『日経サイエンス2020年4月号』

特集:時間結晶

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ひとりでに時を刻む物質  F. ウィルチェック

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時間結晶とはなんぞや、ということを、時間結晶というアイデアを提唱したウィルチェックが解説している記事
時間結晶とは何かの前に、結晶とは何かという話だが、さらにその前に、対称性とその破れについて
対称性とは、何か変化させても変わらないということで、例として、図形の回転が挙げられる。
円は、回転させても形が変わらない=対称性がある。
正方形は、90度回転させれば形は変わらない=対称性はあるんだけど、円よりも対称性が低い。
時間対称性というのは、同じ状態を繰り返す物理系のことだが、それだけなら色々ある。物質の新しい状態の発見につながるかがポイントで、そこで結晶とは何かという話になる。
結晶には、対称性の低下、相転移、硬さという3つの特徴がある。
対称性の自発的破れが起きている。
ところで、相対性理論によれば、空間と時間は等価。空間的な対称性の自発的破れがあるのなら、時間的な対称性の自発的破れもあるのでは、というのがウィルチェックのアイデア
なお、それを「時間結晶」と名付けたのはウィルチェックの妻
時間結晶=時間並進対称性の自発的破れ(ウィルチェック2012)
ネーターの定理により、時間並進対称性はエネルギー保存と等価
ところで、普通、空間対称性の自発的破れは、エネルギーがより安定になる状態になろうとすることによって説明されるが、時間の場合、エネルギーで説明できないという問題がある。
2017年に、イッテルビウムやダイヤモンドでフロケ時間結晶というのが実際に発見された
時間結晶は、高精度な時計となる
今後の研究としては、時間液体や時間ガラスというものの可能性

時間結晶を巡る論争  古田彩 協力:渡辺悠樹

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ウィルチェックの考えた時間結晶は、平衡系のもの
つまり、何の外力もなしに一定の時間的パターンをひとりでに刻む状態
しかし、そんなものほんとにあるのか
2015年、渡辺悠樹が、それは不可能であるという数学的な証明を行う。
その後は、非平衡的な時間結晶の存在を検証する方向に研究が進む。
非平衡系なので、外部から力を加えると振動するというもの。なので、それ自体は取り立てて不思議ではない。
ただ、力の強さを変えても、振動の周期が変わらない=硬さがある、と時間結晶といえる。これは、自発的破れが起きているから。
非平衡系の時間結晶をフロケ時間結晶ともいう
連続的並進対称性から離散的並進対称性に変わることを対称性の破れ、というけれど、対称性の破れは、高い対称性から低い対称性へ移ることなので、高い離散的対称性から低い離散的対称性への移行でも、対称性の破れという
時間的な対称性の破れをどう定義するのか、というのが、証明にあたって問題となった点らしい
時間と空間は等価だから、というのが、時間結晶というアイデアのきっかけだけど、実際にはやはりちょっと時間と空間は違う、みたいな話でもあるらしい

特集:チバニアン

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77万年前の地球を探る  出村政彬 協力:岡田誠/菅沼悠介/羽田裕貴

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おおむねチバニアンについての解説記事なので、ここで要約紹介しないけれど
全然自分が知らなかった話として、この地層からは有孔虫の化石がでてて、そこから当時の気候変動についての研究がされているらしい
地磁気以外でも、注目の地層だよ、という話

地磁気はなぜ逆転するのか  中島林彦 協力:陰山聡

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地磁気逆転は、シミュレーションでも同じ現象が起きるが、メカニズムはいまだ不明
シミュレーションでは、スパコンの能力不足で、内核の粘性が再現できていないため。
シミュレーション研究以外のアプローチもいくつかあるけれど、その中で、木星との比較なんかもあるとか(今、ジュノーが木星の磁場観測している)
あと、地球の磁場についてのは、地磁気逆転以外にも謎があって、地磁気は42億年前にはもうあったという証拠があるが、一方で、内核の誕生は古くとも10億年前という謎。

復活するか? ファージ療法  C. シュミット

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さわりしか読んでないんだけど、かつて、バクテリアファージを使った治療法があったらしい
1930年代頃以降、西側諸国では用いられなくなってしまったが、抗生物質による耐性菌の問題がある最近、再び使えないだろうかという一部で研究されているらしい

火災竜巻  J. M. フォートホーファー

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パラパラっと読んだ

完全自律型兵器  N. シャーキー

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自律兵器の特徴は、判断の速さで、これは防衛システムにとってはメリット
しかし、もちろん問題点は、コンピュータはエラーをおかす点にある
エラーが生じる理由があるが、敵対システムからのジャミング、スプーフィングやデコイなどの攻撃もその要因の一つ
例えば、最近の深層学習系の画像認識システムだと、ちょっとしたノイズを混ぜただけ、全然違う画像と誤認識してしまうエラーがよく知られている
それから、アルゴリズム同士が戦いだしたとき、何が起きるか我々は全然わかっていない、というのも問題だと指摘する
Amazonで、自動で値付けするシステム同士が互いに反応しあって、異様に高い値段をつけてしまった例などがある。古本の値付けならまだいいが、もし軍事システムでこれが起きたらどうなるのか問題。