前田弘毅『グルジア現代史』

http://kousyou.cc/archives/6140を読んで、じゃあ黒海周辺の歴史の本とか読んでみようかなーと思って読んでみた本。
伊東・井内・中井編『ポーランド・ウクライナ・バルト史』 - logical cypher scapeがメインで、あとコーカサス関係何かないかなーと探してて、とりあえず見つかったのがこの本と吉村貴之『アルメニア近現代史』 - logical cypher scapeだったので手に取ってみた。
山川から出てる地域史だと、『ポーランドウクライナ・バルト史』の隣は『中央ユーラシア史』でこれだとモンゴルとかトルキスタンとかで、カスピ海の東側までしかカバーしてないっぽかった。山川の地域史で読むとしたら、カフカスは『ロシア史』なんだろうか


グルジアはワインの国らしい
スターリンや、ゴルバチョフ時代の外務大臣シュワルナゼは、グルジア出身らしい
宗教はキリスト教で、文化的にはペルシアの影響下にあったが、18世紀の終わりにロシアの保護国化。ロシア帝国崩壊の際に一時的に独立するも、3年ほどで赤軍に占領される。
スターリンを生んだ国であるが、一方でスターリン自治化案に強硬に反対したのもグルジアで、共産党幹部を輩出しつつ、ソ連中央部と対立していたらしい。
1956年、トリビシ事件
ソ連暴動をソ連軍が武力介入した事件。ハンガリー事変に先行したソ連の武力鎮圧事件だが、あまり知られていない
1978年には、国語問題を巡って反ソ連運動が巻き起こった。
ソ連崩壊と共に独立するも、軍事的混乱が待っていた。
そして、グルジア領内の自治区アブハジア南オセチアが問題化する。
アブハジアのアブハズ人は、グルジア人とは言語の系統が違い、またイスラームが多かった。数が少なく、ソ連時代、グルジア内の自治共和国の地位にとどまっていたが、元々反グルジア意識が強いところだった。ソ連崩壊後、蜂起して93年にはアブハジア側が勝利している。
南オセチアのオセット人はイラン系で、長い間グルジア人とは共存的だった。ソ連時代の末期から民族意識が高まり、91年からグルジアとの間で武力衝突が始まった。
グルジア内の自治区には、他にアチャラがあり、アチャラ人はグルジア語を話し、ソ連崩壊後もグルジアからの独立は求めなかったが、自治は維持し続け、地元の有力家系のアバシゼが実質的に支配して、関税収入の利権を手放さなかった。
独立後の混乱を立て直したのは、ゴルバチョフ時代の外相シュワルナゼだった。
彼はバランス型の政治家で、欧米への傾斜を強めた。元々反ロシア的だったグルジア国民も親欧米的だった。バクーからのパイプラインルートも勝ち取る。
しかし、経済政策はうまくいかず、またチェチェン紛争が起きるとロシアとの関係が悪化した。ロシアはプーチン政権になっており、シュワルナゼのロシアとの関係も薄くなっていた。バランス型外交も次第に日和見主義的な一貫性を欠いたものへとなっていった。
シュワルナゼ・チルドレンとして政界入りした若手政治家が、次々と反シュワルナゼ化していき、ついにサアカシュヴィリという若手政治家の登場によってシュワルナゼ時代は終わりを告げる。これは「ばら革命」と呼ばれた。腐敗した政治を立て直すなど成果も見せたが、少ない得票率で議会を独占できるように選挙制度をいじったり、また国民の支持を集めるナショナリストであり強硬的でもあった。ロシアから経済封鎖などされるようになったが、それに対抗しつづけた。
南オセチアとの紛争も続いているし、国内的にも結構強硬策をとったりしている。

グルジア現代史 (ユーラシア・ブックレット)

グルジア現代史 (ユーラシア・ブックレット)