『NOVA2』

NOVAはすでに、3と1を読んでいたので2を
大森望編『NOVA3』 - logical cypher scape
大森望編『NOVA1』 - logical cypher scape
しかし、今回は一部の感想にとどまる。

神林長平「かくも無数の悲鳴」

宇宙中を逃げ回り場末の酒場にたどり着いたアウトローが主人公のスペオペ
と思わせておいて、量子力学多世界解釈ひとりぼっちの宇宙戦争

田辺青蛙「てのひら宇宙譚」

話の内容の前に、円城塔の妻ってところにまず驚いた。そういえば、円城塔が結婚していたのはtwitterで周囲がなんか盛り上がっていたので知っていたのだが、相手は知らなかった。
大森のもとから、2年程前から(つまりNOVAの企画以前から)時々送られてきていたというショートショートの中から5本。
長いもので3ページ、短いものは7行くらい。それでもしっかりSFしていて、妙な味わいがある。
あー円城と部分的に似ているかもしれない

東浩紀クリュセの魚」

11歳の葦船彰人と16歳の大島麻里沙のボーイミーツガール
全てがネットワークに繋がれ、拡張現実を周囲に広げて生活する火星で、しかし2人は拡張現実もネットワークも使わずに出会う。
建物の外に連れ出され、テラフォーミングのまだ終わっていない火星のクレーターにできた小さな池を見せられる。そこにいる魚を2人でみて、彰人は麻里沙との恋に落ちる。
彼女に言われて、彰人は手紙というものを出す。火星には郵便制度もないし、紙もほとんど使われない。
文通と幾度かの逢瀬。その一方で、地球外のテクノロジーである「ゲート」が発見され、火星を巡る状況が一変する。火星は、地球との距離が離れていたために、地球から独立せずとも地球とは異なる文明圏として3世紀のあいだやっていくことができた。しかし、「ゲート」により地球との距離が縮まることが明らかになって、状況は少しずつきな臭くなっていく。
彰人が16歳で軌道エレベータでの奉仕活動をしていた時、2人は再び会い、体を重ねる。彼女は偽造IDを有していた。そして、数ヶ月後、地球で未曾有のテロが起こり、その犯行声明ビデオに映っていたのは麻里沙だった。
その後も、火星独立運動のテロは何度か起こり、そのたびに麻里沙の映像が流れた。
警察との取り調べの中で、麻里沙がかつてあった日本という国の王の血筋を引いていることなどを聞かされるが、彰人にはピンと来ない。通信の記録が何も残っていないことから彰人は釈放される。彰人はただ、ネット中に散らばる麻里沙の動画とそれを元に合成されたポルノ動画を見続けながら、彼女はすでに最初のテロの時に死んだのだと確信していく。
数年後、麻里沙の婚約者を名乗る男から、彰人と麻里沙の娘だという少女を渡されるのだった。

新城カズマ「マトリカレント」

古代の地中海あたりから物語ははじまる。
海の中で生活し、不老不死ないし非常に長命な青年、アレクシオスに助けられたテオドラ。彼女は、そしてアレクシオスに助けられた様々な人々は、アレクシオスと同じ海で生活する民となっていく。
時代は流れていき、おそらく現代。
<ハミング>と呼ばれる現象が海に起きて、異常気象が起きる一方で、ついに地上の人間によって海中生活者たちの存在が明るみにだされる。地上の人間が次第に海中生活者となっていく。国家はそれを<国家>という概念そのものの危機として捉えるが、テオドラは科学者となり、人類にとっての新たな自由を説く。
<あたらしいもの>シリーズの中の一編

津原泰水「五色の舟」

戦中の日本。見世物小屋の一家がくだんを買いに行く話。
くだんは、未来をみせるだけでなく、他の並行世界・別の未来へと人を連れて行くという役割も負っている。
見世物小屋の人々の、いわば異形と、くだんが見せる夢の雰囲気が、生々しくもあり、幻想的でもある。