2012年7月号「特集:スチームパンク・レボリューション」
添野知生「ぜんまい仕掛けの夢、蒸気機関の映画」
ネオ・スチームパンクではないか、という映画をあげているコラム。
『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』や『エンジェル・ウォーズ』なんかを、実はスチームパンクっぽいんじゃないかなーとあげている
シオドラ・ゴス「マッド・サイエンティストの娘たち」
『フランケンシュタイン』『モロー博士の島』『ラバチーニの娘』『ジキル博士とハイド氏』『パンの大神』に出てくるマッドサイエンティストの娘たちが同じ家に暮らしている*1という話。
おのおの、特殊な身体をしているので云々。
小川隆「特集解説 ネオ・スチームパンクとは何か」
ゼロ年代後半よりシアトルを中心に勃興したムーブメント。
SF小説の世界で流行っているのかな、といったらそういうわけでもないらしい。小説ももちろんあるが、ファッション、音楽、映画、ゲーム、さらには各種イベントといった多岐にわたっているらしい。小説はファン・フィクション的なものが中心で、いわゆるかつてのスチームパンクはあまり読まれていないらしい。
時計仕掛けとか飛行船とかそういったガジェットを愛好する感じ、なのかな。ガジェットだけでなくゾンビとか吸血鬼とかも出てくるらしいけど。
本屋に行くと、スチームパンクの写真集とかが置いてあって眺めてみた。ああいうのを見ると、なんか雰囲気は分かる。
英米だけでなく、中南米や東欧、中国にも広まっているとか。さらに小説の舞台も、ヴィクトリア朝のイギリスだけでなく、西部開拓時代のアメリカとかアステカ帝国とか色々あるらしい。
最近は、元々のSF作家も参入してきて、SFファンにも読めるものが増えてきてるよーという記事であった。
シェリー・プリースト「リラクタンス――寄せ集めの町」
プリーストの長編『ボーンシェイカー』と同じ世界の話。南北戦争が長期化しているアメリカで、ゾンビも出てくる世界。
郵便飛行船乗りであるウォルターは、中継地のリラクタンスを目指していたのだが、着いてみると様子がおかしい。飛行船の燃料はもうなく、住民がゾンビになってしまったリラクタンスから無事に脱出できるのか。
ティム・プラット「銀色の雲」
雲の縁に銀が付いている世界。雲素を取り込んで浮かぶ飛行船で、その銀の採掘をしている人びとの話。
乗務員の「わたし」は、実は国王で、臣下が国に戻るようにと追いかけてきている。
キャット・ランボー「ぜんまい仕掛けの妖精たち」
19世紀の、本人は自分が知的だと思っているんだけど、実際には女性差別的で非科学的な男が、お金目当てである女性を結婚しようとしている。その女性は、貴族と黒人奴隷とのあいだの娘で褐色の肌をしているため社交界には出たがらないのだけど、技術者として優秀でゼンマイ仕掛けの生き物を作ったりしている。
スチームパンクのガジェットは嫌いじゃないんだけど、あまりピンと来なかった感じ
レビュー
飯田一史が音楽レビューで、震災以後、菅野よう子が、リズムを強調して繰り返しのある曲を作るようになっているのではないかと論じている。
2012年8月号「日本作家特集」
宮内悠介「ロワーサイドの幽霊たち」
「ヨハネスブルグの天使たち」に続く、DX-9連作短編第二作。「ヨハネスブルグの天使たち」はあまりピンとこなかったのだけど、こっちは面白かった。
世界貿易センターの話。
9・11の時の証言などの引用を挟みながら、2001年とその数十年後を行き来するような話。
その後、また新たにビルが建てられたのだが、老朽化してスラム化してしまった。これを再開発するためのセレモニー(?)として、アンドロイドDX-9たちにそれぞれ9・11の時に貿易センタービルにいた人びとの行
動をインプットして、飛行機を再び突っ込ませるということが行われようとしていたのだ。
主人公は、2001年の貿易センタービルにいると思っていたのだが、実際にはそういう行動を埋め込まれたDX−9
9・11の証言集から始まって、スキナーの行動分析学、DX−9の開発者、再開発関係者、9・11の時に飛行機をハイジャックしたテロリストについての証言、貿易センタービルの設計者など、古今と虚実が入り交じった様々な言葉が引用されて、くらくらする。
仁木稔「はじまりと終わりの世界樹」
《HISTORIA》シリーズのかなり現代に近い頃の話。
あーなるほど、あの設定につながっていく話なんだなーということで、再読したくなる。
「僕」の双子の姉が、物理的にも(というか病原菌的に)精神的にも周囲の人間に影響を与える特殊な人間で、陰謀論や暴力とが渾然一体になってブラジル、メキシコ、合衆国、イラクと舞台をどんどん変えていって、最後に「僕」が1人で暮らしている樹が姉っていう話。
(まとめる気がなくなってきしまってすみません)
2012年11月号「日本SFの夏」
宮内悠介「ジャララバードの兵士たち」
DX-9連作短編第三作。「ロワーサイドの幽霊たち」に続いて一気に読んだ。
今度の舞台はアフガニスタン。DX-9は自爆兵器として使われている。
ユダヤ系の米兵ザカリーにカブールまでの護衛をしてもらうことになったルイこと隆一は、女性兵士の死体に出くわす。犯人を捜査することになるのだが。
あと、円城塔のインタビューとか月村了衛のインタビューとか
それから、飯田一史のレビュー読んで、pollarstars『FinalFrontier』は聞きました。
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*1:正確には1人結婚したので同じ家に住んでいないが