岩堀修明『図解 感覚器の進化』

目や鼻や耳などの感覚器について、無脊椎動物から始まって様々な動物のそれを紹介している本。
各種動物の感覚器の構造やしくみについての説明が並んでいる感じの本で、その一環として各種感覚器の進化についても触れられているといった感じ。
目次を見ると
1章 感覚器とは何か
2章 視覚器
3章 味覚器
4章 嗅覚器
5章 平衡・聴覚器
6章 体性感覚器
7章 クジラの感覚器
となっていて、7章だけちょっと趣が違うのだけど、基本的な流れとして海に住んでいたのが陸に住むようになって感覚器がどう変わったかというのが各章の大雑把な流れとなっているので、逆に陸から海に戻った奴はどうなったのかということでクジラが取り上げられている。「進化は後戻りできない」ので、また独特なものができちゃったり退化しちゃったりする、と。


人間の感覚器の構造や仕組みについては、高校の生物で習ったし、まあそうでなくとも何かしら科学雑誌や科学番組で見ることが多いのでなんとなく知っているわけだけれど、他の動物の感覚器についてはあまり知らないので、その点で面白かったし、人間以外の動物がどのように世界を感覚しているのか、というのは思っている以上に、埒外な感じだなあとw
昆虫は紫外線が見えるだのなんだのみたいな話は有名だけど、そもそも人間にはない感覚なんかも備わっていたりするわけだし。
味覚器が昆虫は前肢にあり、ナマズは全身にある、とか。味でもって獲物の方角とか距離を見定めているらしい。
フェロモンを嗅ぎ取る鋤鼻器というのは、人間にはない。ところで、蛇が舌をちろちろ出しているのは、鋤鼻器が口の中にあるから、フェロモンを嗅ぐためにやっているらしい。
あと、電気を感知する感覚器を持ってる奴らもいる。水中では動物の神経の微弱な電流が伝わるから、それを感知しているらしい。さらに、自分たちで電気を起こすこともできるようになったりして。


各章の中では、平衡・聴覚器が一番面白かった。
平衡器というのは、重力とか身体の傾きとかを感知するのだけど、これは大体どんな動物においても共通。他の器官は、住んでる環境によってそれぞれ違いが生まれるけど、重力はどんな環境に住んでても等しく関わってくるから。
で、水中で生活している奴で音を聞くような奴は骨伝導で聴いているらしいんだけど、地上に上がると骨伝導が使えなくなるので別に聴覚器が必要になる。なので、聴覚器は感覚器の中では後発。
で、地上に上がるとエラを使う必要がなくなるから、エラだった空間を利用して耳(中耳)ができたらしい。
そんな感じで、聴覚器はあとからできたので寄せ集め感があって、面白い。
クジラになると、またそれはそれですごくて、耳たぶは泳ぐのに邪魔だし耳の穴は水が入っているので閉じて、その代わりにあごの骨の中の空洞を音の通り道にしたりして、水中での聴覚器にしたらしい。
あと、クジラは声を出すけど、地上で生きる動物のように声を出すとせっかくためた空気を吐き出すことになってもったいないので、空気を吐き出さずに自分の身体の中で空気を行き来させて声を出す仕組みを作った、とか。

図解・感覚器の進化―原始動物からヒトへ水中から陸上へ (ブルーバックス)

図解・感覚器の進化―原始動物からヒトへ水中から陸上へ (ブルーバックス)