『日経サイエンス2014年6月号』

特集 宇宙の夜明け

インフレーションの証拠を観測

インフレーションって、時空が超光速で膨張すること
(→そうだったのか、これって関係主義にとっては、けっこうまずいんじゃない?)
原始重力波、当初の予想では観測できるのは2020年代だったが、今回、南極で観測されたのは、予測されていたのよりも強い信号だったみたい
今後、他の観測装置で検証
超新星爆発とか中性子星の連星による重力波を観測する地上の望遠鏡が建設中で、その次に、原始重力波を観測する天文衛星を飛ばす、みたいな計画みたい
宇宙は、誕生してから最初の1秒間と、38万年後に大きな出来事がある。
最初の1秒間(より短い間)で相転移してインフレーションしてビッグバンが起こって4つの力が分かれてとか起きてる。
38万年後に「宇宙の晴れ上がり」が起こる。
粒子の生成と消滅=場のさざ波、時空が超光速で膨張すると、波の伝わる速度より時空が速いので、波が引き延ばされて、固定される
インフレーションの時にうねる場は、「スカラー場」。スカラー場として、実際に見つかったのはヒッグス場。インフレーションを起こすスカラー場を「インフラトン場」と総称する
その波のうねりが、ビッグバンの時に温度の揺らぎとなり、物質密度の揺らぎとなる→一種の音波となる
インフレーション起源の2つの波
(1)インフラトン場由来の温度揺らぎによる原始音波
(2)時空の量子揺らぎによる原始重力波
マイクロ波背景放射には、Eモード偏光とBモード偏光という2つのモードのパターンが刻まれる。原始音波はEモード偏光、原始重力波はBモード偏光
温度揺らぎの大きさに対する原始重力波の大きさの比rによって、インフレーションの理論モデルが絞り込まれる。
r=0.11より小さいと考えられていて、LittleBIRDは0.001の感度を目指す
が、今回観測されたのはr=0.2でとても大きかった
rが大きいと、カオティック・インフレーションというモデルになる。rが小さいと、ナチュラル・インフレーションというモデルになる
南極で原始重力波観測した、BICEP2望遠鏡は、超伝導素子が、光子で超微量に発熱して常伝導状態になるときの電気抵抗の急増を読み取っているらしい

宇宙最初の星明かり

宇宙は、誕生してから38万年後に「晴れ上が」るけれど、水素ガスに満たされていてその水素が光(紫外線)を吸収していたので、真っ黒な時代が続いていた
水素が再電離して、宇宙は明るくなったと考えられている
その再電離が、いつどのようにして起こったのかはよくわかっていない。最初期の天体がその役割を担ったと考えられるので、とにかく古い天体を観測したい。
最初に注目されたのは、クエーサー
91年に赤方偏移4.9のクエーサーがみつかる。ビッグバンから10億年後くらい。でも、この時期には既に再電離していたみたい
2000年頃、赤方偏移5とか6とかのクエーサーも見つかるが、それ以上昔のものは見つからなかった
ハッブル宇宙望遠鏡で遠方の銀河を探す。2012年には赤方偏移11.9、ビッグバンから4億年後の銀河も見つかる。さらに、重力レンズを使ってより遠くも観測しようという計画もたてられている
一方で、ガンマ線バーストも注目されている。銀河やクエーサーよりもはるかに明るいので観測しやすい。2009年、マウナケア山の望遠鏡が赤方偏移8.2のバーストを発券している。

「地球最古の岩石」論争

カナダ北東部イヌクジュアクという集落の近くで発見された岩石について
オタワ大学のオニールは、44億年前、これまで発見されたなかで最古の岩石だと主張
一方、コロラド大学のモジェシスは、38億年前のもので、最古のものではないと主張
オニールらは、その岩石に含まれるネオジム142という放射性同位体と他のネオジムとの比から年代測定を行った。ネオジム142はサマリウム146が崩壊して生じるが、サマリウム146は地球誕生から5億年以内に全て崩壊している。
一方、モジェシスは、その岩石層に含まれていたジルコンという鉱物結晶から年代測定を行った。ネオジム142は、44億年前に溶岩に取り込まれ、それが38億年前に岩石が生成するときに部分的に含まれていると考えた。
もし、オニールが正しいとすると、その岩石から、ジャイアント・インパクト直後には、海が形成され、プレート・テクトニクスも始まっていたことが分かるという

論文盗用を見つけ出す

筆者はもともと物理と工学が専門だったが、あるとき、ヒトゲノム計画に関心をもち、それで生物医学用語のでてくる論文を読むことになったのだが、医学用語がわからなくて大変だったので、論文データベースからアブストラクトや参考文献を探し出せるような検索システムを作り始めた
学生の論文案をそこに放り込むと、関連文献を出してくれる。ところが、それをやってると、同じテキストが見つかることがあった
そこから、筆者は生物医学分野の論文盗用がどれくらいあるのかの研究を始める
学術論文の0.1%があからさまな盗用だと判断した
さらに、助成金の二重取りの事例も探した。
筆者は、論文発表の新しい形として、ウィキペディアモデルを提案している

書評

『人類進化700万年の物語』の書評の中で、人類史の鍵になる数字が紹介されている。これらの数字が入ったタイトルだと、何の本かも分かる、と
700万年前:チンパンジーとヒトの分岐年代→生物種としての人類の歴史
20万年前:ホモ・サピエンスの誕生→ホモ・サピエンスの歴史
6万年前:出アフリカ→拡散史(ただし、10万年とか5万年とか幅がある)
1万年前:農耕の開始→文明史