人狼

韓国・実写版の『人狼
Netflixで配信されいていたので見た。日本語字幕で見たが、吹き替え版も用意されているらしい。
プロテクトギアによるアクションシーンが見事に実写化されていて、見応えある
欲を言えば、日本でも劇場公開してほしい。映画館で観たいシーンがいくつもある作品。
基本的にアニメ版準拠のストーリーではあるのだが、最後が改変されており、簡単に言ってしまえば、犬の物語ではなく人間の物語になっている。
というわけで、ガワとしてはケルベロス・サーガだが、根本の部分では決定的にケルベルス・サーガではない。


南北統一がなった近未来の朝鮮半島が舞台
日米中露の外圧により、景気の悪化した朝鮮半島において、反政府運動が激化し、テロ活動を行う「セクト」が生まれる。そして、武装した「セクト」への対抗策として、政府は「特機隊」を設立。
しかし、当初、功を奏していた特機隊であったが、その攻撃的な在り方が国民の反発を買うようになり、無実の少女たちを銃殺することとなった「血の金曜日事件」以降、特機隊はいよいよ武力闘争・権力闘争へと明け暮れるようになっていった。
というような背景説明が、例によって、なされるところから始まる。


火炎瓶の飛び交うデモとその鎮圧に駆り出された機動隊、からの、セクトによる銃撃戦と特機隊出動、下水道での戦闘シーン、少女の自爆
このあたりの、近未来の韓国を舞台にしたことによる、ほんのりとしたサイバーパンク感がよい。サイバーパンクといっても、サイバー要素はもちろんゼロで、近未来なので液晶ディスプレイとかそういう現代の技術はありつつも、景気と治安の悪化で薄暗い雰囲気になっている街並みのパンク感と、セクトや特機隊の雰囲気があっている


カン・ドンウォン演じる特機隊員のイムが、自爆した少女の姉だというイ・ユニと出会い、互いに惹かれていくが、ユニは実は元セクトで現公安のスパイ、だと。
イム=アニメ版の伏、ユニ=アニメ版の雨宮圭
で、アニメ版の辺見にあたるのが公安部次長のハン、塔部にあたるのがチャン
チャンは、『鋼鉄の雨』 - logical cypher scape2北の工作員を演じていたチョン・ウソン。開始早々、見たことある顔が出てきたのでちょっとうれしくなったw
教官は、やはり強い
逆に、ハンは何というかお間抜けというか、見ていて途中から「ハン君」呼びしてたw
ハン君は、元特機隊員で、イムととともに「血の金曜日事件」時にいたのだけど、イムは隊に残り、ハンは隊を去り公安へ
ハン君、別にめちゃくちゃ間抜けってわけではないけど、作戦失敗したあとに上司に呼ばされてでどうすんだって怒られた時に、「ユニが追跡装置を持っていて、スイッチを押すはずなので、そうすればどうにか」みたいなこと言っちゃうし、「責任とる気はあるのか」って聞かれて「とります」って答えたら「愚かな奴だな」って言われちゃうし、そのあと、公安がとっつかまえてきた特機隊員に尋問するも笑われちゃうし、拷問に切り替えたら死なしちゃうしで、ここらへんの「ハン君、大丈夫か~」感がハンパない
で、最後の最期に「俺とお前が何が違うっていうんだー」となって、「ハン君、お前~」ってなりますw

イムを演じるカン・ドンウォンの、あの何ともいえない目が、犬っぽくて、なかなかよいんだけど、でもまあ最後の展開的に、イムは結局犬じゃなくて人間だったんだよなー
あと、この映画、「犬」という言葉は出てこなくて、人間的ではないという意味で隊員のことを言うときは「獣」って言っている
なので、意図的に犬の物語ではなくしてしまっている。
凄惨な事件を機に人間性を失ってしまった青年が、裏切りに裏切りが重なる謀略の中で、しかし、人間性を再び取り戻していく、というまっとうな物語になっている


アクションシーンとしては、冒頭のデモシーンからの対セクト戦があって
それから、訓練施設での模擬戦。模擬戦だけどバンバン吹っ飛ぶ、というのが特機隊みがあってよい。そして、教官が強い
で、ハン君の作戦が、セクトの女戦士によって妨害された結果引き起こされる、タワー展望室での、イムvs公安の人たち
展望室に置かれたパネル展示を遮蔽物とした戦闘が、訓練施設での遮蔽物を使った模擬戦の上位互換的なものになっているのだが、あらかた対人戦闘が終わった後に、今度は戦闘用ドローンがやってきて、遮蔽物を全部なぎ倒していくのが、ドローン怖ぇってなってよい
対人戦闘の時に、イムが何気なくぬいぐるみを取っていくのだけど、結局使わないとかちょっと面白い。
脱出後、タワーの下の駐車場でさらにもう一回vs公安戦
イムによるダイナミック乗車は、今まで見たことないような奴ですごい
でもって、人狼の一員であることが明らかになったイムが、下水道で公安を皆殺しにしていくパート
公安の特殊任務部隊が出てくるのだけど、この人たちが、いい具合にチンピラ感のある見た目をしており、ヤクザ映画の皆殺しシーン的な雰囲気すら漂ってくる
下水道シーンは、プロテクトギアの装着から始まり、赤い眼光の残像シーンなどがあったり、機関銃掃射もあれば、ロケットランチャー効かなかったり、完全防弾の盾でぶん殴ったり、とプロテクトギアをご堪能くださいって感じであり、よいところ。大画面でも見たかったが。
一番最後には、イムと教官の1対1、プロテクトギアで殴り合い戦闘シーンもある
いやあ、あそこでタイマンはってくる教官は、ほんといい人だよな~
いい人すぎる


ラストシーンは、繰り返しになるけど、犬の物語ではなく人間の物語になっているので、「え、生きてるのか」とか驚くし、「解釈違い」って気分にもなるが、まああれはあれで、妥当っちゃ妥当な終わり方ではある。
感想を検索してたら、誰かがそう書いているのを見かけたんだけど、ラストシーンでユニが弟と一緒に向かっているのは北朝鮮らしい。
まあ、確かに南にはもういられないだろうしな、とは思うけど、そうするとあれはあれで複雑なエンディングなのかなーと思ったりもするけど、そのあたりはよくわからない。


同じく感想を検索して知ったのは、ED曲がアニメ版と同じ(?)らしい
観ながら、「この曲、押井作品テイストあって好みだな~」と思っていたんだけど、アニメ版がどんな曲だったのかはさっぱり忘れていた


韓国において、南北統一とかが、どのように文化的に表象されているのかということについて全く無知なのでよくわからんけど
「南北統一反対ー」ってデモががんがん描かれているのが、興味深かった。どういう感じで受容されてんだろうか、と