『日経サイエンス』2012年5月号

宮尾祐介 文意が同じかどうかわかるコンピュータを作る

表現の異なる2つの文が同じ意味かどうか、人間であれば簡単に分かるが、コンピュータには難問になる。
それに今挑んでいる宮尾へのインタビュー記事。
現在は、ロボットは東大に入れるかプロジェクトの一員となっている。

ホログラフィック宇宙を検証する

特集記事。これ目当てで読んだ。
時空にも最小単位(プランク・スケール)というのがあって、それ以上小さくならないんだって話は以前から聞いたことがあった。
けども、だから空間ははデジタルになっててーがたがたになってるからノイズがでるはずじゃん、という話につながるのすごい。
シカゴ大のホーガン博士がそのノイズを検出する実験をやっている。この実験の仕組みは、かつてエーテルを検出しようとしたが結果的にエーテルの不在を証明することになったマイケルソンとモーリーの実験の仕組みとほとんど同じ、らしい。その結果、非常に安価な実験装置となっている。LHCが建造費50億ドルをかけ、3000人以上の研究者が関わっているのに対して、こちらの実験は200万ドルの予算で全てを賄い、20人程度で運用しているそうだ。
さて、20世紀後半の物理学というのは、先に理論があって、それを検証するために実験が行われるというパターンが多い。実験装置がLHCのようにあまりに巨額になっているために、保守的にならざるをえないとも言える。それに対して、ホーガンがやろうとしているのは、今の理論では説明できないようなデータを出すことだという。ちなみに、ホーガン自身は根っからの理論物理学者らしいが。
宇宙がデジタルだとするとそれは一体どういうことなのか。宇宙の基盤は情報だ、という考え方が出てくる。
さて、情報について。モノは破壊されても情報は破壊されない、とされる。では、何かをブラックホールに落としたらどうなるのか。ホーキングは情報も一緒に破壊されると考えた。しかし、その後、ホログラフィック原理というものが考えられるようになる。ブラックホールに落ちて物体は失われるが、その情報は事象の地平面に保存されるというのだ
で、これがブラックホールだけでなく、宇宙全体でもそうだ、というのがホログラフィック宇宙論。二次元面に情報が記録されていて、そこから現れているのがこの世界なのだという。
うー、段々何が何だか分からなくなっていくw
この原理があると、なんか相対論と量子論をうまく共存させることができるかもしれないってことで、多くの物理学者が注目しているらしい。
ホログラフィック原理のことはまだよく分からないが、理論に先立つ実験を、という話は面白かった。

地球を潤すサハラの砂塵

これ全然知らない話だったので面白かった。
サハラの砂塵はアメリカ大陸に飛んで行ってて、世界の気候とかに影響を与えている、と。最近になって研究が進んでいる分野(以前は、誰も注目していなかった)。
地球物理学というのか、惑星規模の気候システムは複雑で精緻に出来ているのだなーという感じ。
海洋の鉄分を砂塵が補給していたりするらしい。で、地球の炭素循環に海の鉄分が重要な役割を果たしていて、じゃあ鉄を海に播けば温暖化問題解決じゃねっていう計画(?)があったらしいが、そんな単純な話じゃねーよ、他の微生物の生態系が崩れてやばくなるとかが分かってきたらしい。
それから、アマゾンが肥沃な大地になったのも、アフリカから飛んできた砂塵のおかげなのではないかという説が、近年有力だとか。アマゾン川流域は降水量が多いので、栄養素とかどんどん流れ去ってしまうはず、なのに肥沃。植物が分解されてという説もあるが、それでは最初に肥沃になった理由が分からない。そこで砂塵。


ネットでシチズン・サイエンス

ネットを使って作業を分散することで科学研究を行うというのは、結構前からあった。ソフトを家のPCにダウンロードしておくと、PC使ってない間に計算をやる奴とか。
人力でやる奴だと、確かタンパク質の安定した構造を探すだかなんだかという作業を、ネットゲーマーにやらせたら早かったみたいな話を聞いたことがある。
まあ、その手の話だけど、面白かった。
気象データを集めるために、過去の航海日誌からデータを見つけて入力するというもので、それなりに複雑な作業なんだけど、結構人が集まってるという。まず、航海日誌そのものの面白さ。日誌なので、気温とか天気のデータ以外に船上で起きた出来事が書かれていて、多くの人はこれが読みたくて参加したとか。さらに、入力したページ数に応じて、練習生から士官になって艦長になるというゲーム的要素が入っていたり、航海日誌に書かれている内容について話あえるフォーラムを設置していたりするらしい。

日経 サイエンス 2012年 05月号 [雑誌]

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