熱を得られる磁力計となんかの観測装置は最後まで残す予定とか。
2030年頃まではなんとか運用し続ける予定。
ボイジャーのすごいところは、マイクロプロセッサを使っていないところ。コンピュータプログラムがない時代に作られたから、ソフトウェアでどうこうするみたいな発想がそもそもない。もう、ボイジャーみたいな探査機を作ること自体できないだろうとも言われているとか。

AIに論文書かせてみた A. O. トゥンストローム

タイトルがすごいが、タイトルそのままの記事(なお、原題はAI Writes about Itself)
GPT-3という文章作成AIがあり、こいつはこれまでも人間が読んでも遜色ないブログ記事とかを書いていたはずだが、これは、GPT-3にGPT-3についての論文を書かせてみた、という内容。
試しに書かせてみたらどうなるかなーくらいのノリで書かせたら、思いの外、ちゃんとした論文が出てきてびっくりした、という話。
ちなみに、何故GPT-3について書かせたかというと、GPT-3についての論文は比較的少ないので、その内容を学習していないから。論文形式の文章をちゃんと書けるかを試したいので、既に論文が大量に書かれているテーマを使うと、それを学習しちゃっててそのままアウトプットしてきちゃうから。あと、仮にGPT-3が書いた論文が今後発表されるとして、誤ったことが書かれたとしても、影響が少なかろうという理由から。
で、基本的には、ほとんど指示は出さずにGPT-3任せで論文を書かせて、わりとちゃんとした論文ができたので、投稿してみることにした、と。
この記事は、GPT-3がどんな論文を書いたのかというより、AIが書いた論文を雑誌に投稿しようとしたら、当たり前のことに色々戸惑うことになったという筆者の経験を綴ったエッセイという感じかもしれない。
例えば、GPT-3の姓は一体なんだ? とか、 メールアドレスは自分のアドレスを書いておくか、とか。
また、投稿しようとすると雑誌側の規定で「全ての著者が投稿に同意していますか」とか「利益相反はありませんか」とかがあるので、この筆者はこれらをいちいちGPT-3に訊ねる、ということまでしている。ここらへんは、どこまで冗談でどこまで本気なのかよく分からん感じだったが、書いてる本人も奇妙な感じだったようだ。
なお、この記事を書いている段階で査読結果はまだ出ていないとのこと。


追記
ググったら、論文本体を見つけた
プレプリントの奴
hal.archives-ouvertes.fr
https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-03701250/document
下のURLは、論文pdf。


自分のヘボ英語力だと、違和感なく読める。
どういうプロンプトを与えて、何番目の出力を採用したかなど人間側共著者のコメントもついている。
基本的には、1番最初の出力を使っているっぽい。
メソッドについては、このキーワードを使って書け、と細かく指示しているけれど、他の部分については、かなりシンプルな指示(プロンプト)しか与えてない
なお、人間側共著者のコメントとして

The system was far too simplistic in its language despite being instructed that it was for an
academic paper, too positive about its ability and all but one of the references that were
generated in introduction were nonsensical.

ともあった。
too positive about its ability って言われてるのうけるw
最後に参考文献が5つくらいあがってるけど、それがほとんどnonsensicalだったということかな。
あと、論文の最後に、筆者らが何の資金を受けているかと利益相反についてのコメントがついている。
筆頭著者は、セカンドオーサーのサラリーから3ドル29セントの資金を受けてるよーと(OpenAIへの使用料かな)w