- SF小説『三体』に見る天文学最前線 系外惑星の先にある異星文明 中島林彦/協力:須藤 靖
- 作者 劉 慈欣が語るSFと科学技術 語り:劉慈欣
- 神経回路網はどのように知性を生み出すのか M. ベルトレロ/D. S. バセット
- From nature ダイジェスト AIが地動説を“発見”
- 「統計的に有意」を問い直す L. デンワース
- NEWS SCAN ●国内ウォッチ ペンギンの泳法まねた推進装置
SF小説『三体』に見る天文学最前線 系外惑星の先にある異星文明 中島林彦/協力:須藤 靖
プロキシマ・ケンタウリやアルファ・ケンタウリの惑星系の話やSETIの話を中心にしつつ、須藤靖による『三体』への感想コメントがところどころに挟まって、最後に中国の天文学研究の話してる感じの記事
現在、世界最大の電波望遠鏡の座は、アレシボから中国の「天眼」に変わっており、天眼はブレイクスルー・リッスンにも参加しているという話でしめられている。知らんかったー
作者 劉 慈欣が語るSFと科学技術 語り:劉慈欣
埼玉大で行われたシンポジウムでの劉慈欣講演をまとめたもの
子どもの頃、中国の人工衛星打ち上げを見たという例のエピソードとか
SFはイノベーションと関係しているという話とか(なんかそういう相談役みたいない仕事もしてるらしい)
また、SFは科学知識の普及に役に立つか、という点については疑問があるという。というのは、自身の作品が映画化された流浪地球について、見た人が恒星と惑星の区別がついてなくて話が分かってなかったというエピソードを述べて、科学知識の理解があってSFが楽しめるという順だ、と。
で、最近は中国でも基礎科学が大きなニュースになるようになってよかった、と。
神経回路網はどのように知性を生み出すのか M. ベルトレロ/D. S. バセット
「ネットワーク神経科学」
脳の神経細胞のネットワークについて、グラフ理論からアプローチする
神経細胞同士のつながりが強い「モジュール」があり、モジュールとモジュールをつなぐ「ハブ」がある。
モジュールを楽器に、脳の活動をオーケストラ演奏に喩える。個々の楽器について分かることは重要だが、しかしそれだけでは、脳の活動について分かったことにはならん、と。
モジュールはそれぞれ独立性が高く、また、モジュールの独立性の高さと知的能力等の高さも関係しているらしい。経済的によい環境で育つと、早くにモジュールが独立するようになる、とか。
一方で、これらのモジュールが連携して活動することも必要で、それで重要になってくるのがハブ
また他に、脳の様々な領域に跨がっているモジュールもある。前頭頭頂モジュール、顕著性モジュール、デフォルトモードモジュール。
最近、デフォルトモードネットワークとか脳の三大ネットワークとかよく聞くけど、いまいちなにもんかよく分かってなかったので、やっと位置づけが分かったような気がしてよかった。
話戻って。他に病理との関係として、統合失調症はハブが過剰に活発で、モジュール間をつなげすぎてしまうとか、鬱はデフォルトモードモジュール(ネットワーク)が優位になりすぎてるとか。
あとなんかシミュレーションして、実際にハブのあるネットワーク構造を作れた話とか。
From nature ダイジェスト AIが地動説を“発見”
普通ディープラーニングは、データからそのパターンを学習するけど、何を学習したのかを単純な形で示したりできない。
今回、データを食わせるネットワークと予測を行うネットワークを作り、二つのネットワーク間でやりとりできる幅を絞って学習させた。
今回学習させたのは、地球から見た火星のデータ。前者が後者に渡す学習結果の中に、惑星の軌道を示す公式が出てきた、というような話らしい。
筆者は、量子力学に応用して、AIに新しい科学理論の発見をやらせたいっぽい。
「統計的に有意」を問い直す L. デンワース
統計的有意性をあらわす「p値<0.05」について、近年、これを改めるべきという議論が活発になっているという。
この基準を考えたフィッシャー自身が後年、0.05という数字を提案したことを後悔していたという話があるとかないとか。
そもそもこのp値<0.05というのは、その研究を続行するか否かを判断する指標として作られたもので、0.05を上回っていたらやめた方がいいが、0.05を下回っていたからといってその結果が何か重要な意味をもっていることを示すものではない、と。
また、分野によって、求められる精度は本来変わってくるものであり、
あるいは、測定方法によって、同じデータから違うp値が算出される。
つまり、p値は全く無意味な指標というわけではないけれど、絶対視できるような基準ではない、と。
ところが、現代の科学では、絶対的な基準のように使われている。
p値が0.05下回ったらそれでよしとして思考停止してしまっている、と指摘する研究者もいる。
心理学や生物学の分野で、再現実験したら再現できなかったという例も見つかるようになっている。
そんなわけで、最近では、p値以外の方法を使おうということが提案されていたりする。実際、p値を表記しなくなった雑誌とかもあるらしい。
人間、不確実性に耐えられないので、p値みたいな判定基準に頼っちゃうんだけど、不確実なものは不確実なまま捉えられるようにならなきゃダメなんじゃないかとか
そもそも「有意性」って言葉がよくなかったとか。