第22回文学フリマ東京感想

twitterに書いたもののまとめ
twitter(140字)で書いてるので、ところどころ文が中途半端になってるけどそのまま(一部、書き足してる箇所もあり)


文フリの小説が、ちょっと見ないうちに製本のレベルがあがってるなー、というか文庫サイズの本増えたナなーという印象を受けた。昔はコピー本ばっかりだったのに(それはさすがに昔すぎ)

重箱のカド『犯罪の重』

犯罪をテーマにしたショートショート集。4人で30本という分量。まだ、最初の方しか読んでない(juliusの章其の一まで)けど、星新一的世界観でおもしろい(ショートショートに対して星新一っぽいって感想、語彙力ないにも程があるけど) 
ペルファポイウェンズベペ内閣白書は、九井諒子っぽい
おまけペーパーである、MONADO-METAL「崇高にして、もっとも優美」、クソ笑ったww
MOA美術館とか、優美にして誠に勇壮=YMY=ゆいちゃんまじゆいちゃんとかアホでしょw
江戸川乱歩二次創作なんだけどね

スペクターズ『二つの太陽がまた輝くとき』

ソラリスアイカツ、モー娘、ゆゆ式、プリパラ、アイマススパロボをかけあわせた合同誌。会場で見かけたときは、「うわ、またカオスな」と思ったが、2015年11月発行という奥付を見て、その時期にソラリスゆゆ式の奴が出るって告知を見てふぁぼってたことを思い出した
アイマスのがやばかったっす。作者あとがきに「アイドルマスターおよび天海春香の恐怖を伝えたく参加しました。(略)アイドルマスターには深く関わらないほうがいい。私からは以上です」とあるけど、まあそんな感じ。アイマスアイカツもプリパラも同居してる世界観好き 
しかし、唐突に宇宙ステーションに島村卯月がいても、なんか違和感ないのがアイマスだよなー。俺の側の問題かもしれないけど。アイカツは、宇宙ステーションというシチュエーションに対して、7年後の風沢そらを持ってこないといけないけど
プリパラの、一つだけフォントサイズ変えて、イラストを入れて、各キャラの一人称でやってて、「それは石だろ」っていうくだらないダジャレとか、ウサギとクマに対する仕打ちとか非常によかった

『ムゲンノホシゾラ2015winter』

まさか文フリでぬーのインタビュー買えるとは思ってなかった。pp.16-17のぬーかわいすぎ

カモガワSFシリーズKコレクション『稀刊 奇想マガジン創刊号』

創作と翻訳を先に読んだ。伴名練の「聖戦譜」は25代目文芸部部長による文芸部の歴史だが、人類と寡族との戦いとしての文芸部の活動と部内の抗争が描かれていて超楽しいw

『Mercaβ03』

細馬・泉・岩下・高瀬の「マンガと音」座談会は、『月影ベイベ』の話から「錯覚」と「擬装」の話の下りが興味深かった。物語世界で鳴ってる曲を聞かせるのではなくて、マンガにおけるリズムを感じさせるのがマンガの音楽
ここらへんの、再現されているわけではないけれど、何か別様に再現されているもの、というか。そういうフィクションならではの、メディアの特徴に応じて描かれている何か、というのは、やはり自分にとって一番興味あるところであって。「分離された虚構世界」とはそういう関心から生まれた概念である。
小森・坂上・高瀬のAIR座談会は、「え、AIRなの」と思ってしまったけれど、読んでみると結構おもしろかった。山本寛再考のあたり。
木澤論文は、アニメのコマ打ちから知覚されないリズムを見るというのは興味深い話だったのだけど、何故ドゥルーズ、何故この文体、という感じはした。あの文体嫌いじゃないし、批評っぽいなーとは思うけど。
あと、木澤論文は、前半が『かぐや姫の物語』の輪郭線と『がっこうぐらし!』の作画崩壊から、亡霊→器官なき身体を論じたのち、アニメにおけるもう一つの器官なき身体の例として、知覚されないリズムについて論じるという構成になっているのだけど、この前半のキャラの話と後半のコマ打ちの話がどういう関係になっているのかが分からないのが残念だった。どちらもそれぞれ面白そうな話題なんだけど、なんでドゥルーズなのかが分からなくて。
濱崎論文はエロマンガ論で、これはこれで面白い話なのだけど、自分はよくわからないジャンルでもあるので保留

fromH『invert vol.3』

Latte「愛するということ」は、どこまでがフロムの考えでどこからが筆者の考えなのかが分かりにくかった。
河辺一花「プルーストの肖像」はプルーストの生涯がまとめられていて、普通に勉強になったしおもしろかった。
技・知パートが一番面白かったかな。
高光論文は、筆者本人の個人的に抱える問題と関心が噛み合っててとても面白い。ただ、冒頭がよくない。この始まり方は最悪といってもいい。それに続く病気の話が、言っちゃなんだがめちゃくちゃキャッチーなのでそっちを冒頭にするべき。
Zircom論文は、ファジー論理と直観主義論理を紹介して、人間らしい論理とは何かを探るもの。なんか、排中律がないことが人間らしい論理の特徴と言おうとしているのかなーと思いながら読んだけど、最後に「それは怪しい」と書かれていたので、結局結論がどこにあるのかはよく分からなかったし、またファジー論理や直観主義論理に人間らしい論理を見ることの妥当性自体は自分には判断できないが、まあここらへんは思い切り哲学の範疇ではないのかなと思うので、もう少し哲学を掘ればいいのではないかなと思った。
あと嘘の扱いについては、疑問。嘘をつくことによって、信頼性が変わって、命題の真理値が2値ではなくファジーになっていくみたいなことが書かれているのだけれど、嘘をつくことによって信頼性が変わるのは発話者の方ではないのかな、と。なんか、あたかも命題が嘘をついているかのような書き方だったけど。嘘をついてるのは発話者の方だし。
makochan論文の感想、天文学の科学哲学は面白そうだよなー。堀論文の感想、やったーSFだー(雑ですまん)。 あと、今西・伊丹対談は、映画観客論

