円城塔『これはペンです』

「これはペンです」と「良い夜を待っている」
読みやすいという評判に違わず読みやすかった。後者の方がより。
「これはペンです」は、かつて自動論文生成プログラムと自動生成された論文の判定プログラムを作って一財産築いた主人公の叔父が、様々な方法で姪である主人公に手紙を送り、それを姪が解読していくという話
「良い夜を待っている」は、極端な写真記憶能力を持っていた父について主人公が書き記しているもの。この主人公は、どうも「これはペンです」の叔父っぽい。で、この父親は、現在と記憶と夢とが区別できないような状態で生活していたような人で、そのためうまくコミュニケーションできてなかったのだが、記憶から巨大な空想の街を作り上げていた。様々な言葉や概念(数とか)が、街の人や風景となっていたという。
これは、円城作品の中でもかなり分かりやすく、また、とある不思議な家族の叙情的な物語ともなっていて読みやすい。

これはペンです

これはペンです