土屋健『そして恐竜は鳥になった』(小林快次・監修)

タイトルどおり、恐竜が鳥になった過程などを追う形で書かれた、恐竜の入門書。
ハンディで、なおかつフルカラー

第1章 食べ物の変化
コラム1 学名のルール
第2章 子育ての変化
コラム2 発見と発掘の現場
第3章 翼の変化
コラム3 始祖鳥は、カラスのように黒かった?
第4章 鳥の誕生
コラム4 植物食と草食のちがい

第1章 食べ物の変化

食性の話をしている第一章では、胃石の話が特に詳しくされていた。
「胃石を持っている→植物食」、と即座に言えるわけではなくて、さらに条件を絞らないといけないというのを知って、目から鱗
ワニは、バラスト(重り)として胃石を飲んでいるらしい
それから、鳥類の場合、植物をすりつぶす用途だけでなく、カルシウムの補給源としても使っている
胃のあたりから石が発見された場合

  • 化石になる過程で、たまたま石がその場所にたまった可能性
  • バラストとして使われた可能性
  • カルシウムの補給源として使われた可能性

これらをつぶした上で、ようやく植物食の証拠といえるようだ。


獣脚類というと、肉食恐竜というイメージだが、テリジノサウルス類など植物食もいることが知られている。ただし、テリジノサウルスは、植物食ではあったが胃石はなかったらしい。消化を胃石に頼らずに行うため、腸が長くなり大型化したとか。
近年、胃石があって植物食とされる恐竜が様々な獣脚類のグループから発見されているらしい。
それにより、「胃石の進化」も分かってきている。
進化的な種になるほど、胃石の大きさが小さくなり、数が多くなっていっているらしい。
そして、これが鳥類になると数も減る。空を飛ぶためには重さを減らさないといけないので胃石の数が減るのは当然だが、それより以前に胃石が小さくなっていたために、植物をすりつぶす能力をある程度維持しつつ、重さを減らすことが可能になった

第2章 子育ての変化

第二章は、子育てという観点から、鳥と恐竜の関係を探る
子育てにおいて、恐竜は既に鳥類の特徴をもっていた

  • 父親による子育て

鳥類の90%が父親が子育てに関与している。これは鳥類だけに見られる特徴
恐竜において雌雄はどう判断するか

    • 卵の総体積

鳥類において、メス単独や両親が子育てするより、オス単独で子育てする方が、総体積が大きくなる
→トロオドン、オヴィラプトル、シティパティで、オス単独で子育てするケースに近い

    • 骨髄骨

鳥類のメスが、卵のためのカルシウムなどを供給するための骨。また、ワニのメスは骨が溶けだす。
抱卵している恐竜の化石から、骨髄骨や骨が溶けだしたあとはみられなかった。
骨髄骨で雌雄を見分ける話は、「大恐竜展―ゴビ砂漠の驚異」 - logical cypher scapeの図録にも載っていた

  • 卵の構造

空気交換をする孔の数。土の中に埋める爬虫類は数が多い、空気中にさらされている鳥類は数が少ない
多くの恐竜の卵は、孔の数が多いが、トロオドンの卵化石は、孔の数が鳥類に近かった。半分だけ卵を埋めていた

  • 卵の形

鳥盤類や竜脚類の卵は円形、獣脚類になると楕円形。獣脚類の中でも鳥類に近いトロオドン類と鳥類は、非対称形(一方が細い)

第3章 翼の変化

第三章は、羽毛の話
羽毛恐竜
1996年:シノサウロプテリクス
1997年:プロトアーケオプテリクス、カウディプテリクス
1999年:テリジノサウルス類、ドロマエオサウルス類でも羽毛発見、2004年にはティラノサウルス類のディロング発見
2003年:ミクロラプトル・グイ。4本の脚に翼


羽毛の種類
「原羽毛」ないし「プロトフェザー」:チューブ状。ウロコが変化したもの。シノサウロプテリクス
「正羽」:羽軸を境に前後の面積が同じ。カウディプテリクス。現生鳥類の尾羽や体羽
「風切り羽」:羽軸を境に前後非対称。ミクロラプトル。現生鳥類の翼。


羽毛の役割は何か
→保温のためと考えられているが、2012年、ユティラヌスの発見でゆらいでいる。
ユティラヌスは7〜9メートルと大型なので、羽毛で保温する必要がない
羽毛の役割というと、最近こんな記事があった。→
dino-paradise.com


翼の起源4つの仮説
(1)飛行のため
(2)武器として
(3)走行時のバランスをとるため
(4)繁殖行動のため
2012年、羽毛のあるオルニトミムス発見(北米大陸初の羽毛恐竜。それまで中国に集中していた)
これまで発見された羽毛恐竜のなかで、より原始的
オルニトミムスは飛べる体格ではない→(1)否定
オルニトミムスは植物食→(2)否定
幼体に羽毛がない→(3)否定と(4)支持
抱卵のための羽毛かもしれない


獣脚類の系統樹があったので、メモる
原始的なところから順に、以下のように分岐している
ケラトサウルス類
カルノサウルス類
コンプソグナトゥス類
ティラノサウルス
オルニトミモサウルス類
テレジノサウルス類
アルヴァレスサウルス類
オヴィラプトル類
トロオドン類−ドロマエオサウルス類
鳥類

第4章 鳥の誕生

第4章は鳥の話

  • 飛翔誕生3つの仮説

(1)羽ばたきから
シノルニトサウルス=羽ばたきが可能な腕
羽ばたきの動作ができる動物は限られている
(2)滑空から
ミクロラプトル・グイ
(3)木登りから

  • 始祖鳥飛行問題

始祖鳥は、翼はあるが胸骨や竜骨突起が発達していないので、飛べるかどうかという問題があった
2000年代、CTスキャンによる研究によって問題が進展する
脳の容積→爬虫類の3倍で、鳥類の3分の1と爬虫類と鳥類の中間。視覚神経と三半規管の分析からバランスにも優れていた
肩の分析→羽ばたくことができない
羽の構造→体重を支えて羽ばたくことができない
以上から、始祖鳥は、「滑空」主体で「飛翔」はできなかったとみられる


恐竜から鳥への変化

  • 叉骨の誕生

獣脚類だけがもつ

  • 腕を上下に動かすことができる(羽ばたき動作)

鳥類に近い獣脚類

  • 翼をたたむ動作

ディノニクスの手首。オストロムの研究で注目

  • 足の指の変化
  • 脳の変化

視覚を司る視葉の拡大

  • 始祖鳥のパラドクス

鳥類に近い獣脚類は白亜紀から発見されていて、始祖鳥はジュラ紀から発見されている
化石記録の不完全性から説明される

  • 進化の考え方

植物食性の獣脚類が、肉食動物から逃れるために、鳥へと進化したのか
肉食の獣脚類が、より突出するために、鳥へと進化したのか
鳥類誕生に限らない進化における選択


白亜紀末の大量絶滅では、恐竜だけでなく、鳥類や哺乳類も大打撃をうけている

コラム4 植物食と草食のちがい

何故、草食ではなく植物食とするのか
草=イネ科植物
大規模な草原が出現するのは、1800万年前
イネ科植物は、「プラントオパール」というガラスのようなものがあって、それで「武装」している。
草原出現は1800万年前だが、プラントオパールを含む糞化石はあるので、草食恐竜はいたようだが、草以外の植物を食べてた恐竜が多いだろうから、草食より植物食と書く方が正確


恐竜研究は、近年多くなっている生物学的アプローチと、伝統的な地質学的アプローチの2本柱。


そして恐竜は鳥になった: 最新研究で迫る進化の謎

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