『夜明け告げるルーのうた』

見事な音楽アニメ
最高に気持ちいい
人から勧められて突発的に見にいったので、ほとんどどんな作品が知らない状態でいったら、開始5分くらいでノックアウトされたw
実を言えば、湯浅作品を見るのも初めてだった……


主人公のカイくんが、自作の曲を動画サイトにアップしているところから始まる。
サンプリングでクラップとかが加わっていくイントロだけで、ワクワク感を掻き立てられる。
彼は、祖父と父との3人で暮らしている中学生なのだけど、家族とも友達ともほとんど口をきかない。だけど、彼の階段を下りるとこ、リズムになっていてよいんですよ
カイのやっている音楽に魅了されて、人魚のルーがやってくるという話で、実際に音楽を鳴らして、ライブをやったり、ダンスをやったりするシーンが何度もあって、これらがとてもよいのだけれど、
それだけではなく、うまく説明はできないのだけど、全体的に音楽っぽい作品だったな、と。
カイが階段を下りるところや、町内放送といったものが、反復を伴って現れることもあり、日常シーンにおいても、作中にリズムを生んでいた、というか。


それはそれとして、やはり音楽シーンが最高で
音楽が鳴ると、町の人たちの脚だけパタパタと動いて、ダンスしてしまうのがすごくいい
カイや遊歩や国男がポーズとっちゃうのもかっこいい
こう言ってしまうと陳腐だけど、まさにアニメーションの快楽というか、音楽にあわせて絵が動きまくるのがひたすらきもちいい
語彙力がひどいけど、これどうしても、動きとかの話なので、正直、1回見ただけではとてもじゃないけど自分には記述できない類のもので
まあ、言語化するしないは別としても、普通に、もう一回見たいなあと思わせる映像だった


音楽と映像がとにかく最高なわけだけど、
では、ストーリーとかはどうかというと、あらすじや設定については、後半になるにつれて、ちょっとよくわからなくなる部分はあって、整理しきれていないところがある感じはある。
とはいうものの、後半の展開で、泣いてしまったのも確か
終演後、帰る人たちのなかにも、そっと目をぬぐっている人を見かけたりした。


ルーの見た目的に、ポニョっぽいところはあるのだけど、ポニョとどう比較すればいいのかは難しい。
ポニョっぽいといえばポニョっぽいけれど、比較するのがあまり適切ではない気がする。
ただ、ポニョが明らかにわけわからなかったことと比べると、こちらは非常にわかりやすいというか、かなり、誰が見ても楽しめるような作品になっていると思う。
実際、自分が見た回は結構、客層が幅広かった。


あらすじとしては、
日無町という海辺の町が舞台で、この町は巨大な岩によって常に日陰となっており、そこの内浦での漁業が主な産業となっている。
主人公のカイが実は音楽をやっていることを知った、同級生の遊歩と国男は、カイを自分たちのバンドに誘う。
遊歩は、町一番の水産会社の社長の娘なのだけど、バンドデビューしてこの町を出て有名になりたいと思っている。
国男は、遊歩と一緒にいたくてバンドをやっている少年。住職の息子で、バンドをやっていることは秘密にしている。
この町には古くから人魚の伝説があって、カイの祖父はかつて人魚に母親を殺されたと信じており、カイが海に近づくのをよく思っていない。
遊歩と国男に無理やり連れられて、人魚島でのバンド練習に参加することになったカイは、人魚のルーと出会うことになる。
天真爛漫なルーと親しくなるにつれて、カイも次第に快活になっていく(ルーとの夜のデート!電車の光を指でなぞるルーかわいい)
しかし、町の慰霊祭イベントで、ルーとともにライブをやったことで事態は変わっていく。
遊歩の祖父を中心として、ルーをつかった町おこしをしようという話が盛り上がり、人魚ランドがオープンすることになる。
ルーの父親も、人間に姿を変えて(?)町を訪れるようになる。
一方、光を浴びると燃えてしまう人魚の体質のため、カイはルーが人目につくようなところに出るのに反対し、再び閉じこもりがちになってしまう。
そして、遊歩の失踪(本当はただの家出)を機に、今度は逆に、人魚は危険であるという声が大きくなり、ついにルーは、遊歩の父親に捕らえられてしまう。


最後の方は、「その呪いというのは(人魚の呪いでないとしたら)一体どういうものだったの」「ルーパパの中のたくさんの顔は一体……」みたいな謎はでてきたりするのだけど、まあそのあたりはちゃんとは分からなくてもよい範囲かなとは思う
おじいちゃんをはじめ、漁師たちが傘をばばばっと開くシーンがぐっときたなあ
町内放送をやっている先輩が、遊歩に「ゆっくり区切って喋るんだよ」って喋らせるのが、なんともうまく説明できないけど好き。寿美菜子伊藤静


この記事の冒頭に書いた、カイの作っている曲
あれ、何回か流れるのだけれど、イントロの部分だけで結局、フルでは流れずに終わる。
最初は、「あ、これきっと最後になってフルで流れて感動する奴だ」と思っていたのだが、結局流れず。
これについては、trickenさんが

「流れる音楽の大半のグルーヴが中途で止まってしまうことによって、作品のリズムが未来の方向へ勢いよく押し流されていく」という、凄い時間芸術が展開されていました。観劇後に本当にほしかったのは、途中で遮られた打ち込みサウンドのトラックが入ったサントラですよ。完全にお預け喰らった音楽犬。
https://twitter.com/tricken/status/870979409636806656

と書いていて、なるほどなあと思った次第。
それとは別に、カイの変化として、結局あの曲は流れなかったのかなとも思う。
カイば最初、サンプラーとPCを使っているのだが、父親が昔やっていたバンドのテープを見つけてラジカセを使うようになり、最終的には、祖父が使っていたウクレレを使うようになる、という変化がみられる。
自分で歌は歌わず、クラップなどをサンプリングしていただけが、最後にはウクレレ一本で自らの声で歌うようになる


全編フラッシュアニメーション


何か思い出したら、以後追記する感じで


口の形が変わったりするのは、初期ディズニーとか狸合戦ぽんぽことかそんな感じか
ビーチでのダンスシーンや、最後に出てくる人魚の眷属なんかは、何となく佐々木マキっぽいのかもなと感じた。


パンフレットを読むと、最初はヴァンパイアという設定だったとあって、噛むと人魚になるってそういうことか、と