サブタイトルは「哲学の新たな構想」で、原題のReconceptions in Philosohy and Other Arts and Sciencesの訳
序文で、科学と芸術あるいは認知と感情の二元論を脱却して、新しい哲学を打ち立てるというような宣言がなされる。
さて、実はこうしたグッドマン哲学のビジョンは、「Languages of Art」という著作で既に書かれている。
この本の読書会をこれまでしていて、その参考としてこの本を読んだ。
ちなみに、読書会の結果報告として、4/28に行われる超文フリにて発行される『筑波批評2013春』には、「Languages of Art」についての座談会とレジュメが掲載されるので、興味のある人はそちらもどうぞ。
第一章 知ることと制作すること
非言語的な記号(絵画や音楽)にも認識論を拡大しよう、という話
知識は経験に、経験は知識に依存する
記号システムとしての言語や絵画がどのような特徴を持っているか(構文論的に分節されているか稠密か)
グルーのパラドックスをしたあとに、絵画におけるリアリズムと投射可能性って似ている
見本による記号作用としての例示
システムの複数主義pluralism
第二章 建物はいかにして意味するか
建築を芸術作品として見るとき、それは音楽に似ている。
再現や指示をするというよりもむしろ、例示の働きをよくしているという点で。
建築物は自らの構造を例示していし、表現もしている。
間接的な指示ないし媒介された指示について
例えば、ある教会が帆船を再現していて、帆船が自由を例示して、自由が霊性を例示している時、その教会は間接的に霊性を指示している。
第三章 解釈と同一性
単一のテクストに対して複数の解釈が存在するが、そういう場合、「文学作品」とは何を指すのか。テクストか解釈か。
例えば、ボルヘスが考案した、ピエール・メナールによる『ドン・キホーテ』は、セルバンテスによる『ドン・キホーテ』とは別の作品なのだろうか。
グッドマンは、同一の作品であるという。メナールは新しい作品を作ったのではなく、新しい解釈を作ったのだ、と。
第四章 変奏についてのさまざまな変奏――あるいはピカソからバッハに遡る
変奏曲はどのようにして主題を指示することができるのか
形式的条件:楽節はある点で主題と似ており、別の点では主題と対照的でなくてはならない
機能的条件:主題と共有する不可欠な特徴を字義的に例示し、主題と対照をなす不可欠な特徴を比喩的に例示すること
変奏は音楽だけでなく絵画においても当てはまるとして、ピカソによる、ベラスケス《侍女たち》に対する「変奏」を論じている。ピカソの多くの習作をテーマ別に配列しなおしている。
変奏は評論と同じように機能する。変奏はそれだけで独立した作品であり、主題の効果を高めたり、主題と互いに強め合ったりしている。
第六章 惰性と創作
地球は静止しているか運動しているか
これはどの座標系を採用して記述するかによってどっちにもとれる
ヴァージョン相対主義
ただし、何もかも正しいというわけではない。正しさということを判定することはできる。
事実と慣習の間には何らかの区別がある。
ただし、それは固定的な区別ではない。
第七章 新奇なものに立ち向かう
チョムスキーやフォーダーの言語観を批判している章
第八章 代表機能を再=現する
デジタルとアナログの話、あるいは、分節と稠密の話
ドットパターンによる記号はデジタル? アナログ? どういう記号システムのもとで見るかによって変わる
画像表現と言語表現の区別
第九章 知識にとっての愚かさの有効性
認識論の外部主義と内部主義
第十章 哲学の新たな構想
真理、確実性、知識を正しさ、採用、理解といった概念に置き換える
グッドマンの作業の三段階
第一段階:記号の一般理論とその機能の解説(「Languages of Art」)
第二段階:記号が対象や出来事(世界)を記述するだけでなく、指示するものの構成そのものに従事している事実を認める(『世界制作の方法』)
第三段階:現在の哲学の欠陥に気付き、新しい概念を捜すこと(本書)
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