日経サイエンス2019年9月号

特集:恐竜 その姿と動き

実物化石が語る新たな恐竜像  内村直之/古田 彩


「恐竜博2019」紹介記事
ディノニクスとデイノケイルスとむかわ竜について

恐竜たちの走りを再考する  出村政彬/古田 彩 協力:宇佐見義之/平山 廉/ 久保 泰


ティラノサウスルは速かったのかどうか問題!
走るティラノサウスルというと『ジュラシック・パーク』にも出てくるが、ロバート・バッカーなどは、時速70kmで走ったのではないかなど、超俊足説を言っていたらしい
対して、足跡化石から、決して速くはなかった(時速10kmとか30kmとか)という説も出てきている。
これに対して、数理生物学者である宇佐見は、時速50kmで走れたという、筋骨格モデルを用いたシミュレーションを提示している。


久保は、四足歩行よりも二足歩行の方が速い、という研究結果を出している
三畳紀の主竜類について、二足歩行と走行性をそれぞれ指標化してグラフ化したら、そういう傾向が出た、と(なお、速さは中足骨の長さから指標化)
また、足のつきかたで、蹠行性・趾行性・蹄行性という分類があるが、この特徴についても久保は調べている。
恐竜は全て趾行性。
対して、中生代の偽鰐類や哺乳類は全て蹠行性
現生生物を見ると、大型動物のほとんどは趾行性ないし蹄行性
趾行性は、足首を伸ばすのに必要なモーメントが小さく、同じ筋力であればより大きな体を支えられる。エネルギー効率もよくてスピードも出しやすい。
中生代に、恐竜が繁栄した理由は、趾行性にあったのではないか、と

トリケラトプスの本当の歩き方  古田 彩 協力:藤原慎一


四足動物の脚のつきたかには、側方型と下方型がある。側方型は、いわゆる這い歩きで、トカゲとかサンショウウオとかの脚の付き方。下方型は、直立歩行で、哺乳類の脚の付き方。
恐竜は、下方型なのだけど、そもそも骨化石ってばらばらな状態で見つかるのに何故分かるかというと、足跡から分かる。歩角の違いで、側方型か下方型かが分かる。
古生代の足跡と中生代の足跡を比べると、下方型が一気に増えたことが分かっている。


前足を普通にまっすぐ下におろすと、つま先が外側を向く。
しかし、哺乳類はつま先が前を向いていて、これは手首を回転させられるから。
ところが、爬虫類はこれができない。
トリケラトプスの再現はこれまで、下方型だけどつま先が前を向いているものや、つま先が外側を向いていて側方型になっているものがそれぞれあって、統一されていなかった。
原慎一の研究によって、下方型へと統一されるようになった


現生動物について、筋肉の付着位置から、肘を曲げるテコの長さを調べる。その長さと、下方型か側方型か(ナマケモノのような匍匐型か)を、グラフにプロットしたところ、これが対応していることが分かった
ここから、トリケラトプスについても明確に下方型だと言えるようになった、と


藤原復元について、聞いたことはあったが、よく分かってなかったので、勉強になった

デング熱ワクチンの混迷 抗体依存性感染増強  S. ヤスミン/M. ムカジー


デング熱は、初回の感染よりも2回目の感染で重篤化する、という特徴(抗体依存性感染増強)があるらしい
で、ワクチンの投与が、この初回感染と同じ役割を果たしてしまうという問題がある。このため、感染したことない人はワクチンを打たず、1回感染したことある人だけワクチンを打つ、というのが、このデング熱ワクチンの打ち方になるのだが、当初これが分かってなかった。
最初、WHOとかフィリピン政府とかがデング熱ワクチンできたよーみんな打ってーということをやっているときに、地元の大学の先生が「感染していない人は危ないから打つな」と警告してたのだが、まあもちろん、受け入れられず(反ワクチン派の主張に見えかねないもんな、これ)
しかし、死亡者が出てしまい、政府の方も「感染していない人にはワクチンを打たない」方針に変わる。のだが、何故ワクチンを打たせてもらえないのか、という反感につながり、ワクチン自体への信頼度がダウン。他の感染症ワクチンの接種率が下がり、麻疹の流行を招いてしまうという事態に……
という大変な内容だった