現代文化研究会『F2016年春号』

通巻17号かー。いつも言ってるけど、それだけ続いていることがすごい。自分の文フリ初参加と現代文化研究会の初参加が同じだったはずだから。
冨田涼介「成熟と滅び――宮崎駿風立ちぬ』論」が一番おもしろかった。火と風の対で、『風立ちぬ』と『風の谷のナウシカ』を比較してる。未成熟な存在の夢を実現化しようとすると暴力が招かれる。それをどう生きるか(単に滅びではなくて、そこ生きることが描かれているのが『風立ちぬ』だと)。
庵野秀明の不気味な声」という言い方がちょっと面白かったw
あと、矢野利裕「アイドル・ラップをめぐる問題」アイドル・ラップって恥ずかしながら、この前リリスクを見るまで全く知らなかったところ。アイドルとは、未熟さを愛でるもの式の言説に対して、いやそうじゃない魅力があるでしょと迫る。
その直前に配置されてる田村祥子「ポップでハッピーな彼らの未来」は、しかし、わりと素朴に、未熟さいいよねみたいな話になっているが。しかし、ジャニーズの話は、多分もっと面白く論じられるはずなので、もったいない感。論文本体より後ろの10選の方が、その点ではよい
まず、男性アイドルって、ジャニーズ以外もいないわけじゃないけど、ジャニーズに寡占されていることと、その上で、ジャニーズってあまり「卒業」しないので。表向き、アイドル以外の仕事やってるけど、アイドル業も続けているわけで、HEY!SAY!JUMPだけでなく、他のジャニーズタレントと比較した上で、ジャニーズにおける「未成熟」って何なの、という論はありえたのではないか。
「卒業」との関係とか。巻頭論文はちょうど地下アイドル扱ってるし。巻頭論文、ウェブ小説まとめ、地下アイドルまとめ、婚活エッセイ漫画まとめとしては、自分がそれぞれについて知らないこともあってよかったけど、なんでその3つをまとめたのかが分からなかった

反社会人サークル「ロウドウジン」

長く続いててすごいなーというとこちらも
ゲムマに参加していたのはなんとなく知っていたけれど、ゲーム作ってみた紙面見て、塚田君あたりがやりたかったことではないかなーと思ったり(筑波批評でゲーム作ってみるかという話が実は以前ちょっとだけあった)
昨日も書いたけど、反社会人アイドルを毎回どこから連れてきてんのか分からないけど、すごいw 今回、ゲーム号と擬人化号買ったけど、もみじさんのあの軽さが反社会人アイドルっぽい。
ロウドウムービーへの道や反社会人コラムも好きです

ククラス『ビンダーvol.3』

買ってから気付いたけど新刊じゃなくて既刊だった。1年くらい文フリ行ってなかったらな。
ゴダールgdgd妖精sってどういうこと?! と思ったけど、序論で完全に納得させられた。
ゴダールのこともやっぱりよく知らないので、普通に勉強になったのと、3Dで右目と左目に別の映像うつす作品ってどんなんだろうなーと気になった
tacker論文は、「アニメのフリをすること」に着目することとてさぐれ二期序盤を例に挙げて、生を高揚させることを表現者の倫理として論じることによって、すぱんく論文は、声優のgdgdトークの笑いと間をダテコーが巧みに編集していることを挙げることで、ダテコー作品のよさをうまく論じていると思う。
ところで、ダテコー作品の話になるとよく、声優は喋りやお笑いについては「素人」でってなるの多いけど、実際どうなのとは思うところで、まあ確かにプロではないにしても、ラジオで喋るのは、第二の仕事みたくなってるとこはあると思うので。
時評は、すぱんくさんのキッズアニメの見て、「おー、やっぱりキッズアニメの人って決算見るんだー」って思ったのと、文芸時評で書いてあった、原因と結果の順番をどう書くかについての「文学的な書き方」の話が面白かった
連載は、noirse「21世紀映画論」をとても面白く読んだ。ポスト・メディウムとか渡邉映像圏論とかも繋がる話だと思うんだけど、『インセプション』のテレビ放映時のテロップの指摘について、特になるほど、ハイブリッド芸術の話でもあるんだなと。映画の中に映画以外の形式(ゲームとかパークとか)が入ってきているという話。
連載はあと、永田希「「全世界音楽史」も読んだ。クーペ・デカレってどんな音楽だろうと思ってググったら、永田さん自信のツイートがヒットした。

その他

あと、『アニクリ』(岡田磨里特集)と『余白のR』(大学特集)と『エクリオ』(テン年代小説特集)と『歌声よ、月の裏側から届け』(千早SF)、『斜陽の国のルスダン』(13世紀グルジア小説)が未読で残っている。これらの感想はまた後日。