スティーブン・ミルハウザー『魔法の夜』

コネチカットのとある町のとある夜について描いた中編小説
ミルハウザーは以前スティーヴン・ミルハウザー『バーナム博物館』 - logical cypher scapeを読んで面白かったので、他にも何か読んでみようと思っていた。役者あとがきで「ミルハウザー入門に最適」と書かれていたので手に取った*1
暑いと暖かいの間くらいの夏の夜、12時くらいから明け方までの時間帯に様々な登場人物たちが織りなす出来事を断章形式で綴っている。
ほとんどの章が1〜2ページ、長くても6ページくらい
登場人物には、ティーンエイジャーの少女や中年男性もいれば、ショーウィンドウに飾られたマネキンやおもちゃの人形たちもいる。
彼ら・彼女らが夜をどのように過ごしていったかが描かれる。ときに、交錯することもあるが、基本的にそれぞれの話がそれぞれ独立して進んでいく。



主な登場人物はこんな感じ

  • ローラ

14歳の少女。何かに縛られている感じがして、夜中に家を抜け出す

  • ハヴァストロー

39歳の中年男性。実家暮らしで職を転々としつつ、未完の小説を書き続けている。夜は、ミセス・カスコの家にいったり散歩したりしている

  • ミセス・カスコ

60代の女性。若い頃からハヴァストローの知人。(夫ある身でありながら)密かにハヴァストローに思いを寄せていたことがあるが、一線は越えなかった。
訳者あとがきに、訳注もあわせて載っているのだが、それによれば、カスコの持っている本などから、彼女が保守的な心性の人だと言うこと分かる、らしい。
実際、ハヴァストローが色々喋っていることに対して、ちょっと諫めてたりするようなところはある

  • マネキン

夜中、突然動き出す

  • クープ

マネキンに恋する男性。酔っ払っていたときに、マネキンが動いているところを目撃する。

  • ジャネットと恋人
  • 笛吹きと子ども
  • 〈夏の嵐〉と女の子たち

深夜に人の家に侵入して勝手に飲み食いして、「私たちはあなたの娘です」という書き置きを残して去っていく女の子たちの団
彼女らは互いをコードネームで呼び合っていて、〈夏の嵐〉は彼女達のリーダー

  • 一人で暮らす女

〈夏の嵐〉たちと出くわす

  • ダニー、スミティ、ブレイク

図書館に侵入して猥談する青年たち
ダニーは途中で他の2人と別れる。スミティへの劣等感。月の女神。

  • 人形たち(モコモコ熊、ピエロ、コロンビーナ)

深夜、動き出す人形たち
ピエロのコロンビーナへの片想い

  • 黒髪の男

窃視趣味があり、たまたま見かけたローラのあとをつけている



「すべての名詞はひとつの類(クラス)を名指します」、という文が出てきて、クラスって言葉、わりと日常的な語なのか、と

*1:この手の惹句は実際のところどの本にも書いてあるけど