クォークの世界を探る新加速器EIC計画


核子(陽子と中性子)の質量とスピンが、何に由来するかというのかはまだ分かっていないらしい。
核子は、クォークから構成されているが、構成要素のクォークの質量がそのまま引き継がれているわけではなくて、クォークの組み合わせによって創発(?)しているらしい
それを調べるための新しい加速器アメリカで作っているとか

文明を拒むアマゾンの部族 タイガー族を守る人々  A. ピオーリ


コロンビアでの、非接触部族保護の取り組みについて
アマゾン奥地には、未だ「文明社会」との接触を拒み、孤立した文化を守り続けている部族が存在している。
彼らは「外の世界」があることは知っているが、自分たちの意思で接触を拒んでいると考えられている。
彼らは、感染症への免疫をもっていないので、「接触」することによって一気に滅んでしまう可能性があり、実際、絶滅の危機に瀕している部族もいれば、既に絶滅してしまった部族もいる。
そうした非接触部族を守るために、近隣の他の先住民たちがNPOと協力してパトロールなどの保護活動を行っているという話
コロンビアは、政府と反政府組織との間で和平が結ばれたらしいんだけど、その結果として、左翼ゲリラの残党がジャングル奥地に入り込んでくるとか、資源を狙う不法採掘者、密輸業者であったりとか、あるいはキリスト教宣教師が接触を図ろうとしたケースもあるとか(宣教師2人組が先住民のパトロールで発見され、その後もあきらめずに来るので、コロンビア政府から正式に接近禁止命令が出て、最終的には彼らも諦めたとか)。
政府が保護政策を実施するためには、そこに非接触部族が生活していることを証明しないといけない。最初にこの活動を始めた研究者は、飛行機を飛ばし航空写真で家を確認して証明したらしい。最近では、衛星画像で探したりしているとか。
そういった話がある一方で、呪術の話も出てくるのが面白い。
先述した研究者だが、この人は、非接触部族の保護に尽力した人なのだが、件の航空写真撮るために飛ばしていた飛行機が墜落して亡くなってしまう。で、ベテランシャーマンが調べたところ、当の非接触部族のシャーマンが、呪いで落としたらしい、と。で、近付くつもりはないから、とやはりエスパー的な奴で伝えたらしい。
接触保護の是非については議論が分かれているところらしい。つまり、どうしたって突発的な遭遇を防ぐことはできないし、非接触を完全に守りきるのは難しい(コロンビア始めアマゾン流域の各国政府はそんなに強力ではないし、NPOと先住民に任せるのも限度はある。予算不足でパトロール拠点が減っているという話も書かれている)。それに非接触を守ろうとすると、非接触部族からの情報は当然入らないので、トラブルが発生したかどうかも分からない。だから、連絡をとりあうような体制を作った方がいいのではないか、という考えもある。
というか、前述した、墜落事故で死んでしまった研究者とか、非接触保護についての論文書いたら、脅迫受けるほどの反感買ったりしたらしい(それで共著者は口を閉ざしてしまっている)。なんか闇が深い。

フロントランナー挑む 惑星形成の謎を解き生命の起源に迫る   坂井南美(理化学研究所


惑星形成の進み方は、どの星系でも大体同じだと考えられていたが、実はそうではないのではないかということを発見した方へのインタビュー
惑星形成理論の新展開みたいな話もすごく面白いけど、この人のマスターの頃からバリバリやってた感じもすごい
ガス円盤の中の物質の化学進化の違い

NEWS SCAN

沖縄科技大がトップ10入り
死の海の生物

死海に細菌が生きていたかも
火星の環境に近いかも

自家発電ペースメーカー

心拍で発電するペースメーカー

カメの絶滅はスローに見える

カメは長生きするので、個体の減少がわかりにくいという話。卵の数は減ってて、このままではやばいという状況でも、個体数がすぐには減らないので法制度上、保護すべき生物ということになかなかならない、と

宇宙ステーションで1年

ほぼ1年ISSに滞在し、地上にいた双子との比較研究をしている宇宙飛行士へのインタビュー
「宇宙にいる時間が長くなるほど、戻ってきたときに生じる症状が重くなる」と答えている

From nature ダイジェスト デニソワ人化石をチベットで発見

高地への適応にデニソワ人の遺伝子が関係?

nippon天文遺産 野辺山ミリ波干渉計