『ボカロクリティーク』vol.6&vol.7

今まで書いた奴
『ボカロクリティークvol.01』 - logical cypher scape
『ボカロクリティークvol.02』 - logical cypher scape
第14回感想その2 - logical cypher scape(vol.3)
『ボカロクリティークvol.04』 - logical cypher scape
第15回文フリ感想 - logical cypher scape(UTAU)
なんだかんだいって全部読んで感想書いてるなーと思ったら、vol.5について書いてなかった。
vol.5は座談会企画があるところと、友人でかつ『フミカ』を一緒にやっているまげ=えりくさがUTAU無生物音源をがっつり紹介しているところが読みどころだったかな


vol.6とvol.7について、一応全部目を通しましたが、ざざっとした感想だけ
っていうか、前からそうだったけど、ボカロ3が全然分からないため、ここ最近のボカクリ表紙が分からない

vol.6

技術論、キャラ論、状況論(制作環境的な話)に尽くされていて、そこらへんの話はまあもうお腹いっぱいだよという感じはある。
キャラ論については、あしやまひろこ「天使・永遠の歌姫・初音ミク」がよかった。筑波でミスコンを制した女装コスプレイヤーの方だが、哲学的議論を展開しながら「永遠の歌姫」なる電波ゆんゆんの概念を出しているのがよかった。この「永遠の歌姫」というのは、初音ミクのことを指していないことに注意。「歌」のイデアと称するべき存在のことで、初音ミクも他のボカロもこれを分有しているのだけど、ミクはとりわけはっきりとした顕現なのだ、と。基本的に専門用語を使わずに論じられているのだけれど、突然分有という言葉だけ何の注釈もなくぽろっと出てきたりしているのがなんかいいw
遊井かなめ「ボカロPの同時多発的誕生と21世紀のブリル・ビルディング論」は内容云々ではなく、「だが。」という言い回しや句点の使い方が気になって仕方なかった。ボカクリは、文章を書き慣れていない方が時々いて文章がうまくない人がいるが、これはそうではなくて、完全に意図的にこういう形の文体にしているので、良い悪いの問題というよりむしろ僕の好き嫌いの問題が大きいのだけど
芝尾幸一郎「CGMは儲からない」はネットにおけるn次創作を贈与経済に喩えるというものなんだけど、カオスラが何故叩かれたのかまで論じていた。ところで、参考文献の書誌情報で、本のタイトルをカギ括弧でくくっていない、それ以外の情報はamazonのURLをあげることに代えているということに軽い衝撃を覚えた。
ハヤカワPのは勢いがあってわりと好き。

vol.7

この号のウリは、佐久間正英とキャプテンミライの対談なんだけど、正直あまり面白くはなかった。
個人的には、今号で読むべきはわらいもとこ「天使はかくも語りがたき」一択なんだけど、
しかしまあ、何とコメントすればいいのかもなかなか難しいというか
実際にはとても楽しく読んだのだけど、これがボカクリ最終号の一つ前の号の、なんとも中途半端な掲載順に収まり悪い感じで入っていることについてどのようにコメントすればいいのかというと、なかなか思いつかないのである。
アンメルツPの情報のコントロールについては、実践的な内容でよかったと思う。


ボカクリは次号vol.8で最終号とのこと。
PilotとUTAUとをあわせるとちょうど10冊である。
この短期間によくぞそれだけの冊数を出した。それだけでもすごい。


さて、その一方で『フミカ』という新しい雑誌ができた。
これが、わらいもとこ論に対しての答えの一つになることができればいいな、というようなことは思っている。
FUMIKA | Fumika Records