自分にとって後輩にあたる文芸同人サークルaBreの9周年号
9年で一度活動休止するとのことで、久々に読んだ
自分の場合、筑波批評が事実上の活動休止状態に陥っているので、ちゃんと、一旦区切りをつける旨宣言している点は、偉いなあと思ったり、羨ましいなあと思ったりするところ。
穂坂一郎「第五の法則――図書館叛乱」
背川有人「小鳥の歌」
輪島融「たかが九年」
ゆるぎ俊哉&此礼木冨嘉「ロックバンド『雨天教室』のミニアルバム『ジャポネスク』によせる掌編四編」
秋梨「NoBODY knows」
背川有人「灰色の手紙」
牛濱知昭「花のこぼれる」
ゆるぎ俊哉「Life is...」
穂坂一郎「大好きなあなたへ」
垂崎依都「鉛筆よもやま話」
ナインイヤーストーリーズ
9年をテーマにした掌編
- 穂坂一郎「第五の法則――図書館叛乱」
図書館システムの暴走によって、図書館化してしまった日本列島が舞台のボーイミーツガール
一体何だったんだ、これ?!
- 背川有人「小鳥の歌」
ピアノの先生の元に通う「私」の先生への想いと、先生が愛した鳥
一番よい作品だったように思う
- 輪島融「たかが九年」
9年間離ればなれになることになってしまった男女。どこか楽観的な男と、9年間という長さに怯む女と、どこか噛み合わない会話。
最後に、9年離ればなれになるというのが何によってなのかということと、この2人の関係が一体何なのか、ということが明かされて、会話の意味が分かるようになるという、まあオチありきの話。その点では、うまい。
- 秋梨「NoBODY knows」
9年に1度、ハードウェアの制約で記憶がリセットされるヒューマノイドを描いたショートショート
SF的な理屈ではなくて、しみじみとした雰囲気をこそ重視しているあたり、「ショートショート」って感じがするし、秋梨作品っぽい感じがする
てがきの原稿
手書き原稿をそのままスキャンして掲載しているという意欲的な企画だが、それゆえに(字が汚いとかそういう意味ではなく、活字ではないというただそれだけで)読みにくく感じてしまって、あまり読めなかった。すまぬ。
- 穂坂一郎「大好きなあなたへ」
ラブレターと日記(?)をそのまま載せているというていの作品で、手書きであるという企画の形式とマッチしていたのがよかった。
登場人物というか語り手が2人いて、それを筆跡の違いで(も)示している。