佐藤翔「ビジビリティの王国――人文社会系学術雑誌という秘境」『DHjpNo.4 オープンアクセスの時代』

友人のmin2-flyこと佐藤翔の論文

8/12に発売された勉誠出版のムック、『DHjp No.4 オープンアクセスの時代』に、「ビジビリティの王国、人文社会系学術雑誌という秘境」と題して、人文社会系のオープンアクセスに関する話を寄稿しました!
(たしか)「初めてAmazonで買える本に原稿が載った!』・・・と喜んでいたのです
「人文社会系の学協会誌はほとんど秘境。紀要に載った方がネット上では目立つくらい」(【宣伝】『DHjp No.4 オープンアクセスの時代』に寄稿しました!) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか

ということだったので、早速ポチった奴です


そもそもDHって何よってレベルでこの本のこともここで書かれている分野のこともよく知らないけれども、みんつーの奴と他いくつかを読んだ
ちなみにDHっていうのは、Digital Humanitiesの略らしい。
で、特集が「オープンアクセスの時代」

佐藤翔「ビジビリティの王国」

人文社会系でのオープンアクセス(OA)の状況について見てみると、紀要については機関レポジトリを通じて進んでいるが、学協会誌の電子化が進んでいない。
従来は入手しづらかった紀要だが、今ではむしろ、紀要の方が手に入りやすいという逆転現象が生じている。
で、学生や専門家以外(例えばWikipediaの編集者)が、紀要論文ばかりを使うようになっている。無論、紀要論文読まないより読んだ方がいいけど、紀要は学会誌掲載論文のようにクオリティコントロールがされていないわけだから、変なものも混ざっているわけで、紀要論文ばかり読まれるという状況を脱するためには、学会誌掲載論文ももっと電子化進めないと、という話
で、何故紀要が電子化されて、学会誌が電子化されていないか、あるいは何故自然科学系では進んでいて人文社会系では進んでいないか、というと、電子化が進んでいるところでは研究者以外の主体が進めてきた(紀要であれば大学図書館、自然科学系であれば大手出版社)から。

学生はオンラインでみつけられないものは「見なかったことにする」傾向があることが示されている。(...)CiNii Articlesで見つかった論文に本文へのリンクがなかった場合の対応を尋ねたところ、3割以上が「本文が入手できる論文のみを利用する」と回答した。

デ、デスヨネー
俺学生じゃないけど。

岡部晋典「オープンアクセスのスタートアップと現在――開かれた文献とその敵」

サブタイトルから分かる通り、ポパーの話とか出てきて面白かった
あとで、名前をググって、yuki_oさんだと知ったw
OA運動を広める契機となったBOAI(Budapest Open Access Initiative)と、そこに300万ドルの資金を投下したジョージ・ソロス*1について書かれている。
ソロスは、カール・ポパーから影響を受けた投資家・篤志家・哲学者であり、彼の行う慈善事業や資金援助といった活動は、「開かれた社会」をもたらすめたに行われている、と。
で、筆者は、開かれた社会を目指すことやOA運動の方向性自体は支持しつつも、そこにある問題点も指摘している。
その具体例としては、炎上である。かつて、とある紀要論文でオカルトを真に受けた論文があって、炎上したことがある、とか。

阿児雄之「物語 トリセツの取説 製品取扱説明書のオープン・アクセス化はありえるか」

タイトルにあるとおり、物語仕立てで書かれている。
とある資料館で働く主人公は、「あかずの間」で古いPC(9800シリーズ)を見つける。使い方を調べるために、検索をしていくのだが、サポートが終了している製品の取扱説明書はメーカーのサイトには置いていない。
「モノ」は保存されていたとしても、それの付属物としての取扱説明書はなかなか保存されていない、というなかなか気付かない点が指摘されていた。


岡部論文や大向論文では、みんつーの他の論文が参照されていた。

DHjp No.4 オープンアクセスの時代

DHjp No.4 オープンアクセスの時代