『日経サイエンス2019年7月号』

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特集:ブラックホール撮影成功

地球サイズの電波望遠鏡で一般相対論を検証

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イベントホライズンテレスコープ(EHT)について
ブラックホールの実証としては、これまで重力波による観測があったが、
重力波観測は、動的な重力場であり、恒星質量ブラックホールが対象
EHTは、静的な重力場であり、銀河中心の巨大ブラックホールが対象


EHTで撮影された画像には、光のリングが映っているが、これは降着円盤ではなく、そこから発せられた光が時空の歪みによってブラックホールの周りをまわっている光
EHTで、降着円盤やジェットは映っていない。これは、技術的な限界でもあるし、予想以上に光のリングが強い電波を放っていたということでもある。
この光のリングというのは、実は、ブラックホールの周囲を球状に覆っている光=光子球
光子球の縁の光がぐるっと回って観測者の方に向かってくるが、中心の光は別の角度へ曲げられているので、観測者の方には向かってこない。だから、中心は暗くて、リング状に光って見える。
この光のリング、実は、『インターステラー』のブラックホールにも描かれている。
あの映画でのブラックホールの映像で、土星の環のようになっているのは降着円盤。丸い輪の中の内側の環が、この光子球によるリング、らしい。
ブラックホールは回転しているのもあって、『インターステラー』のようにきれいに丸くは見えない(あれは分かりやすくするために変えているらしい)
今回撮影された奴も、下の方が広がって見える。あれは、おそらくは回転による(ただし、本当に回転によるものなのか分かるほど、解像度がよくないみたい)


干渉計というのは、干渉実験で干渉縞ができるのと同じ、干渉縞から波を
各地からデータを集めているのだけど、その中には、南極もあって(ただし、ブラックホールの観測ではなく、較正用の天体を観測していた)、船でデータを運んでくるから時間がかかったらしい
従来法、日本の新手法、アメリカの新手法の3つの手法を用い、それらを合成し平均をとったのが、公開された画像
日本の新手法は、スパースモデリングという手法を使っている
スパースモデリングは、天文学だけでなく色々なところで使われている技術らしい

銀河中心の巨大ブラックホールを観測

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ブラックホールを観測して何が嬉しいかというと、活動銀河中心核の正体が、ブラックホールだということが確かめられたこと
ブラックホールはジェットを放出しているが、今回、そのジェットの根本が撮影され、メカニズムの解明につながることが期待されていた
ところが、予想に反して、ジェットは写らなかった
ジェットのエネルギー源は一体何なのか、という問題があって、降着円盤か、ブラックホールそのものかというふたつの仮説があり、ジェットの根本がどこから伸びているのか見えれば分かると考えられている。
もし、ブラックホールそのものだとすると、ブラックホールからエネルギーが汲みだせるかもしれないということで、えらいこと
ジェットが写らなかったのは、望遠鏡の配置がまばらだったからではないかと
今後、東アジアVLBIネットワークという、ブラックホールは撮影できないがジェットは撮影できるのが計画されている
また、EHT自体、グリーンランド、フランス、アメリカの望遠鏡を加えて、高解像度になる計画で、他に、動画を撮れるようにするというのもあるらしい。
動画撮影・高解像度化によって、今回画像が公表されたM87だけでなく、天の川銀河のいて座A*の撮影を目指す

特集:顔 その役割と進化

あとで読む

陰謀論が広がる理由

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心理学実験で、自分で状況を制御・コントロールできていないという感覚が強いグループほど、陰謀論を信じやすくなるという結果が出ている
また、同じく、疎外感が強くなったグループほど、陰謀論を信じやすくなるという実験も行われている
自分の状況が悪くなっている、社会が悪くなっているという感覚が、陰謀論を信じる心理的傾向につながる。しかし、陰謀論を信じたところで、事態はよくはならないので、ループにはまっていく。
ところで、陰謀論を信じている人に対して、それが間違っていることの証拠を突きつけても依怙地になって「逆効果」になると言われてきたが、実はそうではないと
陰謀論の信者に対して、その説の矛盾点などを説明すると、次第に信じなくなるようになるらしい
(「逆効果」になるのは、本人のアイデンティティに関わるようなところを刺激してしまった場合)
その論の証拠は何か、その証拠のソースは確かか、その証拠から結論を導く推論はどうなっているかが、陰謀論に騙されないようにするコツ

離散数学で若手輩出 次は基礎研究の強化:河原林健

ネコは自分の名前を聞き分ける

それぞれ、内容もそれなりに興味深いものだったのだが……
上の河原林さんについての記事、一番最後に、休日は言うことのきかない生き物であるネコと遊んですごしている、みたいな文でしめられていて
で、ページをめくると、ネコの記事が出てくる、という並びになっていたのが、面白かったw


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記事の半分くらいが、上のページで読める上に、誌面では見ることのできない動画も見れる
なお、上のページに載っていない後半は、ボストン・ダイナミクスのスポット・ミニについて