ケイティ・サレン/エリック・ジマーマン『ルールズ・オブ・プレイ(上)』山本貴光訳

ゲームデザインについての理論書。
この本は、まず第一には、ゲーム制作者向けの指南書であるが、ほどよく抽象的・理論的に書かれており、ゲームについて考えたり批評したりという人にも使えるようになっている。
ゲーム制作もゲーム批評もしないよって人にとっても多分それなりに面白い(自分はこの立場)。
ここでいうゲームは何かというと、ゲームの定義については本書の中の議論に譲るとして、アナログもデジタルも含んだ色々なゲームについて書かれている。カードゲーム、ボードゲーム、スポーツの試合、アーケードゲーム、テレビゲームなど。
例としてあげられるゲームのほとんどはアメリカのゲームで、正直僕は知らないものばかりだったけれども、本文中でもわりと説明してくれるし、何より訳注がとても親切で言及される全てのゲームについて解説が付けられているので、知らないのばかりで読んでて嫌になるということはなかった。
この本、ゲームについてそれほど興味がないという人でも読む価値があるとしたら、訳注の豊富さだろう。ここまで丁寧に訳注のついてる本を他には見たことがない。
実を言うと、訳者の山本さんらがこの本の発売を記念したustをしていて、その中でどう翻訳していったかという話を聞いたのがきっかけで、実際に読もうと思うにいたったという経緯があったりする。
キーワードになるような単語についてはほとんど、何故そのような訳語を選んだのかということが訳注として付けられている。元々の翻訳方針としてはなるべくカタカナ語を使わずに訳そうとしていたらしいが、いくつかの語についてはむしろカタカナ語の方がよいと判断したものがあり、何故あえてカタカナ語にしたのかということも説明されている(例えば、interactivityをインタラクティビティと訳すことについて)。
場合によっては、語源やその他の用法についての言及もある。難しい専門用語などではなく、わりと日常的に使うような語であっても、訳注がついていたりして、その親切丁寧さに驚くし、なるほど翻訳とはこういう作業なんだなーと思ったりした。


この本は、ゲームデザインについての本である。
全体で大きく4つのユニットに分かれており、上巻はそのうち2つ。
ユニット1はまず重要な概念の定義、2はルール、3は遊び、4は文化となっている。個人的には、下巻の方が気になる内容なので、下巻が待たれる(翻訳中のようです)。
それから、「招待ゲーム」という章が設けられており、筆者がゲームデザイナーにこの本のためのゲームを依頼している。そのゲームのルールと、そのゲームを制作する経緯がエッセイとして載っており、ゲームの実作がどのようなものか垣間見える。
各章ごとにまとめもつけられている。


本書では、どれだけ「意味ある遊び(ミーニングフルプレイ)」を生み出せるか、ということをゲームデザインのポイントとしている。
「意味ある遊び」というのは、プレイヤーの行為と結果が結びついており、またその関係をプレイヤーが認識できているということ。
ユニット2では、様々な観点からゲームの形式的なシステムについて眺め、そのような観点と「意味ある遊び」の関係について書かれている。
ユニット2の目次を見れば分かるが、ユニット2だけでなくユニット1も、ゲーム研究・批評のみならずジャンル横断的に様々な分野の知見が参照されている。その多彩さにも目を見張るところだが、それだけでなく、「意味ある遊び」という目的に向かってそうした知見が見事に再構成されている。
つまり、「当てはめてみました」ということにとどまらず、そのような観点でゲームを眺めることがどのようにゲームデザインに資するのかということまで示されている。


はじめに
第1章 この本について
第2章 デザインの進め方
ユニット1 核となる概念
第3章 意味ある遊び
第4章 デザイン
第5章 システム
第6章 イタラクティヴィティ
第7章 ゲームを定義する
第8章 ディジタルゲームを定義する
第9章 魔法円
第10章 主要図式
招待ゲーム1:リチャード・ガーフィールド
ユニット2 ルール
第11章 ルールを定義する
第12章 3つの水準のルール
第13章 ディジタルゲームのルール
第14章 創発システムとしてのゲーム
第15章 不確かさのシステムとしてのゲーム
第16章 情報理論システムとしてのゲーム
第17章 情報システムとしてのゲーム
第18章 サイバネティックシステムとしてのゲーム
第19章 ゲーム理論システムとしてのゲーム
第20章 対立のシステムとしてのゲーム
第21章 ルールを破るということ
招待ゲーム2:フランク・ランツ

ルールズ・オブ・プレイ(上) ゲームデザインの基礎

ルールズ・オブ・プレイ(上) ゲームデザインの基礎