大森望編『SFマガジン700【国内編】』

SFマガジン700号を記念したアンソロジー
山岸真編『SFマガジン700【海外編】』 - logical cypher scapeと同時刊行
こちらも基本的には、SFマガジンに掲載されたが、単行本未収録の短編を集めたもの。ただし、古い方の作品は結構すでに書籍化されているものもある。
13編中マンガ3編、エッセー1編となっているのは、大森望っぽいなと思う
既読は1編だった。


「海原の用心棒」が圧倒的に面白かった
あとは「夜の記憶」とか「虎は暗闇より」とか「Four Seasons 3.25」とかかなー

手塚治虫「緑の果て」

地球が滅び、他の惑星を探す人々が辿り着いた星は、人間が望む姿に擬態する植物のいる星だった
1963年掲載

平井和正「虎は暗闇より」

主人公は、交通事故とか何かの事件とかを目撃することに憧れつつも、今まで全然目撃することができずにいた。ところが、ある事故をきっかけに、周囲で不可解な事件・事故がどんどん起こるようになる。
人の欲望を解放するような能力を知らぬうちに身に付けていた。
1966年掲載

伊藤典夫インサイド・SFワールド この愛すべきSF作家たち(下)」

国際SFシンポジウムで来日した際のオールディスやソ連作家たちについてのエピソード
1971年掲載

松本零士セクサロイド in THE DINOSAUR ZONE」

セクサロイド」シリーズのスピンオフらしい
恐竜時代と現代とを行き来するストーリー展開
おおもとの設定がいまいち分からなくて、話自体がつかめなかった
1972年掲載

筒井康隆「上下左右」

見開きを20マスに区切って、その20マスを4階建て20室のアパートに見立てて書かれた作品。
爆弾を作っている学生、互いに不倫している夫婦、泥棒、UFOの着陸を報じるニュース、そして宇宙人と邂逅した小学生などのストーリーが、それぞれの部屋で同時進行で進んでいく
1977年掲載

鈴木いづみ「カラッポがいっぱいの世界」

これ、全然分からなかった
なんか若い女性が何人かが音楽の話を延々してる
1982年掲載

貴志祐介「夜の記憶」

貴志祐介が80年代にSFでデビューしてた人だって知らなかった
aパートとbパートが交互に進む
aパートは、地球とは異なる惑星で生活する海棲動物の話。
bパートは、地球の人類の話で、人格をコピーする前にリゾート地で思い出を作っている話
話が進むにつれて、地球人類は何かで敗北して、滅ぼされる代わりに人格をコピーされて他の星に連れてかれることになったようだということが分かってくる。
bパートの主人公が、aパートの動物になっている
aパートの全く見知らぬ惑星の、生態系などの描写が面白い
1987年掲載

神林長平「幽かな効能、機能・効果・検出」

異星人の遺物が、一体何の目的で作られどのような機能をもっているのか調べる2人組の話
1995年掲載

吾妻ひでお「時間旅行はあなたの健康を損なうおそれがあります」

SFマガジンとの出会いというテーマで書かれた4ページマンガ
1998年掲載

野尻抱介素数の呼び声」

検索エンジンの発達によって、科学者という職業の姿がだいぶ変わっている未来。研究士である主人公とその事務手伝いの女性が、素数の周期で発せられた電波の発信源たる惑星へと向かう。そこにいたのは、知性をもたない風船型生命体だったが、それの発する素数によって他の知的生命体が集まる星だった。
ハードSFなんだけど、会話などがちょっとコミカルで、作品の雰囲気自体はライト
2002年掲載

秋山瑞人「海原の用心棒」

雑誌掲載時は3回に分けて掲載されたということで、収録作の中でもっとも長い作品
おそらく未来の地球を舞台にした、鯨たちの物語
群れから離れ旅をする年老いた鯨が、幼い鯨に対して、自分の昔話をするという格好
かつていた群れが、季節的な移動をする際に、通り道である海峡で四頭の「岩鯨」に遭遇し、襲撃される。
ところが、主人公(語り手である年老いた鯨の若い頃)はその四頭の岩鯨を攻撃する別の岩鯨レッドレインに出会い、助けられる。
あくまでもレッドレインを信頼する主人公、なんとか逃げ延びようとする群れの鯨たち、群れの主流派と主人公とのあいだで主人公のことを心配する友人ら
明示的には書かれていないが、鯨たちのあいだで「滅びの七歌」として歌い継がれている伝説があって、たぶんそれが人類の最終戦争。「岩鯨」というのは潜水艦で、人工知能か何かを搭載しして乗組員が亡くなったあとも、戦争を続けている、という感じなのではないかと思う。
群れのボスである鯨も、実は鯨ではなく潜水艦か何かっぽい。
危機に陥りながらも、いかにしてそこから脱しようとするかとする鯨たちの物語も、「岩鯨」の雷撃戦も、それらが主人公の昔語りになっているという構成も、どれもがよい。
2003、04年掲載

桜坂洋「さいたまチェーンソー少女」

転校生に彼氏を寝取られた女子高生が、祖父直伝のチェーンソー格闘技をもって、学校中を皆殺しにしていく話
2004年掲載

円城塔「Four Seasons 3.25」

民意で願いごとが叶う世界で、「隙間理論」なるものを使って過去へ遡行する主人公は、浮気した妻に抗しようとするのだが、別の理論で時間を遡ってきた妻によって隙間理論による時間遡行を崩壊させられる。
記述されていないことは確定していない。それは時間順序であっても同じこと。そして、出来事は無限にあるから、記述されていない隙間も無限にあって、それをうまく利用すれば時間順序も入れ替えられる、という奴
無限の塵でとかちょっとイーガンっぽい
円城作品の中では、かなり分かりやすくSFなものの1つではないかと思う。
2012年掲載